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過去2度のプレミアは最下位。“首位”躍進の尚志は攻め続け、後半43分のゴールで市船とドロー

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暫定首位の尚志高(エンジ)は終了間際にMF濱田昂希のPKで追いつき、勝点1獲得

[9.24 高円宮杯プレミアリーグEAST第15節 尚志高 1-1 市立船橋高 尚志高校第3G]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 EASTは24日、第15節2日目を行い、暫定首位の尚志高(福島)と4位・市立船橋高(千葉)が対戦。1-1で引き分けた。

 尚志はこれまで2度のプレミアリーグEAST参戦でいずれも最下位降格。3度目の挑戦となった今年は、第14節終了時点で消化試合が1試合多いものの、10勝3分2敗で暫定首位に立っている。19年の開幕戦でFW染野唯月(現東京V)がハットトリックを達成し、第1節だけ首位だった経験はあるが、後半戦半ばの段階で優勝争いを演じる大躍進。5連勝と好調なチームは、ホームに名門・市立船橋を迎え撃った。

 尚志は前半7分、右クロスからU-18日本代表候補FW網代陽勇(3年)がクロスバー直撃の高打点ヘッド。その後も仲村浩二監督が「笹生が強烈だから、前半からペース握れないことはない」と信頼を置くFW笹生悠太(3年)が馬力のある動きで相手DFに仕掛け、Jクラブ注目のU-19日本代表MF安齋悠人(3年)がコンビネーションから枠へ右足シュートを飛ばす。

 一方、今季の市立船橋は引き分け数が多いものの、尚志と同じくわずか2敗(4勝8分)。前節欠場のU-18日本代表FW郡司璃来(3年)が復帰し、首位撃破に挑戦した。立ち上がりこそ、司令塔のMF太田隼剛主将(3年)中心にテンポよくボールを動かしていたが、尚志は相手の2CBと太田によるビルドアップ対策に成功。サイドへ開いたところに強烈な圧力を掛けて縦パスを引っ掛けるなど、ミスを誘発した。

 市立船橋は13分、左タッチライン際から仕掛けた郡司がシュートへ持ち込み、キープ力を見せるFW久保原心優(2年)がボールを収めて前を向くシーンも。またCB宮川瑛光(3年)、CB白土典汰(3年)が相手の攻撃を粘り強く弾き返していたものの、セカンドボールをなかなか拾えず、ボールを保持してもなかなかパスを差し込むことができない。

 逆に尚志はCB高瀬大也(3年)を中心とした好守からサイド攻撃へ持ち込み、MF藤川壮史(3年)や笹生がシュート。34分には、安齋が左サイドで2人、3人とかわして一気にゴールへ迫る。市立船橋は右SB佐藤凛音(3年)が良く対抗していたが、安齋は簡単には止まらず、脅威になり続けていた。

 市立船橋の波多秀吾監督は、「ちょっとビルドアップとかにこだわってやっているから、怖さがないという話をハーフタイムにしました」と振り返る。前半はボールを繋ぐことに固執しすぎた面があり、背後へ抜けるボールや動き、また縦パスが入ってからスピードを上げるシーンが少なかった。

 尚志は後半、右サイドで繰り返し前へ出る10番MF若林来希(3年)のクロスなどから、抜群の高さを見せる網代がヘディングシュート。また、安齋が鋭いカットインからシュートを狙い、12分にはMF吉田尚平(3年)が奪い返しから右足を振り抜く。だが、これは市立船橋GKギマラエス・ニコラス(2年)が反応し、クロスバーをヒット。尚志はこの日、コンディション面を考慮されたU-19日本代表MF神田拓人(3年)がベンチスタートだったが、奪い返しで健闘する吉田、司令塔の藤川が仲村監督も「ボランチがきょうは本当に良く頑張ってくれた」と認めるパフォーマンス。相手を押し込み続け、セットプレーを含めてチャンスを増やした。

 だが、市立船橋はGKギマラエス・ニコラスが好守を連発。左SHからボランチに移ったMF足立陽(3年)のカバーリングやDFラインも奮闘するなど0-0を続ける。終盤に掛けて狙いとする攻撃回数の増えた市立船橋に対し、尚志は35分、2戦連発中のMF濱田昂希(3年)を投入。だが、直後に市立船橋が先制する。

 36分、市立船橋はカウンターで中盤を突破。そして、MF佐々木裕涼(3年)がDFのタイミングを外して右中間の郡司へスルーパスを通す。これを受けた郡司はGKとの駆け引きから右足を一閃。DFに当たったボールがゴールを破り、先制点となった。

 勝利に大きく近づいた市立船橋は、各選手が確認の声を発しながら守備。だが、波多監督は「(声で修正、味方に状況を伝えるなど、)細かいところや基本的なことができていない」と指摘する。

 43分、尚志は左中間で得たFKから、ゲーム主将・左SB白石蓮(3年)がクイックでグラウンダーの縦パスを通す。これを受けた濱田が1対2の状況からトリブル突破にチャレンジ。PAでDFに足を掛けられ、PKを獲得した。このPKを濱田が自ら右足で決めて同点。互いに勝点3の欲しい両校は最後まで攻め合う。

 45分、市立船橋は左サイドで郡司がキープしてクロス。これをファーで受けた太田が左足で狙うが、枠を外れた。尚志も安齋のドリブル、クロスから逆転を狙ったが、2点目を奪うことができないまま試合終了。尚志は青森山田高(青森)、川崎F U-18にかわされ、暫定3位へ順位を落としたものの、仲村監督は「きょうのゲームなんかも落ち込むゲームではない。全然良かった。(テーマは勝点3だったが、)1というのも悪くない。失点したあとに落ち込まないで取りに行けたのも良かった」と前向きだった。

 安齋は今年の尚志について、「(公式戦よりも)紅白戦の方が緊張感も高いし、ピリピリしている」と説明する。選手層が厚く、様々な戦い方に対応できるチームは日常から意識の高い競争。プレミアリーグで自分たちの課題を学び、各選手が自主練で武器を磨いている。好調なチームはこの日、仲村監督も「前後半合わせてもトータルで一番良いなと思うようなゲーム」という内容の90分間だった。

 シュート数で20対4と圧倒したものの、勝点3を奪うことはできなかった。だが、優勝争いへ向けて貴重な勝点1獲得だ。仲村監督は「(1-0で勝った9月3日の)FC東京の後から目標を優勝にしたんですよ」と明かす。また、安齋は「(シーズン当初、優勝争いは)本当に考えていなかったですね。残留争いだと正直自分も思っていたので。それでも、ここまで来たのでファイナル行きたいです。きょうの試合引き分けて、もっと良い強度で(練習)できると思うので、相手どうこう関係なく自分たちのサッカーができれば(プレミアリーグ、選手権も)日本一になれると信じているので、この冬はマジ取りに行きます」。勝点1差の首位・青森山田、同勝点で並ぶ2位・川崎F U-18との直接対決をいずれも残している状況。初のプレミアリーグ制覇、そして選手権優勝へ向けて、尚志が秋冬に白星を重ねる。

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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