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[MOM4560]帝京長岡FW堀颯汰(3年)_エースが逆足2発でプレミア昇格手繰り寄せる

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.10 プレミアプレーオフ2回戦 帝京長岡2-1浦和ユース 広島広域公園 第一球技場]

 プレミアリーグ昇格をかけたプレーオフは、1年生の頃から試合に出続け、悔しい思いを味わってきた舞台だった。帝京長岡高のFW堀颯汰(3年)は「本当に、チームとして初のプレミア参入を自分たちの代で決めることができたのが、一番嬉しいです」と喜んだ。21年はプレーオフ2回戦で桐生一高に2-0から2-3の逆転負け。昨年は堀が前半2分で先制点を決めたが、尚志高に1-2で逆転負けと、あと一歩がずっと届かなかった。しかも、チームとしては今回で6度目のプレーオフ挑戦。やっとの思いだった。

 エースで主将の役割も担う堀は、今季の主軸。ただし、8日の1回戦で岡山学芸館高(中国2/岡山)を破ったが、試合中に負傷。2回戦の浦和ユース戦は、痛みの再発により後半16分に自ら交代を申し出る格好になった。しかし、それまでに2得点を挙げてチームを勝利に導く活躍ぶりを見せた。

 先制点は前半18分。敵陣バイタルエリアで右後方からのパスを受けると「後ろにスペースがあるのは見えていたので、そこに持って行きたいと思っていた」と冷静にターン。身体の向きをゴール方向へ開いて左前方へドリブルで少し持ち出すと「ちょっと体が重かったけど、打っちゃえ! みたいな感じで」と放った左足のシュートは、うまくファーサイドへ抜けてゴールネットを揺らした。

 さらに前半44分、反撃ムードを強める浦和ユースが前がかりになったところで間隙を突いた。右DF松岡涼空(3年)のロングフィードを呼び込むと、最初のタッチでぐいと前進して相手を置き去りにした。「相手のラインが高かったので、タイミングよく抜け出せて、ファーストタッチも上手くいった」という絶好の手応え。さらに「絶対に食いついて来るなと思った」と右足でボールを軽く左にずらして時間とシュートコースを作ると、左右から進路を阻もうとした相手2人の間を割る左足シュートをゴールのニアサイドにたたき込んだ。

 谷口哲朗総監督によれば、現地入り前から別の負傷も抱えており、直前の調整は不十分。ベストパフォーマンスを発揮するのは難しい状態だったというが、見事な働きぶり。下級生の頃はサイドアタッカーとして活躍していたが、今ではチームの点取り屋。右利きだが、逆足で貴重な2発を生み出した。

 後半16分に交代し、ベンチから声をかけて仲間を鼓舞した。チームは後半21分に1点を返されたが2-1で勝ち切り、後輩たちにプレミアリーグという最高の舞台を用意することができた。高校での最後の目標は、28日に開幕する高校選手権の初優勝だ。チームをけん引する主将として「もうちょっとボールを動かすところにこだわりたい。自分たちのチームの良さ。プレッシャーがあっても、もっと攻撃的なプレーができたと思う」と上積みに意欲を示した。

 岐阜県の出身だが、両親の手厚いサポートを受けて多くの経験を積んで来た。中学時代は、親の送迎で隣県まで通ってフェルボール愛知に所属。中学2年時には、単独でスペインへのサッカー留学も経験した。高校を卒業後は、関西の大学に進学予定。「目標は大学を通してのプロ。将来的には、日本代表を背負えるようになりたい。(中学の頃に)スペインを経験しているので、そういうところ(海外)でもプレーできるようになりたい」と大きな夢を描いている。

 28日に開幕する全国高校選手権は、チームとして歴代最高のベスト4を超えて優勝に挑戦することが目標。チームを勝たせる働きを見せ、日本高校選抜や世代別日本代表などに名を連ねる存在になれば、自身の夢にも近付く。小塚和季(韓国1部水原)や谷内田哲平(京都)らプロで活躍する先輩たちがつけた「帝京長岡の14番」を背負い、堀は道を切り拓くゴールを狙う。

(取材・文 平野貴也)
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平野貴也
Text by 平野貴也

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