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高体連が審判員育成をサポート。今年もユース審判員が高校選抜選考合宿でレフェリング

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研修合宿に参加したユース審判員6人。左から丸山駿太郎君(鹿児島県立加治木工業高2年)、林原晴君(東京都立立川高2年)、田中裕隆君(兵庫県立明石南高2年)、岸本大和君(新潟・中越高2年)、塩谷悠斗君(愛媛県立松山東高1年)、原田脩司君(福島県立清陵情報高2年)

 日本高校選抜候補とU-17日本高校選抜候補が、1月20日から23日まで静岡県内で選考合宿を行い、期間中にそれぞれ大学生と練習試合2試合を実施。この4試合に加え、日本高校選抜候補対U-17日本高校選抜候補戦や、日本高校選抜候補のゲーム形式のトレーニングを高校生のユース審判員による審判団がコントロールした。

 このユース審判員も全国から集った高校生たちだ。全国高体連サッカー専門部から各都道府県に募集が行われ、40名近い応募の中から6名を選出。彼らも4日間の研修合宿を行い、その中で同じ高校生プレーヤーの戦いの笛を吹き、フラッグを上げる機会を得た。この試みは22年にスタートして、今年で3年目だ。

 今回の研修合宿には、昨年のJリーグアウォーズで年間最優秀主審賞を受賞したプロフェッショナルレフェリー、中村太審判員や、1級審判員の俵元希審判員も帯同。ユース審判員は中村氏や教員でもある俵氏、高体連審判部の先生たち、そして同じ志を持つ高校生と考え方を伝え合うなどレベルアップを目指した。

 今回、参加した6名は全て高校のサッカー部に所属。合宿に帯同した東京都高体連審判部の日比健人教諭(東京大学教育学部附属中等教育学校)は、「長い目で見た時にサッカーと係わり続ける手段の一つとして審判があります。ずっと審判として係わり続ける仲間が増えてくれると嬉しい」と説明し、プレーヤーとしてだけでなく、多くの高校生たちが長くサッカーと係わり続けてくれることを期待する。そして、将来、国内外での活躍を目標に掲げるユース審判員たちに「色々なところで頑張ってくれたら嬉しいです」とエールを送った。

 高体連サッカー専門部は高校生プレーヤーの育成だけでなく、ユース審判員育成にも取り組んでいる。この研修合宿で高校選抜候補をレフェリングすることは、各地にいるユース審判員の一つの目標に。過去には研修合宿の経験を活かし、都道府県大会決勝の審判員を務めた人物もいる。それだけに、今回経験したユース審判員たちの成長、また審判員の裾野がより広がることも期待される。

以下、参加したユース審判員6名のコメント(取材順)。
●原田脩司君(福島県立清陵情報高2年)
―まずは、今回の合宿の感想を教えて下さい。
「今回、同じ年代ではありますけど、選手たちはみんな全国大会のピッチに立った選手たちで、自分はまだそういうピッチに立ったことはないんですけれども、全国レベルの緊張感だったり、スピード感の試合で自分が主審を務めることができて、自分のレフェリングのスピードだったり、試合のレベルに合わせたレフェリングっていうのを意識してできたので、とてもいい経験になったと思います」

―今後、どのような目標を持って活動していく?
「今後は、2級、1級になるにつれて、こういったレベルの試合をたくさんやると思うので、まずは目の前の2級に向けてもっとレベルの高い試合をたくさん経験して、将来は国際審判になって、プロフェッショナルレフェリーとして、ワールドカップのピッチで笛を吹けたらなと思います」

―どのようなレフリーになりたい?
「選手たちに好きになってもらえる、選手たちが『この人に審判やってもらいたいな』っていう審判になりたいです」

●林原晴君(東京都立立川高2年)
―今回の合宿の感想を教えて下さい。
「今、終わってみて僕が一番思うのは、ほんとに感謝でしかないなっていうことを感じています。何に対しての感謝かって言うと、まず選手たちが僕たちレフェリーを受け入れてくれたことっていうのには凄く今感謝していて。昨日(22日)とか、大学生と高校生で対戦するっていう時に結構食い違った場面があったんですけども、そこでも僕たちは高校生であるっていうことを知った同年代の選抜の子たちが、『オッケー、オッケー』っていう声を掛けてくれたり、『ナイスジャッジだったね』っていうことをU-17の子とか掛けてくれた場面が多かったので、そこは本当に心の支えになったなっていうのが、今、一番思い返してあるところではありますね」

―今後、どのような目標を持って活動していく?
「僕はワールドカップとか全然考えてなくて、高校の教員になって、またこの高校生の舞台で、高校生が活躍しているサッカーを僕が吹きたいなっていうことを考えています。先生になって、高体連の審判部に入って、また高校サッカーに帰ってきたいなっていうことはずっと考えています」

―どのようなレフェリーになりたい?
「僕、得意なのがもう走ること。というか、もう走ることにしか能がないみたいな感じなので、自分の好きな走ることと、あと人の心を動かせる高校サッカーに立ち返れる、色々な人に感動を与えられるような試合が提供できるレフェリーになりたいな、っていう風に考えています」

●岸本大和君(新潟・中越高2年)
―今回の合宿の感想を教えて下さい。
「雨からのスタートで、 非常にコンディションは悪い中だったんですけど、そのコンディションに合わせて自分の強みを活かしたレフェリングをできたことは良かったかなと思います」

