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[デンチャレ]“お客さん”ではなく、本気で大学選抜に勝ちに行く。日本高校選抜が攻めて「歴史を変える」初白星

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日本高校選抜は初勝利を挙げ、7位でデンソーカップチャレンジを終えた

[3.4 デンチャレ7・8位決定戦 関東選抜B 1-2 日本高校選抜 ひたちなか市総合運動公園]

 歴史を変えた。日本高校選抜は前半に先制されたが、後半に2得点を奪い取って逆転勝ち。掲げている「真っ向勝負で点を取りに行くサッカー」をやり切り、デンソーカップチャレンジ参戦3年目で初白星を挙げた。

 2ゴールの起点になったMF徳永涼主将(前橋育英高3年)は「何点取られても相手よりも多く取るというのはコンセプトであるので、その姿勢を続けていきたいです」。日本高校選抜はグループリーグで3連敗を喫していたが、全試合でゴール。格上の大学選抜に対して守りを固めるのではなく、攻守にアグレッシブなサッカーを貫いてきた。

 グループリーグの3敗はいずれも完敗ではなく、可能性を感じさせての敗戦。だからこそ「本当に悔しがっていた。勝負になっているのに負けたのが悔しかった」(仲村浩二監督)。大学選抜には勝てないなど誰も考えず、持ち続けた挑戦心。その強い気持ちを持って今大会最終戦に臨めたのも良かったかもしれない。

「今日は本当に気持ちが入っていたから、『歴史を変えよう』と言っていたので」と仲村監督。選手たちにとっては欧州遠征メンバー18名をかけた最後の戦いでもあったが、計算することなく目の前の戦いに集中し、全力を尽くした。

 大会優秀選手に選出されたCB多久島良紀(青森山田高3年)ら守備陣の奮闘も見逃せない。その上で、前半からプロ予備軍の関東選抜Bを上回るような攻撃的な戦いを見せた。特に存在感のある動きを見せていたのが、158cmMF高足善(前橋育英高3年)だ。

 本来はFWの選手だが、高校選抜ではSHとして起用されてきた。「大学生相手にシンプルな1対1とかそういうのじゃなくて、高足は動きの中で受けてはたいて、受けてはたいてという形で絶対に入っていくので相手が捕まえづらい」(仲村監督)「善は人の動きを見て動きを変えたりするのが上手い」(徳永)という高足は、味方選手が動いてできたスペースに現れてダイレクトプレーの連続。そして、抜け目なく隙を見つけてシュートを打ち込んだ。

 後半4分には右サイドで徳永がダイレクトの浮き球パス。積極的に縦につけていくことを狙っていた徳永の好パスから高足が抜け出す。最後は後半開始から出場のFW小湊絆(青森山田高3年)が同点ゴールを決めた。

 大会優秀選手に選出された10番のゴールで1-1。勢いに乗った高校選抜はすぐに次の1点を奪う。自陣から切り替え速く攻撃に移ると、徳永が左のMF小池直矢(前橋育英高3年)へ展開する。そして、左ハイサイドへ抜け出したFW古田和之介(履正社高3年)がグラウンダーのラストパス。これを左SB山内恭輔(前橋育英高3年)が左足ダイレクトでゴールへ流し込んだ。前橋育英でもインナーラップする動きを見せていた山内が、「DFでも点を取る」姿勢を表現して勝ち越し弾。これで試合をひっくり返した。

 後半開始から投入された小湊と古田や、高足はプレッシングの部分でも貢献度の高い動き。前線からの好守を攻撃に結びつける高校選抜候補は後半、相手の2本を上回る7本のシュートを放ち、真っ向勝負で押し切った。

 仲村監督は試合後、「率直にめちゃくちゃ嬉しいです。色々な人にデンソーに高校選抜が入る経緯とかも聞いて、それを受け入れた大学連盟さんの懐の深さとかも感じながら……、でも高校選抜がおんぶに抱っこで『絶対に勝てないのにこの大会にいるわけにはいかないじゃないか』というプライドだったりを持っているので。お客さんみたいな形でここにいるんじゃなくて、高校選抜が(大学選抜が優勝するために)『邪魔くせえ』と言われるような存在にならないといけない」。見事なデンチャレ初勝利を飾り、次世代へバトンを繋いだ。

 徳永は「(もっと勝たなければならなかったので、1勝だけでは足りないが)ここで勝って欧州遠征を迎えられるのは、チームにとっても前向きに捉えられるかなと思います」。高校選抜はこの後、メンバーを23名から18名に絞り、4月に欧州遠征を実施。仲村監督は「約束事ももっと増やしていかないといけないし、今はまだ選手の特長を見るくらいなことが多かった。ここからはチームとしてどう機能して行くか。帰って各々の大学でどれだけレベル上げて来てくるのかも大事になってくる」とコメント。“高校サッカーの日本代表チーム”は歴史を変えたデンチャレ同様、欧州での国際試合でもアグレッシブに攻めて勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
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