beacon

森保J破ったイランは4強敗退…選手かばった失意の指揮官「全責任は私に」「イラン国民に謝罪したい」

このエントリーをはてなブックマークに追加

アミール・ガレノイ監督

[2.6 アジア杯準決勝 イラン 2-3 カタール アルトゥママ]

 準々決勝で日本代表相手に劇的な勝利を挙げ、48年ぶりのアジア制覇に前進していたイランだったが、最後は前回王者カタールとの死闘に惜しくも敗れた。試合後、記者会見に出席したアミール・ガレノイ監督は「全ての責任は私にある。連盟でも、選手でもなく、敗戦の責任があるのは私だけだ。人生最悪の日の一つだ」と痛ましい表情で話した。

 試合の入りは完璧だった。前半4分、MFアリレザ・ジャハンバフシュのロングスローでゴール前を攻め込み、ニアサイドでMFサイード・エザトラヒが頭でそらすと、相手のクリアが流れたところにFWサルダル・アズムンが反応。体勢を崩しながらもアクロバティックなバイシクルキックで合わせ、大会史に残るようなスーパーゴールで先制した。

 その後もイランは優勢に試合を展開。特に日本戦の出場停止から復帰したFWメフディ・タレミの左ウイング起用が当たり、クロス攻撃から何度もチャンスを作っていた。しかし、なかなか決められずにいた前半17分、ファーストチャンスとなった相手ミドルシュートが守備陣に当たって軌道を変え、不運にもゴールに吸い込まれるという形で同点に追いつかれると、前半終了間際にはMFアクラム・アフィフのスーパーゴールで失点。1-2でハーフタイムを迎えた。

 後半開始時には指揮官の2枚替えで再び勢いをつけ、開始1分に波状攻撃からの猛攻でPKを獲得すると、これをジャハンバフシュが決めて同点。指揮官の采配がさえた結果、再び試合のリズムを手繰り寄せ、その後は前半のようなオープンな展開を避けつつ、着実にチャンスを重ねていった。

 それでも最後は後半37分、守備陣のラインコントロールが乱れたことにより、わずか数センチの差でオフサイドを取れず、FWアルモエズ・アリに勝ち越しゴールを献上。終了間際にはDFショジャー・ハリルザデーが一発退場処分を受けるも、終盤に10人で猛攻を続けたが、最後はジャハンバフシュの決定的シュートが右ポストを叩くなど運にも見放され、あと一歩のところで決勝進出を逃した。

 ガレノイ監督は昨年3月の就任から15勝3分と無敗を続けていたが、これが在任19戦目での初黒星。それでも試合後の記者会見では「全ての責任は私にある。連盟でも、選手でもなく、敗戦の責任があるのは私だけだ」と敗戦の責任を背負った。

 地元記者からは3失点を喫した守備陣に批判的な質問も向けられたが、矢面に立った。「守備組織には満足している。このトーナメントでは不運なゴールもあった。たとえば今日の3失点目は1cm、2cmの差でオフサイドにならなかったし、他のゴールも同様に不運なものがあったと思う」。

 今大会は20代後半から30代の選手が並び、若い世代の台頭不足が議論となったが、その点についても「この繊細で重要なトーナメントでは世代交代はできなかった」と責任を自身に向けた。そして「ここからはいくつかのことを変えていくために良い時期になる。W杯が始まるまでに50%、60%の選手が入れ替わると思うが、代表戦の結果に影響が出ないよう少しずつ変えていきたい」と展望を示した。

 質疑応答後には自ら言葉を切り出し、サポートした周囲への感謝を述べた。「この11か月間、代表チームのスタッフ、メディカルチーム、スポーティングチーム、同僚、関係者、メディア、我々をサポートしてくれた全ての人々に感謝したい。日本戦のあとの期間は特にだ」。劇的な勝利を挙げた日本戦後は国民の期待も特に高まっていたが、1976年大会以来の優勝には届かなかった。「この結果に責任がある者がいるとしたら、それは私だ。あなた方全員、イラン国民全員に謝罪したい」。最後は悲痛な謝罪で会見を締めた。

(取材・文 竹内達也)

●AFCアジアカップ2023特集
▶久保・三笘・冨安らが参戦!CL・EL決勝トーナメント全試合見るならWOWOWで!
竹内達也
Text by 竹内達也

TOP