―なぜ応募しようと。
「審判活動を始めて、この活動にも目を向けていて、この活動には絶対に参加したいと思って。同じ高校生年代の子たち、しかもトップの子たちを吹けるっていうのはとても貴重な経験なんで、その経験を活かして、選手の方も頑張りたいっていう気持ちで応募しました。だいぶ刺激になりました」

―今後、どのような目標を持って活動していく?
「今後の目標は、走力は通用していた部分が多かったんで、それを続ける体力、そして周りから見られても綺麗、また強く、逞しくあること。筋力だったり、身長だったり、まだまだ成長していく部分があると思うんで、その自分の課題を一つ一つ丁寧に潰していって、もっと選手のレベルに追いつけるようなレフェリングを目指していきたいと思います」

―どのようなレフェリーになりたい?
「選手からも慕われて、選手とともにいいゲームを作れる。クリーンな、両者がやりたいようなサッカーを、自分が大切にしているプレーを存分に発揮できるように、努力してきたことをしっかりと発揮できるように、サポートできるようなレフェリーになりたいと思います」

●田中裕隆君(兵庫県立明石南高2年)
―今回の合宿の感想を教えて下さい。
「今回の感想は、来れて本当に良かったと思っています。この研修に来る前は、自分の中でどのような審判のレフェリー像とか、そういうのが全くなくて、フワッとした状態で来てしまったんですけど、夜の研修とかで俵さんに審判を続けていくためにどんな心構えが必要かなど、しっかりと学ばせてもらって、今後の審判での活動に活かしていけたらいいなと思っております」

―プロフェッショナルレフェリーの方や審判部の先生方と触れ合うこともできた。特に印象に残った言葉はある?
「一番印象に残ってるのは、やっぱり『レフェリーは何のためにいるのか』で、選手の安全を守ることと、選手が全力でプレーできる、全力で楽しめる、そして、その全力で楽しめる環境を阻害しようとする人を適切な手段を持って対応したり、あるいはレッドカードを出して排除するという言葉を学ばせてもらって非常に良かったと思っています」

―今後、どのような目標を持って活動していく?
「今後の目標は高校のうちに2級に昇格して、早い段階で、できたら大学卒業後か30歳ぐらいまでには1級審判を取れたらと思っております」

―どのようなレフェリーになりたい?
「将来的には選手の安全を確保しつつ、見る人とか、選手が楽しめるような。楽しんでサッカーを見たり、プレーできるような環境を作るレフェリーになりたいです」

●塩谷悠斗君(愛媛県立松山東高1年)
―今回の合宿の感想を教えて下さい。
「まずは、僕と同じような志を持った仲間っていうのが、全国にいるっていうことがまず第一で嬉しかったです。学んだこととしては、特にオフ・ザ・ピッチのところで、他の審判員の方はもう周りへの配慮とかっていうのがしっかりできていて、そこは僕と決定的な違いがあったので、それはこれからの生活とかでしっかり克服していくことが大切だと思いました。ピッチ内のことでは、やっぱり僕が今まで積んできた身体能力を補う予測や、 あと頭使って次どうなるかっていうのをしっかり考えてっていうところが、しっかり強みとして活かせたというところは凄い収穫になったと思います。逆に課題はマネジメントのところで、選手の気持ちにどう寄り添うかっていうのはもっともっとやっていくべきだなという風に思いました」

―なぜ応募しようと?
「一番は、僕がやってきたことがどれだけそのレベルの高いところで通用するかっていうのと、あとはやっぱり成長の機会っていうのが、もうどんどん欲しくて、向上心みたいなもので応募しました」

―今後、どのような目標を持って活動していく?
「まずは高校在学中に2級に昇級するということと、地元の小学生とかちっちゃい子からも認知されて、『格好良い』って言われるような審判員になって、サッカー選手だけじゃなくて、レフェリーもしっかり理解が得られるような、そういう審判員になっていきたいと思います」


●丸山駿太郎君(鹿児島県立加治木工業高2年)
―今回の合宿の感想を教えて下さい。
「合宿の感想としては、選手たちの強度っていうのは物凄く高くて、僕らがいつも経験しているゲームとはほんとに比べ物にならないぐらいレベルの高いゲームでした。だからこそ、僕らレフェリーっていうのは、しっかりと準備する必要があるなっていう風に凄く感じました」

―同じ志を持った高校生たちと一緒に活動した。
「地元に帰ると、この年代でレフェリーをしてる人間ってのは凄く少ない。本当に5本指が余るような人数しかいないので、同年内のメンバーと4日間過ごせたっていうのは自分の中で、凄く大きい経験でした」

―今後、どのような目標を持って活動していく?
「今後の目標としては、まずは上の級を目指すっていうのも大事ですけど、最終的な目標としては、この全国から選ばれたプレーヤーと、同じピッチに立つっていうのが、ほんとに僕の中でも一番大きな目標です」

―どのようなレフェリーになりたい?
「目指していくレフェリー像としては、なるべく目立たない。選手が100パーセントピッチの中で目立って、レフェリーは『あっ、いたんだ』ぐらいの、目立たない、 何か困った時だけ助けてくれるような、そんなレフェリーになりたいなと思っています。(今回合宿に参加し、)本当素晴らしいプレーヤーがいて、色々見に来ている方がいて、やっぱりその人たちは選手を見に来たいと思って見に来ている。だから、選手が100パーセント目立って欲しいなって思っています」

(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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