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「ロス五輪への推薦状」第1回:左利き、俊足の大型左SB田辺幸久。無名のFWが大津でのコンバートをきっかけに大きく飛躍

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U-18世代屈指の左SB、大津高DF田辺幸久は今年、代表入りを勝ち取るか

 2028年ロサンゼルス五輪まであと5年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ

 県3部リーグに所属した中学時代は、地区トレセンにも選ばれない無名の存在だった。180cm近い大型レフティーは、これまで50名以上のJリーガーを輩出してきた名門、大津高(熊本)へ進学。50mを6秒1で走る俊敏性を買われ、2年生ながら左サイドバックの先発に定着。最終学年を迎える今年は高卒でのプロ内定と、世代別代表入りを期待されるのがDF田辺幸久(2年=菊陽市立菊陽中出身)だ。

 中学時代はFWだったが、高校入学直後にCBへとコンバート。「ずっと福田師王さん(神村学園高→ボルシアMG)に憧れていた。あんな選手になりたいと思っていたので、後ろは嫌だった」と振り返るが、高1の12月に左SBにコンバートされると、守備対応だけでなく、思い切りの良い攻撃参加でもスピードが活かされ、田辺の躍動が始まった。「CBだと得点に絡むのは難しいけど、SBなら自分の武器であるスピードが活きる。FWからポジションが変わっても、点を獲りたい気持ちは今も変わらない」。

 高校2年目を迎えた昨年、プレミアリーグ開幕戦ではベンチからも外れたが、第2節からはスタメンとして試合に出続けた。最初は守備経験が浅く、身体能力任せのプレーが多かったが、夏のインターハイ準々決勝で昌平高のMF荒井悠汰(FC東京)とマッチアップしてからは、相手との距離感を詰めてボールを奪い切るなど頭を使った守備を意識するようになったという。試合経験を積むうちに自信が生まれ、秋以降は攻守両面で逞しい姿を見せている。ベスト4まで進んだ選手権でも印象的なプレーを続け、大会優秀選手にも選ばれた。

 迎えた最終学年は中心選手としての存在感が出てきた。チームは過去2年、ターゲット役を務めたFW小林俊瑛(筑波大進学)が卒業したことで、縦に速いサッカーからポゼッション主体のチームへと移行を計っている。田辺はこれまで同様、攻撃参加を意識しつも、「自分が起点を作らないと勝てないと思う」と話す通り、組み立てに関与する回数が増えている。また、2月にはJ1クラブのキャンプにも帯同し、「結構やれるなという手応えはあった」と振り返る。

 夏と冬に印象的な全国デビューを果たした昨年以上のプレーを見せる準備は着実に進んでいる。今年の目標は世代別代表入りとプロ入りだ。「自分のキャリアを考えると、まずはプロ入りより、代表に入りたい」。山城朋大監督からは奮起を促すため、同じ九州出身の左SBで、AFC U17アジアカップ 2023予選のU-16日本代表のメンバーに選ばれた神村学園高のDF吉永夢希(2年)、飯塚高のDF藤井葉大(2年)の名前を出して、ハッパをかけられている。

 特に同じ熊本出身で、ソレッソ熊本時代から名の知られていた吉永に対するライバル意識は強い。「神村学園の(西丸)道人と話した時に、吉永も自分を意識していると聞いたので、負けられない。吉永はまだ下の代でしか代表に入っていない。自分たちの代で入れば、自分が上だと証明できるので、勝負していきたい」。ヨーロッパのサッカーを見るとクロスにも対応ができるよう、SBの大型化は進んでおり、Jのスカウトも大型SBを探している。基準に適したスペックを持つ田辺の注目度は、今後更に高まりそうだ。

執筆者紹介:森田将義
 1985年、京都府生まれ。路頭に迷っていたころに放送作家事務所の社長に拾われ、10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動を始める。その後、2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。主にジュニアから大学までの育成年代を取材する。ゲキサカの他、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェストなどに寄稿している。
森田将義
Text by 森田将義

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