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全ての切り替えで「忘れろ」が合言葉。熊本1位の熊本商が失点1分後に追いつき、九州新人8強入り

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失点から1分後の後半26分、同点ゴールを喜ぶ熊本商高の選手たち

[2.19 九州高校新人大会予選リーグ 熊本商高 2-2 長崎日大高 うるま市具志川多種目球技場A(天然芝)]

 令和4年度KYFA第44回九州高校(U-17)サッカー大会(九州高校サッカー新人大会)は19日、予選リーグ最終節を行い、決勝トーナメント進出をかけた第3ブロック2位・熊本商高(熊本1)対同3位・長崎日大高(長崎1)戦は2-2でドロー。熊本商が2位を守った。

「全ての切り替えで忘れろ」の合言葉を実践した熊本商が、8強入りを決めた。引き分け以上がノルマの長崎日大戦は前半2分、セットプレーの流れから相手FW友永響(2年)に先制点を奪われる苦しいスタート。前半を0-1で折り返した熊本商は後半10分にMF原昇央(2年)の左クロスを182cmFW高浜航大(2年)が頭で合わせて追いついたが、試合終了5分前に再び友永に勝ち越し点を許してしまう。

 だが、熊本商は失点を引きずらない。得点直後にできた相手の一瞬の隙を逃さず、後半開始から出場のFW谷川陽祐(2年)が豪快な左足ミドル。かつて名門・大津高(熊本)でコーチを務めていた時田剛二監督が、「あのパンチ力があるのは分かっていた」と評した谷口の「左」で失点1分後に追いついた。

「全ての切り替えで忘れろ」は攻守の切り替えを含めた合言葉だ。惜しいシュートや好守などの良いプレーも、ミスなどの悪いプレーもあるだろうが、その余韻に浸ることなく、すぐに切り替えて次へ向かうこと。これを相手よりも早く実践したことが劇的な同点ゴールに繋がった。

 その後、自力のある長崎日大にゴール前のシーンを作られ、FW森武祐貴(2年)に決定的なヘッドを打たれるシーンもあった。だが、「ヘディング、競り合いは九州の中で誰にも負けたくない。キャプテンの自分が戦う姿を見せてチームを鼓舞したい」という183cmの熊本県選抜CB木實大翔主将(2年)中心に全員で守り抜いた。

 全国高校選手権出場6度の伝統校が、27年ぶりの県新人戦制覇に続き、心打つような戦いで九州8強入りを果たした。時田監督就任から9年。幾度も県準決勝の壁に阻まれてきたが、他校にとってのハードワークを当たり前の“ノーマルワーク”にすることや切り替え、ピッチ外の部分など積み上げてきた力を発揮した。

 木實は、「今回、熊本県優勝して大津に代わって熊本県No.1で行くということで、時田先生からも『プライドを持って』と言われていましたし、『大津じゃなくても自分たちがいるんだぞ』と他のチームにも見せたかったし、そういう面では本当に嬉しく思います。この新人戦始まる前に『細かいことを気にせずに突っ走っていくぞ』とチーム全員で決めていて、それ通りに一つの方向へ向かって行けている」。選手たちはすぐに準々決勝への準備をスタートさせていた。

 時田監督は今年の世代について、「試合をやればやるだけ良くなります」と強調する。「吸収力もあるし、誠実なパーソナリティーの上にサッカーが乗っているのでトレーニングの取り組みも謙虚」。今大会も試合を重ねながら成長している。

 初戦で全国高校選手権3位の神村学園高(鹿児島2)に0-4で敗戦。時田監督は「高い基準を突きつけられて目が覚めました。もう少しできるかなと思っていたんですが、神村さんの高い基準が2戦目、3戦目にかなり活きました」という。学んだことを吸収。この日、長崎日大戦で学んだことも準々決勝・日章学園高(宮崎1)戦で活かして勝利する。

 登録メンバーにはロアッソ熊本ジュニアユース出身の6選手。木實らユース昇格を逃した選手たちや他の街クラブ、中体連から「一つ大きなことをしたい」と野心を持って公立の伝統校へ進学してきた選手たちが、快進撃を見せている。だが、まだまだ止まるつもりはない。木實は「自分たちはまだ何もない。自分たちの特長であるセットプレー、球際のところとか他のチームに熊商はいるんだよ、こういうチームだよ、とアピールして九州の中でトップを目指していきたい」。歓喜の8強入りから切り替えた熊本商が、さらに上を目指す。

(取材・文 吉田太郎)

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