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17人の3年生全員が欠かせない戦力。最後の夏を戦うJFAアカデミー福島は再逆転で湘南U-18を下して白星発進!

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JFAアカデミー福島U-18は再逆転で勝ち点3を獲得!

[7.23 クラブユース選手権(U-18)GL第1節 JFAアカデミー福島U-18 3-2 湘南U-18 コーエィ前橋フットボールセンターB]

「逆転された時には、たぶんみんな気持ちが落ちた部分もあったと思うんですけど、『もう1回前向きにプレーしていこう』とみんなで声を掛けてから、チーム全員で戦えて、途中交代で入った選手も点を決めてくれて、また逆転できたので、最後まで諦めないという部分では良いゲームだったかなと思います」(JFAアカデミー福島U-18・長尾ジョシュア文典)。

 鮮やかな再逆転で、逞しく手繰り寄せた勝ち点3。第47回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会は23日、群馬県のコーエィ前橋フットボールセンター(下増田運動場)でグループステージ1日目が開催され、JFAアカデミー福島U-18(東海1)と湘南ベルマーレU-18(関東8)が対峙。1-1で迎えた後半に湘南U-18はFW森谷一斗(3年)のゴールで逆転したが、JFAアカデミー福島もセットプレーからMF山崎太湧(3年)のゴラッソで追い付くと、さらに途中出場のMF山口惟博(3年)が叩き込んだミドルシュートが決勝点。今年度でチームの活動が終了するため、今回が最後の大会参戦となるJFAアカデミー福島が3-2で力強く勝利を掴み取った。

 全国大会の初戦は、お互いがモチベーション高くゲームに入る。前半3分は湘南U-18。左サイドからMF奥村海生(3年)が果敢なカットインで切れ込み、そのままフィニッシュ。ここはJFAアカデミー福島のGK和泉空良(3年)にキャッチされたものの、まずはオープニングシュートを。6分はJFAアカデミー福島。右サイドからFW花城琳斗(3年)が蹴り込んだCKに、ニアへ突っ込んだFW吉田喬(3年)が合わせたボレーはゴール右へ外れるも、セットプレーからチャンスを創出する。

 すると、スコアが動いたのは14分。左サイドからMF植田陸(3年)が上げたクロスに、ファーへ潜った吉田はヘディングで折り返す形になり、最後はDF林晃希(3年)がプッシュしたボールがゴールネットを揺らす。「アシストする気はなかったんですけど(笑)」と笑った吉田のアシストから、神出鬼没の左サイドバックが先制点。JFAアカデミー福島が1点をリードする。

 追い掛ける展開になった湘南U-18もすぐさま反撃。19分にFWメイソン埜吾(3年)が放ったシュートは和泉に阻まれ、26分に奥村の折り返しからキャプテンのMF秋山虎之亮(3年)が狙ったシュートはわずかに枠の上へ外れたが、歓喜を引き寄せたのは34分。それまでも再三チャンスを作っていたMF渡部一歴(3年)が中央から完璧なスルーパスを送ると、走ったメイソンはGKとの1対1を冷静に制し、ゴールを陥れる。白熱の前半は1-1の同点で35分間が終了した。

 後半は湘南U-18の出足が鋭い。1分にはメイソンのポストプレーから、MF田村勇人(3年)が枠内シュートを打ち込むも和泉がキャッチ。3分にもU-17日本代表のDF本多康太郎(2年)が右サイドを強引に運び、MF東克俊(3年)の落としから渡部のシュートはゴール左へ。7分にも田村のラストパスから、メイソンに訪れた決定機はここも和泉に阻まれるも、アタッカー陣が滲ませる強い得点への意欲。

 8分。右サイドのハーフウェーラインあたりで得たFK。一瞬止まった流れを見逃さず、秋山が打ち込んだロングキックが森谷に届くと、9番のストライカーは丁寧なフィニッシュワークで、ボールをゴールネットへ流し込む。2-1。逆転。湘南U-18が一歩前に出る。



「逆転された事実は変えられないので、『もう点を獲るしかない』と、そこをみんなで目指していました」(花城)。失点から2分後の10分。JFAアカデミー福島が左サイドで獲得したCK。花城の狙いは密集している中央ではなく、ぽっかり空いたファーサイド。「弾道もちょっと低くて、結構前寄りのボールだったので、あとは当てるだけでした」という山崎がフリーで放った完璧なボレーは、ゴールネットへ美しく突き刺さる。「練習もやっていましたし、イメージ通りにドンピシャで決まりましたね」と花城が話せば、「練習では外していたんですけど、本番のために取っておいた感じでしたね(笑)」と山崎も笑顔。2-2。あっという間にスコアは振り出しに引き戻される。

 試合を決めたのは、「『自分が点を決めてチームを勝たせよう』と思ってピッチに入りました」という途中出場の14番。25分。中盤でのルーズボールにいち早く反応した山口は、少しだけ中央を運ぶと躊躇なく「コースとかはあまり狙わずに、思い切って」右足一閃。軌道はクロスバーの下側をかすめながら、ゴールネットを捕獲する。

「練習から常に『ゴールを狙え』とは言われていたので、何も考えずに思い切り打ったら良いところに行ってくれました」(山口)。シーズン当初はスタメンだったものの、最近はベンチスタートも多かった中で、津田恵太監督も「朝練を1人で始めて、コツコツとコツコツとやってきたことが、一番良い形で、出来過ぎという形で出ましたよね(笑)」と明かした“ジョーカー”の一撃で勝負あり。JFAアカデミー福島が再逆転で湘南U-18を下し、貴重な勝ち点3を手繰り寄せた。

 前述したように今年度で活動が終了するJFAアカデミー福島は、3年生の17人だけでこの大会に臨んでいる。「去年も30人という少ない人数だったんですけど、今年は全員がベンチに入れますし、ベンチの人もスタメンの人も全員で周囲のケアをしていくという中で、『自分がやることがチームのためになる』という意識が一体感になっているのかなと思います」と話すのはキャプテンのDF長尾ジョシュア文典(3年)。試合中はベンチメンバーも積極的に仕事をこなし、試合後は17人全員で後片付けを分担する。

「水出しとか、水の作り方とか、少ない人数の中でどうやったら試合後の疲労回復ができるか、ハーフタイム中の身体の冷やし方も、もう大会が始まる2週間ぐらい前から、夜にみんなで集まって1時間ぐらい話していましたし、そういう部分は徹底してみんなでやってきたので、そこに関しては少ない人数だからこそできたのかなと思います」と明かすのは花城。限られた人数だからこそ、1人1人が自覚を持ち、勝利のために行動するマインドを、彼らはしっかりと携えている。

 津田監督の言葉も印象深い。「交代して入った選手も、ハーフタイムにはチームメイトの身体を冷やす準備もしないといけなかった中で、自分に何ができるかということをしっかりと理解しながらやってくれたことが、あのゴールに繋がったのかなと思います。これがこの人数だからできる戦いなのかなとは思いますね。本当に選手たちも、他のスタッフたちもできり限りのことを尽くしてここまで来たという感じで、素晴らしい大会の入りができたので、この流れを次に繋げていけるように、ここから準備も細かくやっていきたいと思います」。

 今やるべきことを、ピッチの上でも、ピッチの外でも過不足なく遂行できる、17人の3年生全員が欠かせない戦力。JFAアカデミー福島U-18の夏は、ここからが本番だ。



(取材・文 土屋雅史)
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