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重ねてきた経験の先に目指すのはすべての山の頂。横浜FMユースMF白須健斗は勝負の半年間へ突き進む

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横浜F・マリノスユースが誇るサイドアタッカー、MF白須健斗(2年=横浜F・マリノスジュニアユース出身)

[7.1 高円宮杯プレミアリーグEAST第10節 横浜FMユース 0-0 尚志高 保土ケ谷]

 どれだけ良いプレーをしたって、満足できるはずもない。もっと上手い自分に、もっと強いチームに成長していかない限りは、戦うステージも上がってはいかないからだ。悔しい想いは十分味わってきた。もう下を向いている時間なんて、1秒もない。

「今日も勝ち切れていないということを考えれば、攻撃の人間として決め切る部分はたくさんあったので、そういうところを決め切れないと、上にも行けないですし、選ばれるものにも選ばれなくなってしまうので、そういうところは練習からこだわってやらないといけないと思っています」。

 横浜F・マリノスユース(神奈川)の左サイドを彩るドリブラー。MF白須健斗(2年=横浜F・マリノスジュニアユース出身)はあらゆる目標を叶えるために、ここから勝負の半年間へ突き進んでいく。

 絶対に勝ちたい試合だった。尚志高校と対峙したプレミアリーグEAST第10節。神奈川ダービーとなった前節の川崎フロンターレU-18戦は、アウェイで0-4と完敗。屈辱的なスコア差を付けられたチームは、改めて今節に向けて気持ちを入れ直す。

「練習から確実に意識は変わっていたと思いますし、みんながこの試合は『やってやるぞ』ということを表現できていて、それは1つの成長として良かったと思います」と白須が話したように、トリコロールの選手たちは確かに戦う姿勢をピッチ上で発揮していた。だが、やや押し気味にゲームを進める中でも、ゴールを陥れるまでには至らない。

 0-0で迎えた最終盤の後半43分には、7番に決定的なチャンスが訪れる。右サイドからMF飯村太基(3年)がグラウンダーでピンポイントクロス。白須はファーに走り込むも、シュートは足にヒットしない。「よく覚えていないんですけど、合わせに行こうとしたら浮いてしまいました……」。

 結果はスコアレスドロー。「今日もホームでサポーターの方々が声を出して応援してくれていましたし、チームでも『ここは勝たないといけない』という共通認識があったので、勝ちたかったです」。5日前に17歳になったばかりのサイドアタッカーは、そう言いながら悔しげな表情を浮かべる。

 実は“国際LINE”で檄を飛ばされていたという。「(望月)耕平とはLINEでも話したりしていて、『今日やってこい』と言われていたので、自分が決められなくて悔しかったですね」。横浜FMユースの10番を背負うMF望月耕平(2年)が、メッセージを送ってきたのはタイから。FIFA U-17ワールドカップの出場権を見事に勝ち獲ったU-17日本代表の一員として、遠征先にいるからだ。

「U-17の試合は、練習で見れなかった時は途中から見たんですけど、見れる時は全部見ました」という白須も、昨年8月にはU-16日本代表としてウズベキスタン遠征に参加。今回のアジア予選のメンバーに選ばれている選手たちとも、一緒にプレーしてきた経験を有している。もちろんプレミアではアピールを重ねてきたが、世界を懸けた勝負の代表からは選外に。その現状が悔しくないはずがない。

「もちろん積極的に見たくはないというか、悔しい気持ちはありますけど、もしあそこに入れるとしたら、あのメンバーの中で同じようなサッカーをしないといけないわけですし、やっぱり見て学ぶものもメチャメチャ多いので、それで見ているところはあります」。ただ漫然と眺めているわけではない。あの中に自分が入ったら。あの局面に立たされているのが自分だったら。イメージは、十分に膨らませている。

「チームメイトの(望月)耕平が得点王タイで並んでいて、そういうところは凄く刺激になりましたし、負けていられないなって。でも、あそこに食い込むには確実に彼ら以上に結果を出さないといけないと思いますし、そういうところは突き詰めてやらないといけないと思っています」。だからこそ、この日のノーゴールはいつも以上に納得できなかったのだ。

 貴重な経験は重ねている。6月7日の天皇杯2回戦・ブリオベッカ浦安戦では、2種登録選手の中でただ1人メンバー入りを果たし、三ツ沢のピッチへ。試合出場は叶わなかったものの、プロの雰囲気を一足先に間近で味わった。

「スタメンの選手も、ベンチ外の選手も、みんなが勝利に向かって一直線でしたし、いろいろな立ち位置がある中で、チームのために働くという部分で学ぶ部分が多くて、『ああいう舞台でやっていかなきゃダメかな』とは強く感じました」。

 とりわけ印象に残ったのは、日本代表も経験しているあのスピードスターだったという。「宮市(亮)選手は誰よりも前向きにやられていたんです。アップも一緒にやってくれましたし、自分に積極的に声を掛けてくれたことで凄くやりやすかったですし、そのあとの柏レイソル戦で決勝ゴールを決めたのを見て、『やっぱりああいう選手にチャンスが巡ってくるのかな』とは強く感じました」。

 ユース。トップチーム。年代別代表。それぞれのカテゴリーで目指すべきものは、もう自分の中では明確過ぎるほど明確だ。

「もちろんプレミアリーグは優勝を狙っていますし、クラブユースは去年の準優勝が僕は凄く悔しくて、決勝も最終的に足を攣って交代してしまったんですけど、そういう走力も自分が一番大切さを知っているので、そういう部分はチームに還元して、今年こそ日本一を狙いたいです。それに僕は高2でプロ契約を掴みたいと考えていて、今年が一番の勝負なので、プロ契約も掴みたいですし、U-17ワールドカップはもうチームで結果を残すほかに呼ばれる手段はないと思うので、自分のチームで死に物狂いになってやることで、ようやく代表が付いてくるのかなと思っています」。

 ユースでのタイトル獲得。プロ契約。U-17ワールドカップのメンバー入り。高く掲げる目標なんて、欲張り過ぎるぐらいがちょうどいい。アグレッシブでクレバーなサイドアタッカー。白須健斗は間違いなくその姿を確認しているすべての山の頂を制するため、ここから勝負の半年間へ突き進んでいく。



(取材・文 土屋雅史) 
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