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インハイ2位から日本一目指した選手権は県予選敗退。失意の時を乗り越えた注目レフティー、MF松田悠世(桐光学園)が高校選抜で輝く

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桐光学園高MF松田悠世(3年=シュートジュニアユースFC出身)が左足シュートを撃ち込む

[1.22 練習試合 日本高校選抜候補 1-3 東京国際大]

 注目レフティーが、選手権予選の失意を乗り越えてきた。MF松田悠世(3年=シュートジュニアユースFC出身)はインターハイ準優勝校・桐光学園高(神奈川)の10番。昨春のU-17日本高校選抜の活動でも10番を背負い、その後、U-18日本代表も経験した。

 インターハイ決勝ではドリブル突破で幾度も会場を沸かせ、鮮烈な同点ゴールも。だが、日本一には届かず、選手権は神奈川県予選準決勝(対桐蔭学園高、11月4日)で幕を下ろした。松田のドリブルは試合を通じて止まらなかった印象だが、ゴールを決めることができず、チームは1-1からのPK戦で敗戦。松田やMF齋藤俊輔(3年、水戸加入)、インターハイ得点王のFW宮下拓弥(3年)らを擁して日本一を勝ち取る力を有していたが、「国立で勝つ」という夢は選手権全国決勝の2か月以上前に潰えた。

 松田は「ちょっと信じられなかった」敗戦からなかなか立ち直ることができなかったという。元気が出ず、食欲も低下するほど。それでも、鈴木勝大監督の言葉によって前を向くことができたようだ。

「監督ともよく話をして、『これからオマエが大学に行って、大学を経由してプロになりたいんだったら、もっとやんなきゃダメだ』っていう厳しい言葉を頂いたんで、それでやっぱ火ついたというか。そういう監督の一言とかで、自分、この3年間凄い成長できてるんで、大学でも絶対に試合に出ない期間とかをなくしていきたいんで、 本当に穴のない選手になっていきたいなと」

 選手権で勝ち上がっているチームの選手は、全国大会の準備期間、大会期間中まで成長を続けるはず。「こんなことでヘコんでいる場合じゃない」と切り替えた松田は、今回の日本高校選抜選考合宿にも「凄くやってやろうっていう気持ち」で臨んでいる。

 22日に行われた東京国際大との練習試合では関東2位の強豪大学の球際の強さを実感。試合中にも立ち位置や一歩踏み出すタイミングをズラすなど工夫してプレーした。そして、得意のドリブル突破にチャレンジ。相手のマークを外し、2度3度と左足を振り抜いていた。ただし、今回の選考合宿で行われた大学生との練習試合2試合は無得点。アシストもないだけに注目レフティーはその部分にこだわっていく。

「決定的な仕事をした選手だけが残っていける世界だと思うんで、この選考合宿からそうですけど、まだ得点とアシストはないんで。残されたのはもう明日(23日)のU-17との選考試合だけなんで、明日絶対結果を出して、周りから色々刺激受けながら成長していきたい」

 今回の選考合宿では、自身が出られなかった選手権のヒーローたちとのプレーで刺激を受けている。「やっぱ去年(のU-17日本高校選抜)に引き続いてMF長準喜(昌平高3年)とかMF神田拓人(尚志高3年)と、MF太田隼剛(市立船橋高3年)だったり、ボランチの選手が配球の面が凄く上手くて、自分にスパッとボールが入ってくる。『そこ見えてるんだ』っていう驚きもあるし、コンビネーションも凄く合ってるんで、隼剛とかは初めてやるんですけど、凄い息のあったプレーができているので楽しいなと思います」。“高校サッカー部の日本代表”日本高校選抜の一員として活躍することも、この1年間目指してきた。そのメンバーに生き残り、チームを引っ張る意気込みだ。

 桐光学園の1学年先輩で、昨年の日本高校選抜だったMF野頼駿介(現同志社大)から、大学生の選抜チームと戦うデンソーカップチャレンジの難しさなどを聞いてきた。大学トッププレーヤーたちに負けない力を身につけるため、私生活の面から高い意識を持って取り組んできた1年間。得意のドリブルは、この一年で世代屈指と言えるレベルまで進化した。

「(ドリブルで)最後まで行けるというか、どんなにキツい状況でも。そこがまず2023年に一番変わったのかなと思います」。さらにロングスプリントしての攻守が増えたことも自信になっている。

 デンソーカップチャレンジや欧州遠征で一際活躍する可能性を持つ左利きのドリブラー。日本代表のMF堂安律やMF久保建英といったレフティーにも「負けたくない」という思いを持つ松田が、選手権の悔しさも糧に高校選抜で輝く。

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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