beacon

[関東大会予選]修徳が東京制覇。「個人昇格」する選手、アピール機会を増やしてより上へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

修徳高が東京制覇を果たした

[5.5 関東高校大会東京都予選決勝 修徳高 2-1 実践学園高 駒沢2]

 2023年度 関東高校サッカー大会 東京都予選決勝が5日に行われ、修徳高が2-1で実践学園高に勝利。東京制覇を果たした。なお、両校は5月に東京で開催される関東大会に出場する。

 プリンスリーグ関東勢の帝京高と國學院久我山高が不参加だったことは確か。だが、「個人昇格」を目指す修徳の選手たちは自分たちで、各都県1位による関東大会Aグループへの出場権、新たなアピールチャンスを勝ち取った。

 修徳はこの日、守りの要であるCB山口春汰(3年)が累積警告で出場停止。主軸CB平山俊介(3年)も怪我を抱えていることから、3バックにチャレンジした。注目レフティーFW田島慎之佑(3年)が左WB、DF高橋夏輝(3年)が右WBに入ったが、吉田拓也監督は「大学へ向けてこのゲームで3(バック)にチャレンジできたのは良かった」。この日は「守備のところと、前への追い越しは見て欲しかった」という田島、吉田監督が「とにかく頑張る」と評する高橋がストロングポイントとなり、勝利に貢献しただけでなく、進路へ向けてのアピールにも成功した印象だ。

 修徳はDFラインから丁寧に繋ぎ、豊富な運動量を見せるMF小俣匠摩(3年)や注目の190cmFWンワディケ・ウチェ・ブライアン世雄(3年)が高い位置でボールに係る。その修徳は前半15分、ンワディケが相手を弾き飛ばすかのようなドリブルで中央突破。ここからゴール前で連続攻撃を繰り出すと、最後は右サイドでロングスプリントを繰り返していた高橋からのラストパスをFW大畑響道(3年)が右足でゴールへ蹴り込んだ。

 実践学園は前日に東京都1部リーグの関東一高戦で90分間を戦ったばかり。この日の決勝を重視したメンバー構成だったが、CB鈴木嘉人主将(3年)はフル出場するなど、連戦での大一番となった。だが、その鈴木嘉が相手FWンワディケとの空中戦で上回って見せる。そして、鈴木嘉とCB山城翔也(3年)やGK宮崎幹広(3年)のフィードも活用しながら突破力のあるサイドへ。そこにMF鈴木陸生(3年)らが係る形で崩しへ持ち込んでいた。

 実践学園は28分にカウンターから、32分には連続で縦へのパスを繋いでFW小嵐理翔(3年)が抜け出すが、いずれも修徳DF島田侑歩主将(3年)が絶妙なカバーリング。修徳は堅実な守りを見せる島田ら3バックの好守に加え、高橋、田島の両WBが相手の強みである右SH関根宏斗(3年)と左SH松田昊輝(3年)をよく封じていた。

 後半7分、修徳は交代出場した平山の縦パスでンワディケが抜け出す。セルフジャッジで対応の遅れた実践学園に対し、ンワディケはそのまま持ち込んで右足で大きな2点目を挙げた。

 実践学園は12分、左中間へ抜け出した松田がエンドライン際からラストパス。これが修徳DFの手に当たったという判定でPKが与えられた。松田が右足でPKを狙うが、修徳はGK小森獅音(3年)が右へ跳んでビッグセーブ。跳躍した瞬間に足を攣らせながらも執念の守りで今大会無失点を継続させた。

 実践学園は関根がDF2人を振り切ったシーンや、右SB富井俊翔(2年)のグラウンダーのミドルシュートがゴールを捉えるシーンもあった。また、松田がDFの前に潜り込んでPAへ侵入。そして、28分には関根が右から粘って中へ持ち込み、鈴木陸が左足を振り抜く。最後はこぼれ球を松田が押し込み、修徳ゴールをこじ開けた。

 実践学園はこの日違いを見せていた相手FWンワディケに幾度か押し返され、カウンターを受けていたが、3点目を阻止。逆に交代出場のMF犬飼椋大(3年)が左サイドを突破するなどサイド攻撃でゴールを脅かす。だが、修徳は田島が強度の高い守備で対面の注目MF関根を封鎖するなど集中力を切らさずに1点リードを守り抜いた。

 実践学園の内田尊久監督は「負けるべくして負けたというか、自分たちのちょっとした甘さが出たかなというところです」と指摘。2つの失点シーンは競り負けたことと、プレーを自分たちの判断で止めてしまったことが要因だった。目標の東京4冠、全国ベスト4の一つを惜敗で逃す結果に。指揮官は「成長速度はゆっくりなんですけれども、一歩ずつ半歩ずつ進んでいる感じはあるかなと思います」とした上で目標達成へ向けて甘さを減らすこと、よりこだわることも求めていた。

 一方の修徳は、吉田監督就任3年目で都タイトル奪取。指揮官は「日本一という目標以上に一番重要なのは(生徒たちの)進路」「チームの勝利よりも個人が昇格していくことを目指していければ、チームは勝手に強くなっていく。良いプレーしようぜと。それができるんだったら自然と勝っていく。(また、進路からは)勝利に必要なプレーを持っている個が好まれていくと思う」と口にする。

 この日はベンチ外のサッカー部員たちが大応援を繰り広げていたが、試合が終わるとすぐに練習場へ。今大会もベスト4まではまとまった応援よりも各選手のトレーニングとレベルアップ、個人昇格に重きが置かれていた。ンワディケがJクラブへの練習参加をしているほか、選手たちは3月から積極的に大学へ練習参加。この日出場停止だった山口も、応援には参加せず、将来のため、大学の練習参加を優先した。

 大学やプロで通用するプレーヤーになるため、自主練の時間を増やしてンワディケや田島のようなスペシャルな武器を磨いたり、多様なサッカーに対応できる選手になることを目指す取り組みが行われているという。できないことがあっても、取り組む姿勢によってチャンスが与えられ、公式戦で使われることでまた大きな成長を示す選手もいるようだ。

 小森は「みんな一個上、一流の大学でできるように、自分としても日々練習も試合もしているので良いところへいけるように頑張りたいと思っています」と語った。選手たちの勝つことへの情熱も強い。田島は「もちろんインハイと選手権で全国をまず目指してやっていくのと日本一。あとは自分の将来のためにやっていきたい」。それぞれが評価される選手になり、「個人昇格」と結果の両方を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)

TOP