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得意のドリブルをボランチで生かすスタイルは唯一無二。昌平MF長準喜が新境地を開拓しながら再確認した「サッカーをしてる!」楽しさ

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ボランチで新境地を開拓している昌平高MF長準喜(3年=FC LAVIDA出身)

[1.22 練習試合 日本高校選抜候補 1-3 東京国際大]

 ここに来て任され始めている持ち場は、今まで以上に自身の力を発揮できるポジションだったし、今まで以上にサッカーの楽しさを感じることのできるポジションだった。新たな自分に出会えている感覚が、そのチャレンジに対するポジティブな意識を後押ししてくれる。

「自分自身もボランチで勝負したいですし、大学でもボランチをやりたい気持ちはあります。そういう意味でもこういう選抜に来れたことは良い経験なので、自分のこれからの成長に繋げられればなと思っています」。

 技巧派が居並ぶ昌平高(埼玉)の中で10番を託されてきたアタッカー。MF長準喜(3年=FC LAVIDA出身)がボランチにトライすることで切り拓きつつある新境地には、自身の未来で鮮やかな花を咲かせるための蕾が数多く散らばっている。


「良い選手がたくさん揃っているので、自分の良さを出し切れたらなと思っていますし、みんなの良いところを学んで、今後の自分の成長に繋げたいという想いが一番なので、この合宿は良い機会だと思います」。20日から行われていた日本高校選抜の選考合宿を、長は楽しみにしてきたという。

 U-17日本高校選抜に続いて2年続けての活動参加。「コミュニケーションの部分で困らないということがアドバンテージですし、そのおかげでサッカーのしやすさがU-17の時より全然変わっているので、今回の方が楽しいですね」とは本人だが、1年前と大きく変わっているのがそのポジションだ。

 長が有する最大の特徴は、適切なタイミングで、適切な位置へと運び出せるドリブル突破。自身でも「自分はボールを取られないで、ラインを前進できたり、チャンスメイクできるドリブルが持ち味だと思っています。一番やりたいのはトップ下ですね」と話していたように、これまでは選抜活動でも昌平でも1トップ下や左サイドハーフが主戦場だった。

 だが、FC LAVIDAに在籍していた中学生時代から長をよく知る昌平の村松明人監督は、昨年の秋口に10番をボランチの位置へ据える決断を下すと、すぐさまそのポジションで持てる力を十全に発揮し始める。

「ボランチはすべての局面に関われるのが楽しいですね。ボールを受けやすいですし、攻撃も守備もできますし、ボランチをやっていることで『サッカーをしてる!』という感じがするので(笑)、最近はボランチの楽しさを味わっています」。そう語る長が今回の選抜合宿で起用されてきたのも、一貫してボランチだ。

「この選抜のボランチは(芝田)玲だったり(太田)隼剛、(神田)拓人と有名な選手ばかりなので、その3人から盗むものはたくさんありますし、学ぶことも多いので、自分にとって良い経験ができていると思っています」。中でもトレーニングマッチでコンビを組むことの多かったMF神田拓人(尚志高3年)からは小さくない刺激を受けたという。

「拓人は守備の回収が本当に速くて、そういった部分で自分も攻撃に関わりやすいですし、拓人と組むと守備面で学ぶことが多くて、彼には感謝する部分が大きいですね。プレミアでは相手にいると本当に嫌でしたけど(笑)、味方にいると頼もしいので、1つ上の代表に入っている理由もわかりました」。まだまだ勉強中のポジションだけに、同い年の“先輩”から学ぶものも決して少なくないようだ。


 昌平史上最高成績に並ぶベスト8まで勝ち上がった高校選手権は、ボランチのポジションで挑んだ長にとっても楽しい経験だった。「最後は悔しい結果では終わりましたけど、(大谷)湊斗とボランチを組めたことも本当に楽しくて、弟(長璃喜)にもゴールで助けられて、(鄭)志錫も(坂本)航大も本当に体を張って頑張ってくれたので、後輩に助けられた大会でしたけど、昌平高校でプレーできて楽しかったですし、全然悔いは残っていなくて、清々しいぐらいでした」。

 敗退を突き付けられた準々決勝の青森山田高戦でも、やはり目が行ったのは相手の同じポジションの“旧友”だった。「もともと同じチームでやっていたので、負けたくない気持ちは強かったですけど、やっぱり玲の方が走れましたし、攻撃に関わる回数が多かったので、『山田の10番だな』って感じましたね。玲の相方の(菅澤)凱も良い選手で、日本一に輝いたボランチの力を体感させてもらったので、これを自分自身が成長する糧にしたいと思います」。FC LAVIDA時代のチームメイトでもあり、今回の活動でも一緒になったMF芝田玲(青森山田高3年)からも貪欲に学ぼうとする姿勢に、ボランチとしての成長に対する強い意欲が滲む。

 語り落とせないのは、今回のU-17日本高校選抜候補にも選出されている弟のMF長璃喜(昌平高1年)の活躍だ。2回戦の米子北高戦、3回戦の大津高戦と1点ビハインドの終盤に同点ゴールを叩き出し、PK戦での勝利に貢献。チームを得点で救う大活躍を見せた。

「プレミアでもそんなにゴールは決めていないですけど、選手権の細田学園戦の時も決めてくれましたし、大事なところで勝負強い選手なので、いてくれて良かったです(笑)。ちょっと複雑な気持ちはありましたけど、あの2試合は弟のおかげで勝てたと言ってもおかしくないので、嬉しい気持ちの方が強いですし、そのおかげで自分も『やってやろう』という気持ちになったので、弟にも感謝したい気持ちが強いですね」。素直に弟への感謝を口にするあたりもこの人らしい。


 高校卒業後は順天堂大へと進学する。今回の選抜では大学生とのトレーニングマッチも経験。「対戦相手が日体大や東京国際大ということで、ここで大学のレベルを経験できることは本当に大きいですし、ある程度の強度に慣れた上で、この経験を順天堂大での活動に繋げたいです」と、視線を4月からの大学生活へと向けている。

 さらに4年間で絶対に成し遂げたい目標についても口にする。「まだ自分は日本一を経験したことがないので、大学では日本一になりたい気持ちが一番強いですし、人生の中で日本一を経験したいので、1年生から試合に関われたらなと思います」。FC LAVIDA時代は全国8強、昌平ではインターハイでベスト4、選手権でベスト8と、頂点を狙い得る位置までは勝ち上がったものの、届かなかった日本一への意欲は人一倍強い。

 切れ味鋭いドリブルで相手の守備網を破壊してきた突破者。その立つ位置がボランチに変わっても、とにかく前へ、前へと突き進んでいく長準喜が持つ唯一無二のスタイルは、その時々で見る者たちを魅了し続けていくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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