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[MOM4644]FC東京U-18MF菅原悠太(1年)_悪魔の左足、覚醒間近。勝負の1年に挑む異才が2ゴール1アシストと西が丘で躍動!

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2ゴール1アシストで勝利に貢献したFC東京U-18MF菅原悠太(1年=FC東京U-15むさし出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[2.23 東京都CY U-17選手権3位決定戦 町田ユース 3-5 FC東京U-18 味の素フィールド西が丘]

 小柄な体に宿している非凡な才能は、どう見ても明らかだ。一度ゾーンに突入し、それこそ狂気すら感じるような“悪魔の左足”を振るうと、かなりの高確率で相手は頭を抱えるようなシチュエーションに陥れられてしまうのだから。

「自分では少し言いにくいですけど、よく言われるのは『サッカーセンスがある』ということなので、やっぱりそこを武器にしていきたいですし、左足のキックの精度ももっと磨いていきたいと思います」。

 西が丘のピッチで2ゴール1アシストと躍動を見せた、FC東京U-18が誇る左利きの異才。MF菅原悠太(1年=FC東京U-15むさし)は未来を懸けた勝負の1年へと、真摯に立ち向かっていく。


 新チームとして初めて臨む公式戦。東京都クラブユースサッカーU-17選手権大会の決勝リーグ。ファイナル進出を巡って三菱養和SCユースと対峙した一戦は、1-3で敗戦。フル出場を果たした菅原もチャンスを生かし切れず、悔しい結果を突き付けられる。

「養和に負けてからは悔しい気持ちを持って、結構良い練習ができましたし、個人としても養和戦で何もできなかったことが悔しかったので、今週はサイドの練習でも右サイドバックの(金子)俊輔と連携を高めてきました」。前の試合では同じ右サイドでなかなか呼吸が合わなかったDF金子俊輔(2年)ともスムーズな連携を打ち出すことに注力しつつ、充実したトレーニングを重ねていく。

 3位決定戦で激突するのはFC町田ゼルビアユース。この日も右サイドハーフに入った菅原は「自分としてはちょっと入りが悪くて、どう立て直そうかを考えた上で、『前半はいったんシンプルに行こうかな』と思いました」と自身の出来を踏まえて、まずは全体のバランスを崩さないことを意識する。

 その左足が輝いたのは、1-1で迎えた前半43分だった。左サイドで手にしたFK。スポットに立った33番は中央を確認すると、丁寧なボールを左足で蹴り入れる。「去年からセットプレーは蹴っていましたし、あの形は得意な位置だったので、『キーパーに取られたかな』と思ったんですけど、うまく曲がってくれましたね」。MF浅田琉偉(2年)が身体で押し込み、チームは勝ち越し点となる2点目をゲット。まずは菅原にアシストが記録される。


 後半3分。驚愕の一撃が炸裂する。中央で相手のパスミスを奪った菅原は、一瞬だけゴール方向を見ると、「射程距離だと思ったので、思い切り振り抜きました」と左足一閃。完璧な軌道を描いたボールは、一直線にゴールネットへと突き刺さる。

「ビックリしたというよりは、蹴った瞬間に『入ったかな』と思ったので嬉しかったです。実はハーフタイムにロッカーで(大越)友太波が『ミドルを打てば入るんじゃない?』と言っていたことが頭に残っていて、それで狙いました」。チームメイトの“アドバイス”も追い風に生まれたスーペルゴラッソ。スタンドもしばらくどよめきが収まらない。

 後半12分。攻守の献身性が成果に結びつく。相手のビルドアップを見極めた菅原は、「(浅田)琉偉がプレスを掛けてくれて、『こっちしかないな』と思ってバッと寄せたら相手がコントロールをミスしたので」素早くボールを奪い取ると、そのままGKとの1対1も確実に制し、鮮やかにゴールネットを揺らしてみせる。

「なんかゴールが大きく見えましたね。『入るな』と感じました」という冷静なフィニッシュ。終わってみれば5-3という打ち合いの中で、2ゴール1アシストと数字もきっちり残した1年生レフティの躍動が、チームの勝利を力強く手繰り寄せた。


 今季から指揮官に就任した佐藤由紀彦監督の存在も、菅原にはポジティブに映っているという。「去年と比べたらボールを蹴らずに、クリアを少なくして繋ぐようになったことで、攻撃の回数が増えた印象はあります。“繋ぎたい派”の僕にはやりやすさもありますし、由紀彦さんは熱い人なので、ダメなところはダメだと指摘してくれますし、良いところは褒めてくれたりするところもありがたいです」。

 また、佐藤監督は昨年までトップチームを指導していたこともあり、指摘される基準もハッキリと自分の中に響いてくる。「由紀彦さんは去年もずっとトップチームでやられていた人なので、言われたことを吸収できればトップに行った時にやるべきことを身に着けた状態で行けますし、そこも良いところだと思います」。その上で目標とする“先輩”がいることも、大きなプラス材料だ。

「今年は龍ちゃん(佐藤龍之介)を目標にしていて、去年は高2であれだけ活躍していましたし、自分は今年が高2の年なので、あの人を超えられるぐらいの活躍をして、トップに絡んでいきたいと思います」。既に昨年のうちにトップチームとプロ契約を結んだMF佐藤龍之介が進んでいる道を、自分も同じように辿っていけば、望んだ未来へと近付いていくことも十分すぎるほどに理解している。

 その視線は前だけを見据えている。2024年はこれからのキャリアを逞しく切り拓いていくための勝負の年。真摯に、一途に、全力で。圧倒的なポテンシャルを秘めた菅原悠太の左足が誇る真価は、きっとまだまだこんなものではない。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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