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[MOM4349]柏U-18FW近野伸大(3年)_長期離脱から帰ってきた“2023年の9番”が気合のドッピエッタでチームを救う!

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最終盤に叩き出した同点ゴールに吠える柏レイソルU-18FW近野伸大(3年=柏レイソルU-15出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.2 高円宮杯プレミアリーグEAST第10節 柏U-18 2-2 川崎F U-18 日立柏総合グランド]

 このチームで、このみんなと一緒にサッカーをできる時間も、もう限られている。だからこそ、1つでも多く試合に勝って、1回でも多くみんなと笑い合いたい。その瞬間を自分のゴールで引き寄せられるのならば、それがもちろん最高だ。

「ユースのみんなは、3年生も下級生も一緒にいて凄く楽しいです。でも、もう時間も残り半年ぐらいしかないので、みんなで勝てる回数を増やして、みんなで笑い合う回数を増やしたいですね。とにかく勝って、みんなで笑いたいです」。

柏レイソルU-18(千葉)のストライカーナンバーを引き継いだ、190センチの体躯を誇る長身アタッカー。FW近野伸大(3年=柏レイソルU-15出身)は最高の仲間と過ごす時間にもっと歓喜と笑顔を連れてくるため、とにかく結果を出し続けることを自分に課している。

 首位争いを演じている川崎フロンターレU-18をホームに迎えた一戦。開始3分でストライカーの本能が炸裂する。左サイドでDF猪狩鉄太(2年)のパスを引き出した近野は、「猪狩くんが良いタイミングで出してくれたので、もうニアハイを狙って迷わず振ったという感じです」と左足を強振。軌道は狙い通りニアサイドを貫き、ゴールへ突き刺さる。

 ただ、あまりに唐突なゴールに周囲が状況を把握し切れていなかった。「自分も『入ったのかな?』って思いましたし、後ろの選手たちも何が起きたのかわからなかったって言っていて、全然喜びに来てくれなかったので、ちょっと寂しかったです。スーパーゴールだったのに(笑)」。一呼吸あってから、チームメイトと歓喜を共有する。

 逆転を許したチームを救ったのは最終盤だ。後半40分。左サイドで得たFK。ゴール前で待ち受けている近野に、“後輩”のMF黒沢偲道(2年)がこそっと耳打ちする。「大木くんが速いボールでファーに蹴ることは黒沢くんから“コショコショ話”で聞いていたので」。DF大木海世(3年)が蹴り込んだファーへの低い弾道に飛び込むと、身体を折りたたみながらヘディングをゴールネットへ滑り込ませる。

「合わせるのは難しかったですけど、気持ちで入れました」。9番が叩き出した同点弾に、ピッチもベンチも大喜び。前節の流通経済大柏高戦は逆転負けを喫していただけに、絶対に負けたくない一戦で気合のドッピエッタ。近野の2発がチームに貴重な勝ち点1をもたらした。

 今季はケガからのスタートだった。ようやくプレミアの試合に出場したのは5月に入ってから。長いリハビリ期間には気持ちが落ちかけたこともあったが、ある試合の光景がとにかく心に刺さったという。

「市船戦で劇的なゴールが決まった時に、自分はベンチの外から見ていたんですけど、なんかメッチャ感動しちゃって、それに勇気付けられたというか、復帰のモチベーションが凄く上がって、『自分もああいうふうにチームを救いたいな』と凄く思ったんですよね」。プレミアリーグEAST第3節の市立船橋高戦は、終了直前の後半45+7分にFW戸田晶斗(2年)が劇的な決勝ゴールを記録して、2-1で今季初勝利を掴んだ一戦。何より自分の気持ちを奮い立たせてくれたのは、やはり仲間の必死に戦う姿だったというわけだ。

 リーグ開幕前に開催された3月のサニックス杯でも、印象的な光景があった。柏U-18のベンチには常に9番のユニフォームが掲げられていたのだ。そのことについて、本人はその理由をこう明かす。

「キャプテンからサニックスに行く前ぐらいの練習の時に『ユニフォーム持ってきて』と言われて、それでユニフォームを渡したら、毎試合掲げてくれていたんですよね。それは自分も見ていましたし、2位を獲った大会にユニフォームだけでもその場にいられたというのは、結構嬉しかったです」。

 “9番の理由”を尋ねられた酒井直樹監督も「近野はみんなからリスペクトされているんでしょうね」と語っていたが、彼のチーム内における立ち位置が良くわかるようなエピソードではないだろうか。



 ようやく目に見える結果を残したものの、これで満足するようなタマではない。「フロンターレさん相手に2点獲れたことはプラスに捉えていますけど、もっと上に行くためには3点目を獲りたかったですし、試合は引き分けで終わってしまっているわけで、3点目を獲ってこそチームを救ったと言えるので、2点で満足せずに、3点、4点と獲れるように努力していきます」。とにかく目指すのは次のゴール。背負っている番号を考えれば、その意志にも納得だ。

「真家(英嵩)くんと山本(桜大)くんは自分と同じ9番を付けていて、自分も1年生の頃からAチームにいさせてもらって、その2人を間近で見ていましたし、あの2人は目に見える結果を残してトップに行ったので、自分もまだまだ点を獲っていかないとなという想いはありますね。それこそ(奥田)陽琉くんからは背中や声で引っ張っていくところも感じましたし、9番が得点だけではない部分でも貢献していることを感じていたので、自分もそのぐらい背中で引っ張っていける存在になって、その上で点ももっと獲らなきゃなと思っています」。

 柏U-18に脈々と引き継がれている、ナンバー9の系譜。2023年のそれを託された近野は、ここからのチームの未来を、そして自身の未来を切り拓いていくためにも、とにかく目の前のゴールを1つずつ、確実に、獲り続けていく。



(取材・文 土屋雅史) 
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