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22番と4番の意味を知る新キャプテン。横浜FMユースDF畑野優真が携える「トリコロールの守備者」の矜持

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横浜F・マリノスユースを束ねる新キャプテン、DF畑野優真

[2.11 NEXT GENERATION MATCH 横浜FMユース 2-2 日本高校選抜 国立]

 トリコロールの最終ラインを預かる者は、それ相応の覚悟が必要だ。偉大なる先人たちが築き上げた伝統を堅持しつつ、現代サッカーに必要な資質を兼ね備えていなければならない。だが、この男ならばその両方を高いレベルで具現化することも、可能なのではと思えてくる。それぐらいのパワーを持ったリーダーだ。

「今年は4番を付けることになったんです。F・マリノスの4番と言えば栗原勇蔵さんで、去年付けていた22番は中澤佑二さんの番号で、2年続けてF・マリノスのセンターバックとしての番号を付けさせてもらっているからには、下手なことはできないですし、覚悟と自覚と自信を持ってやらないといけないので、自分が先頭に立って、4番に恥じないプレーをしたいなと思います」。

 横浜F・マリノスユースの守備陣を束ねる新キャプテン。DF畑野優真(2年=横浜F・マリノスジュニアユース追浜出身)はこのクラブに受け継がれている守備者としての誇りを、既にしっかりと持ち合わせている。

「最初はスタジアムが大き過ぎて、入ってみたらいつも通りだったんですけど、外から最初に見た時はピッチがメチャメチャ狭く見えたんですよね。でも、緊張というよりは楽しみの方が大きかったです」。畑野は“聖地”の印象をそう語る。日本高校サッカー選抜と対峙したNEXT GENERATION MATCH。横浜FMユースは序盤から相手の勢いに押し込まれる展開を強いられる。

「守備のところは特に20分ぐらいまでやられまくって、1点に抑えられたのは奇跡だったぐらいですけど、最後の最後に足を伸ばしてクリアとか、ギリギリの一歩で触れてとかが多かったので、改善点しかないなという感じですね」。畑野もそう振り返った前半は早々に先制を許すも、何とか耐えながら1点を返すことに成功。1-1でハーフタイムを迎える。

 この40分間を見て、大熊裕司監督から檄が飛ばないわけがない。「前半の失点もそこからでしたけど、変なところでファウルをしたりする無駄な部分とか、前に行く意識が全くなかったことに対して、『ああいうミスは許さない』『後悔する前にやれ』と。消極的なプレーや逃げたプレー、球際に行かないプレーが多かったので、そこは大熊監督に強く言われました」。

 後半は横浜FMユースも交代選手が躍動しながら、攻守に連動性を増していく。「後半は少し自分たちのサッカーができた部分があったんじゃないかなと思います」とは畑野。一時は逆転に成功しながら、試合終了間際に追い付かれ、結果は2-2のドローとなったが、一定の手応えを掴んで、国立競技場での80分間は幕を閉じた。

 試合後。FUJI FILM SUPER CUP 2023を控え、ゴール裏を埋めていたサポーターへ挨拶に向かう。「もう人が凄くて、それだけで圧倒されました。試合中はそんなに人がいるなんて気付かなくて、実際に挨拶に行ってみると迫力も凄いですし、声もメチャメチャ出してもらっていたので、『改めて自分もこのサポーターの応援の中でやりたい』と思いました」。トリコロールの大声援が、とにかく嬉しかった。

 新チームのキャプテンに指名されたが、畑野には少し“予感”もあったという。「『キャプテンズ』というモドリッチ選手が出ている動画があるんですけど、それを『見ておけ』みたいに言われていたので、何となく予想はできていたんです(笑)。(舩木)大輔とか(福井)大次郎とかもリーダーの素質はあると思うので、その中で選んでもらえたことは嬉しいんですけど、実際に覚悟はしていました」。

 もともと中学時代は学級委員長も務めており、高校でも委員会の学年代表を任されるようなタイプ。「話すのは結構好きですね。包み隠さず喋ってしまうタイプです」という自己分析も面白いが、試合中も途切れることのないコーチングの声がとにかく印象的。「個人的に自分も言ってもらいたいですし、それに対して自分も言いたくて、集中を切らさないためには声を出すことが一番なので、言い争うくらい熱を込めて戦いたいです」というメンタルは実にセンターバック向きだ。

「去年のキャプテンの3年生の3人は、チームをまとめるところも人間性もしっかりしていたんですけど、僕はまだ子供っぽいところがあって、キツい時こそポジティブな声掛けが必要なんですけど、感情的になって強く言ってしまうことが多くて、そこはまだまだ改善点が多くありますね」。

「リーダーシップの部分は昔から評価してもらっていて、最近は練習試合でアップも自分がやらせてもらうこともあるんですけど、その時に何が必要かとか、試合に向けてみんなで気持ちを高めていくためには何が必要かとか、自分で考えてやらせてもらっていますし、自分のことだけではなくて、チームメイトのことを観察したりすることで、人として成長できるのかなと思います」。キャプテンという役割に大きな期待と自覚を持って向き合っているようだ。

 今年から背番号は4番に変わる。実は去年、“先輩”との接点が生まれていたという。「栗原勇蔵さんの講習会があったんですけど、その時に質問させていただいたんです。コーチングのことを聞いたんですけど、『僕は感情が入ってしまうんです』と話したら、栗原さんは言葉選びを考えているとのことで、チームが盛り上がる声はもちろん、時には自分が嫌われても言わなきゃいけないとおっしゃってくださいました」。2023年の1年は、憧れの4番像を自分のものにするための大事な1年だ。

「去年はクラブユースもプレミアも2位で終わってしまったので、今年はどっちも獲るぐらいの勢いで、まずは1位を狙いに行きたいというのがチームとしての目標です。個人としてはトップに昇格して、プロに関わっていくところもそうですし、年代別代表に入り続けるところもそうですし、サッカーの部分でも人間としても成長できるようにしたいと思います」。

 人としてのエネルギーは、間違いなくある。あとはその強い出力をグループの中で、キャプテンとして、どうポジティブな形で現わしていくか。トリコロールの伝統を背中に感じるディフェンスリーダー。今シーズンの畑野からも目が離せない。



(取材・文 土屋雅史)

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