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[MOM4548]神戸U-18MF坂本翔偉(3年)_新たな10番像を確立したリーダー、4年後の“帰還”を目指して大学での進化を誓う

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ヴィッセル神戸U-18のMF坂本翔偉(3年)はこの1年、リーダーとして逞しく成長

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.3 高円宮杯プレミアリーグWEST第22節 神戸U-18 5-0 静岡学園高 いぶきの森球技場(人工芝)]

 テンポ良くパスを繋いで崩すサッカーが売りのヴィッセル神戸U-18において、10番の重みは他とは違う。FW表原玄太(栃木シティFC)、MF安井拓也(現、FC町田ゼルビア)など過去に授かってきたのはチームでも屈指の技巧派タイプ。昨年、一昨年と2年連続で10番を付け、現在はラトビアでプレーするMF永澤海風も上手さを前面に押し出した攻撃的なプレイヤーだった。

 今年の10番であるMF坂本翔偉(3年)はそうした神戸U-18の系統とは異なるかもしれない。本人も自覚しており、こう口にする。「今までは上手い選手が10番を付けていたのですが、そこで自分は勝負していない。自分のプレー、自分のやり方でこの1年頑張ってきた」。

 先代たちのように華麗なプレーで、試合を決定づけるタイプではない。だが、豊富な運動量を生かし攻守両面に顔を出す。危ない場面では身体を張ってピンチを防ぎ、持ち場である中盤ではボールを奪われないようにキープして味方を生かす。新たな10番像とも言える坂本の働きは、静岡学園高(静岡)をホームに迎えた最終節でも健在。「自分たちの勝ちパターンは先に1点を獲って、泥臭く守備をする」と話す流れに持ち込み、2点リードで前半を終える。

 献身的なプレーが目立った前半とは一転し、後半は目に分かる形でもチームに貢献する。後半9分にはFW田中一成(3年)が放ったシュートは相手GKに防がれたが、こぼれ球をゴール前で押し込み、3点目をマーク。36分には自陣で奪ったボールを右中間で受けると、「最初は素早く(本間)ジャスティンに出そうと思ったのですが、自分が1個剥がすことで前の選手が楽になるかなと思っていた」と持ち運びで上手く時間を作り、4点目となったMF瀬口大翔(1年)のゴールに繋げた。逆転優勝は果たせず、試合後は悔し涙を流したが、この一年、坂本の働きは大きかった。

「試合を積み重ねるごとに良くない所や、良くなっている所を見つけることができて、かなり成長できた1年だったのかなと思います」。本人がそう話す通り、この一年の成長は著しい。昨年から試合経験を積んできたが、どちらかといえば周りに良さを引き出されるタイプだった。負けん気が強いゆえに、感情を上手くコントロールできない試合も少なくなかったという。

 下級生が主力を占める今年は、昨年のチームを知る数少ない選手として期待は大きかった。一方で「キャプテン向きの性格ではないかなと思っていた」と安部雄大監督は振り返るが、卒業した先輩たちに尋ねると坂本を推す声が多かったことから、リーダーの座を託した。「お前のことをみんなが信用しているから決めたと彼には伝えました」(安部監督)。

 シーズン当初に見られた幼さは試合を重ねるごとに消えていった。上手く行かない試合では1年生を宥める姿が見られるなど、精神的な成長はプレーに繋がり、ピッチ内で落ち着きが生まれた。プレースタイルで言えばこれまでの10番とは違うかもしれないが、結果的にはチームトップの9得点をマーク。新たな10番像を確立したと言っても過言ではない。

 10歳からヴィッセル一筋だが、トップチームへの昇格は果たせず、来年からは関東の強豪大学へ進学予定。「サッカーのほとんどをここでやってきたので、卒団するのは少し心細い」と感傷に浸りつつも、「大学で成長して、このクラブにまた戻ってきたい」と続ける。この一年間、彼が見せた成長曲線なら、4年後の帰還は夢物語ではない。今度はトップチームで坂本らしい10番像を作ってくれるはずだ。

(取材・文 森田将義)
●高円宮杯プレミアリーグ2023特集
ゲキサカ編集部
Text by ゲキサカ編集部

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