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名門・藤枝東はMF野田隼太郎主将を中心に繋いで、繋いで多彩な攻撃。今年は静岡決勝や大舞台で「いつも通り繋げる」「勝つ」チームに

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藤枝東高の大黒柱・MF野田隼太郎主将が相手のタックルをかわしに行く

[9.23 高円宮杯プリンスリーグ東海第13節 藤枝明誠高 3-2 藤枝東高 藤枝総合]

「いつも通り繋げる」力が身に付いて来ている。名門・藤枝東高(静岡)は前半32分からの11分間で3失点。後半はシュート13本で1点に終わるなど課題が出て、プリンスリーグ東海での連勝が6でストップした。

 それでも、鷲巣延圭監督が「凄く良いですよ。気が利くプレーヤー」という中盤の要・MF金澤駿(3年)や能力の高い右SB中東晴哉(3年)、MF泉新之助(3年)と主力を欠く中でクオリティの高い攻撃を披露した。

 GK、DFラインから、自信を持ってビルドアップ。自陣PA、コーナー付近でも安易に蹴り出さず、意図的にボールを繋いで前進した。前半7分には自陣深い位置からのビルドアップで右サイドを攻略。最後は指揮官が「(元々サブだったが)代わって出てきて、ずっと良かった」というMF武田陸(3年)が、見事な右足シュートを決めて先制する。

 U-17日本高校選抜の右SB野田隼太郎主将(3年)が、今年からボランチとして“心臓役”に。低い位置でボールに係わり、相手のマークを剥がし、展開を変えるキックなどでリズムを生み出していた。

 そして前節、浜松開誠館高(静岡)相手に4得点をマークした大型FW植野悠斗(3年)やトップ下の技巧派レフティーMF渡辺皐(3年)が崩しに係るなどチャンスを量産。また、鷲巣監督が「GKで助かっている」と評したGK藤崎蒼葉(3年)が2本、3本とビッグセーブしてリードを守っていた。だが、野田へのパスコースが切られる中でサイドの優位性を活かせずに停滞。同点に追いつかれてから悪い流れを止められなかった。

 野田は「結構良い時間に先制できて、このまま気持ち的には乗っていける感じだったんですけれども、前半終了直前に悪い流れのまま失点を重ねてしまって、あそこで気を引き締めてまとまってやっていたならば、1点差くらいならばひっくり返せたかなと。結構チームとして追いつかれた時に下がってしまって、そこは自分たちの課題で持ってきたところだったので、これから時間無いのでこだわってやっていかないといけない」と改善を誓う。

 注目株のMFはボランチでのプレーについて、「結構慣れてきてボールを受けることにも抵抗なく、逆に受けたいくらいの気持ちになってきた。(また、)考える量とかSBだったので(以前は)見る量とか限定的だったんですけれども、中盤入ったことで見る量や選択肢を増やすという意味ではSBよりも選択肢を増やしてできるようになってきたかなと思います。まだまだ攻撃へのパスとか足りない部分もあるんですけれども、そこは練習や試合で追求していきたい」と語る。

 主将は技術力を発揮する一方、周囲に気を遣いながらスペースを埋め、球際で一際ハードワーク。後半開始直後に植野とこの日存在感を放ったFW湯山大輔(2年)のコンビで1点を返すと、足の止まった相手を攻め立てた。だが、後半10分の3連続シュートを藤枝明誠の好守に阻まれるなど、同点に追いつくことができない。怪我を抱える植野ら主力組が交代した後も交代出場組が奮闘したが、ゴール前に人数をかけた相手から3点目を奪うことはできなかった。

 それでも、特に前半30分頃までは攻撃での丁寧な組み立てと正確なサイドチェンジ、連動した崩し。後半も多くの時間帯で攻め続けた。リスクの高い攻撃をしているだけに、ミスから失点するケースがあることも確か。簡単にチャンスを作られるような課題もある一方、湯山は「夏の前にビルドアップのところで確認して、夏の遠征で(青森)山田とかインターハイ上位のところに通用した部分があって、結構自信ついてやっている」と手応えも口にする。

 攻撃面は鷲巣監督や小林公平コーチの指導の下、特にこだわってきた部分だ。藤枝東は昨年、一昨年と2年連続で選手権予選決勝進出。だが、決勝で自分たちのサッカーができずに敗れている。野田は「決勝では自分たち何もできなくて、蹴るだけのサッカーになってしまったので、今年は絶対に全国行きたいし、全国で勝つというのが目標なので、決勝の舞台でもいつも通り繋げるように自信をつけていきたいと思います」。目指す姿に着実に近づいてきている。

 U-17日本代表のエースFW良知英祥(3年)が長期離脱している中、シーズン開幕当初は苦しんだ。それでも、自分たちのサッカーを構築し、湯山やCB村上樹(2年)ら下級生も台頭。ベンチメンバーも実戦で特長を発揮している。また、注目ルーキーのMF泉孝太郎(1年)も怪我から復調中。伸びしろのある名門校は細部を修正しながら、プリンスリーグ東海や静岡決勝、全国大会で「いつも通り」を発揮して勝つチームになる。

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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