beacon

[MOM4033]大津FW山下基成(3年)_「自分もやってやるぞという気持ちはいつも持っている」献身のストライカーが劇的決勝弾!

このエントリーをはてなブックマークに追加

自身の決勝ゴールに雄叫びを上げる大津高FW山下基成(11番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.9 高円宮杯プレミアリーグWEST第17節 名古屋U-18 2-3 大津高 トヨタスポーツセンター 第2グラウンド(人工芝)]

 ずっとその瞬間を狙っていた。味方のために空走りを繰り返しても、前線からのプレスで守備に奔走しても、最後にこのポジションの選手へ託された仕事は1つ。ゴールを決めること。それだけだ。

「最初は自分たちフォワードがなかなか収められなくて、チームに迷惑をかけて、あまり攻撃できなかったんですけど、『自分がヒーローになろう』とは思っていたので、『来た!』みたいな感じでした」。

 大津高(熊本)の11番を背負う献身のストライカー。FW山下基成(3年=FCK MARRY GOLD AMAKUSA U15出身)がこの試合唯一のシュートで記録した決勝弾が、チームに劇的な逆転勝利をもたらした。

 シーズン序盤は決して主力という立ち位置だったわけではない。プレミアリーグでこそ、スタメンで出場した第2節のヴィッセル神戸U-18戦でゴールを決めたものの、以降はメンバー外になることも。昨シーズンからエースを務めるFW小林俊瑛(3年)がフォワードの軸として君臨する中で、なかなかその“相方”の座を射止めるまでには至らない。

 転機はプレミアで付けている11番ではなく、19番を渡された夏のインターハイ。初戦となった2回戦の瀬戸内高戦から先発起用されると、3回戦の関大北陽高戦では先制点も記録。チームのベスト8進出の一翼を担ってみせる。

 すると、プレミア再開の一戦となったガンバ大阪ユース戦でリーグ4カ月ぶりのゴールを記録。以降も「体幹がだいぶ強くなってきて、ルーズボールへの動き出しも良くなってきたし、よく小林を見ながら、セカンドストライカーとしてずいぶん点も獲れるようになってきましたね」と平岡和徳総監督も言及したように、2トップの一角に収まりながら、攻守でエネルギッシュに動き回りつつも得点を積み重ねてきた。

 この日の名古屋グランパスU-18(愛知)戦でもスタートからピッチに解き放たれると、前半から相手のビルドアップに対して果敢にプレス。入ってくるボールを懸命に収め、チームの攻撃の活性化を図っていたものの、自身のシュートチャンスはなかなか訪れないまま、気付けば試合は2-2で終盤に入っていた。

 後半41分。GK西星哉(3年)のキックを小林が頭で逸らすと、足元に入ったボールを収めかけた山下は、後ろから寄せたマーカーに倒されてしまったが、MF岩崎大翔(3年)のドリブルが潰されたボールは、再び立ち上がったばかりの山下の目の前にこぼれてくる。

「左サイドの(古川)大地と右サイドの(岩崎)大翔が追い越してきていましたけど、パスを出すことは考えていなかったですし、コースが見えたので、思い切って振り抜きました」。左へドリブルで流れながら、利き足と逆の左足で打ち切ったシュートは、低い弾道で右スミのゴールネットへ転がり込む。

「ゴールの少し前に、相手を背負いながら倒されて悔しい想いをしたので、『決めてやろう』と思っていました」という何ともストライカー的なメンタルの作用が導いた、貴重な貴重な決勝ゴール。2度追い付いた上での逆転劇で、遅れてきたストライカーが鮮やかに“主演”を張ってみせた。

「あそこで決めてくれるのが山下だと思うので、そこは信じていました。同じ2トップでお互いライバル意識はあると思いますけど、そこは良い関係を持ちながらも、2人で得点を重ねて、チームの勝利に貢献できたらなと思います」と笑顔で語った小林に対して、山下もこういう言葉で“相方”を評する。

「俊瑛が競った後のこぼれ球はだいたいわかるので、一番早く行くように意識しています。そこの連携は良くなってきたと思いますね。クラスも一緒なので、普段から一緒に過ごす時間も長いですし、ピッチ外でも結構仲は良いです。でも、今日も俊瑛が注目されていたんですけど、その中で『自分もやってやるぞ』という気持ちは陰ながらいつも持っています(笑)」。2人の微笑ましい関係性が透けて見える。

 残留争いを繰り広げるプレミアも終盤戦。試合に出続けているからこそ、チームの結果に対する責任感も今まで以上に強くなっている。「本当に負けられない試合ばかりなので、練習から全員で勝ちに行くぞという気持ちでやっていきたいですし、選手権も始まるので、それに向けてプレミアで良い戦いをして、今後に繋げていければなと思います」。

 昨年度の全国では3試合でベンチに入りながら、ピッチの向こう側には辿り着けなかった選手権への想いも、もちろん小さいはずがない。「まず県大会を勝ち抜くのが本当に大変ですけど、今年はずっと『超越』というテーマでやってきたので、全国大会では去年の先輩たちを超えられるように頑張っていきたいです。個人としてはとにかく走って、フォワードとして得点という形でチームの勝利に貢献できればいいと思います」。

 進化するブルー軍団の成長株。11番を背負う献身のストライカー。ここに来て存在感を示し続けている山下が重ねるゴールは、今シーズンの大津が掲げてきた『超越』にとっても、絶対に欠かせない。



(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2022特集

TOP