beacon

[総体]運動量強化着手の流経大柏「全国大会で暴れたい」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 8月1日から福岡県で開催される平成25年度全国高校総体「2013 未来をつなぐ 北部九州総体」サッカー競技開幕まであと3週間。真夏の“高校生の祭典”が近づいてきている。

 今大会の最注目チームと言える存在が、流通経済大柏(千葉2)だ。高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯プレミアリーグEASTでは東京ヴェルディユースやコンサドーレ札幌U-18といったJリーグクラブユースチームを抑えて首位を快走。特に清水エスパルスユース戦で7得点、全国総体で優勝争いのライバルのひとつとなりそうな青森山田戦でも6得点を挙げるなど、シーズン前から囁かれていた「今年の流経は強い」の評価通りの勝ちっぷりを見せている。

「現時点で、ですが……」と前置きした上ではあったが、名将・本田裕一郎監督も「大前の時の今頃よりは、この子たちの方がやっていることも、求めていることもちょっと高いような気がしています」と、FW大前元紀(現デュッセルドルフ)やDF比嘉祐介(現横浜FM)らを擁して全日本ユース選手権と全国高校選手権の2冠を達成した07年世代と遜色ないレベルにあることを認める。前線からのハードワークに加えてダイレクトのパスワーク、そして個人技でも差をつくり出していた彼ら世代の域に到達するのは簡単ではない。だが、1年時からその技術の高さに期待され、徹底して足元を磨いてきた今年の流経大柏は今後、周囲をさらに驚かせるような内容、結果を表現する可能性がある。

 タレントも充実している。エース格のMF青木亮太と主将の左SB石田和希(ともに3年)がU-18日本代表候補へ選出され、152cmの逸材FW森永卓(3年)や青木、FWジャーメイン良、MF秋山陽介(ともに3年)がプレミアリーグの得点王争いの上位に名を列ねている。そして中盤では10番MF小泉慶とMF西槙翼(ともに3年)のボランチコンビが攻守の切り替えの速さ、球際の厳しさで違いを示し、守備陣にもCB時田和輝とCB三嶋廉士、右SB入江勇樹、GK中尾祐太(すべて3年)と実力者が揃い、出場機会を得たFW立花歩夢やMF上田将寛(ともに3年)が結果を残すなど、選手層も非常に厚い。紅白戦ではパスの本数を計測するなど、練習からボールを動かすことにこだわり、また、このタレントたちが労を惜しまずに徹底するハードワークが相手を恐怖へと陥れる。

 森永が「目標は日本一。全員取りに行くつもり。プレミア、選手権と3冠を達成できるように頑張ります」と語るように全国総体は目標の全国3冠への第一歩。ただ、千葉県予選では初戦から準決勝までの3試合で15ゴールを叩きだして全国大会出場を決めた後の決勝に落とし穴が待っていた。最大のライバルである市立船橋に2-3で逆転負け。確かに今年の市立船橋は流経大柏と並ぶ有力チームではあるが、選手たちにとっては甘さを痛感させられる一戦となってしまった。

 先制したことで気の緩みが出てしまい、トータルで試合を考えることができなかった。また、攻撃時のボールの運び方が1パターンになってしまい、足元から足元へとボールを動かすばかりで3人目としてボールに絡む動きもなかった。単調な攻撃を相手に狙われ、自分たちのリズムでボールを動かすことができないまま敗戦。選手たちにとってはショッキングな敗戦だったようだ。

 確かに、今シーズン開幕から快進撃を続けていたチームは、ここへ来てやや壁にぶち当たっていることを感じていた。ただ、この壁を乗り越えれば、さらに強力なチームになることができると信じている。石田は「初心の運動量、走ること、球際で勝つこと、ハードワークすること、そこが欠けていたと自分は思っていた。そのメッセージをみんなに出して、ここからの1か月間、そこを徹底的にやっていきたいと思います。全国大会で暴れたいと思います」と言い切った。「暴れる」ためのカギのひとつとなるのが、運動量。これは流経大柏の強さの源であり、これからさらに一歩を踏み出すための新たな武器となる。

 7月上旬の練習で流経大柏はスパイクに超小型の計測チップを装着するだけで1試合の走行距離、最大スピードや、時間帯別の走行距離、スピード、ダッシュ回数などを細かく計測・データ化できるadidas『miCoach SPEED_CELL TM』をテスト。これによって試合を通してどのくらいの距離を走ったのかに加えて、終盤の苦しい時間帯で何本スプリントをしていたのか、またどのくらい長い距離をスプリントしていたのかなどのデータをチェックすることができる。全国総体のV候補は最新鋭のシステムを取り入れて、自分たちの武器をさらに高めようとしている。

 トップチームの選手たちは練習後、PCで確認することが出来る『miCoach SPEED_CELL TM』の機能を活用してチェック。計測チップを装着して15分間の紅白戦に出場した小泉と秋山のデータをピッチサイドで確認した。2人は紅白戦の15分間で2kmを走破。このペースで90分間走り続けると、12~13kmを走る計算となる。選手たちはそのデータを食い入るように見つめていた。自分やチームにとっての課題のひとつを数値が教えてくれるからだ。

 秋山は「15分で2kmも走っているとは思っていなかったので驚きました。『走っていない』とよく言われていたので、実際に測ったら、どのくらいあるのかなと思っていました。自分の中で走っていたと思っていても、映像を見ると走れていない時がある。数値で確認することができて良かったです」。また小泉は「(データを見て)前半走れていても、後半落ちていたのが分かった。ボランチは攻守の切り替えが激しいポジションなので、その攻守の切り替えを後半落ちないようにやらないといけないとその数値を見て思いました。(自分たちの)試合を観てもらうと分かると思うんですけど、切り替えの部分で自分と(ボランチでコンビを組む)西槙が遅いと負けると思う。そこは重要視されていると思う。これからも続けていきたいと思います」とこの日見つけた課題の修正、強化への意気込みを口にしていた。

 本田監督は「私はパス&ゴー、パス&ゴー、としつこいくらいに言うんだけど、パスしてどこに走るかは別の問題として、ボールを触ったヤツは絶対に動けと。それだけでも(チームに)動きが出てくる。(『miCoach SPEED_CELL TM』をテストするにあたり)ちょうどタイミングも良かった。(流経大柏は)結構走るチームだと思っているんですけど、どうなのか。質の問題はありますけれど、走行距離が長くなれば、いい結果が出る確率が高くなる」と、スプリントすること、長い距離を走ることの重要性を口にしていた。今後、全国高校総体へ向けて強化合宿も行う予定の流経大柏。これから大会開幕までの3週間、最新鋭のシステムとともに自分たちの武器をさらに磨いて3冠獲得へ向けたスタートを切る。

★関連ニュースはアディダス マガジンでチェック

(取材・文 吉田太郎)

TOP