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「ロス五輪への推薦状」第12回:ボール奪取力、強さ、高さ、攻撃参加…魅力いっぱいの1年生DF咲本大(近大附)は開花目前

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スケールの大きな1年生、近大附高DF咲本大がブレイクを狙う

 2028年ロサンゼルス五輪まであと4年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ

 選手権、インターハイ含め、計14度の全国大会出場を誇る近大附高。激戦区・大阪の中でも存在感を示すチームで今年、注目を集めるのがDF咲本大(1年)だ。

 183cmのサイズ以上に目を惹くのは「初見殺し。相手の伸びない所まで足が伸びる」と自認するボール奪取の上手さ。相手との駆け引きでドリブルコースを誘導し、ボールから身体が離れた瞬間に奪い取る。「細いけどフィジカルには自信がある」と続ける通り、見た目からは想像が付かないほど対人も強い。

 大阪狭山SCに所属した中学時代は大阪府のトレセンにも選ばれていた実力者。高校へと進学する際は他校からも熱心に誘われたが、2歳上の兄・樹がいたことで「良い話を色々聞いていたし、最初に声をかけてくれたので近大附に決めた」という。

 高校では入学直後から能力を認められ、Aチームに定着。「河村慶人(現東京V)らがプレーした出世ポジション」(寺師悠斗監督)であるウイングバックを勤めて実戦経験を積んでいく。夏以降は本職であるCBに戻ったが、慣れないポジションを務めた経験は大きい。「攻撃では高い位置まで攻め上がって、守備では自陣まで戻らなければいけない。ウイングバックを経験してプレーの活動量が増えた」と評するのは寺師監督だ。

 昨年の選手権予選ではチームに欠かせない戦力となっていたが、東海大大阪仰星高と対戦した予選の準決勝は体調不良で欠場。チームは0-1で敗れ、自身初となる全国大会出場の夢は果たせなかった。2週間後に自身が出場したプリンスリーグ関西1部でのリベンジマッチでは勝利したため、“自分が出ていれば”という想いは募る。「みんなより悔しさは強いと思う。今年は全国大会に行きたいというより、行かなアカンと思っている」。

 2年目を迎える今年は「負ける気がしない」と胸を張るように守備に磨きをかけるだけでなく、攻撃面で新たな進化を遂げつつある。寺師監督がイメージするのは近江高が昨年度の選手権で準優勝を果たす原動力となったDF金山耀太(関西学院大に進学予定)だ。3バックの位置から積極的にドリブルを仕掛ける“本家”同様、今年に入ってからの咲本はDFラインから積極的に攻撃参加を繰り返す。

「咲本には自由を与えている」と話すのは寺師監督。ドリブルで持ち上がる場面があったかと思えば、フリーランで前方を追い越し、アタッキングサードに顔を出していく。「課題は攻撃参加とクロスの質。前に出て行くけど、シュートで終われない」と本人は口にするが、元々攻撃好きだったため、今のプレースタイルを楽しんでいる。

 攻撃の質と後方の選手が必要なリーダーシップが高まれば、更に高いステージを狙える選手であることは確か。本職であるCBだけでなく、近年大型化が進んでいるSBとしての起用も面白いかもしれない。「将来はプロになりたい。これまで府トレ止まりだけど、代表入りも狙っていきたい。狙える感覚もある」。そう意気込む大器の開花はそう遠くないだろう。

(取材・文 森田将義)
森田将義
Text by 森田将義

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