相手をリスペクトした真っ向勝負で静岡学園に3発快勝!神戸U-18が描く頂点へのロードマップに加わる個性豊かな色彩の可能性
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)]
相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。
「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。
真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2節で、ともに今季初勝利を目指す静岡学園高(静岡)とヴィッセル神戸U-18 (兵庫)が激突した一戦は、前半18分にDF山田海斗(3年)のヘディングで先制した神戸U-18が、後半にもMF瀬口大翔(2年)とFW吉岡嵐(3年)が追加点を挙げて、3-0で快勝。アウェイで勝ち点3を手にしている。
「どれだけ自分たちの土俵に早く持っていくかは、今週の練習で取り組んだところでしたね」。神戸U-18を率いる安部雄大監督がそう話すのには理由がある。開幕戦の大津高(熊本)戦はロングボールが増えてしまい、なかなか本来のペースに乗れないまま引き分けていた。その反省を経て、改めてしっかりとボールを動かしていくスタイルを選手たちと共有する。
序盤から山田とDF茨木陸(3年)のセンターバックコンビに、アンカーのMF岩本悠庵(3年)やMF藤本陸玖(2年)を中心とした丁寧なビルドアップで、神戸U-18がリズムを創出すると、先制点はセットプレーから。前半18分。右サイドから岩本が蹴り入れたCKに、山田が合わせたヘディングはゴールネットへ滑り込む。「あそこは悠庵に自主練の時から蹴ってもらっているところなので、メチャメチャ嬉しかったですね」と笑ったディフェンスリーダーの一撃。アウェイチームが1点のアドバンテージを奪う。
「立ち上がりが悪くて、相手にかなりボールを持たれて、自分たちのイージーミスも多くてという感じでした」とキャプテンマークを巻くDF岩田琉唯(3年)も振り返った静岡学園は、それでも21分に決定機。MF天野太陽(3年)のパスから左サイドを抜け出したMF池田双葉(3年)がマイナスへ絶妙の折り返し。走り込んだFW大木悠羽(3年)のシュートは枠を捉えるも、ここは神戸U-18のGK亀田大河(2年)がビッグセーブ。33分にもDF土田拓(3年)の左クロスに、ファーでMF鵜澤浬(3年)が打ったシュートも亀田がセーブ。前半は1-0のまま、ハーフタイムへ折り返す。
「『我々がもっと圧倒できるように、1点で終わるのではなくて、2点目、3点目を獲りに行こうぜ』とハーフタイムに言いました」(安部監督)。ギアを上げるための交代カードが、その役割を結果で示す。後半10分の神戸U-18は、右サイドで前を向いたMF濱崎健斗(2年)が鋭い仕掛けからカットインシュート。DFに当たったこぼれ球を、後半開始から投入された瀬口がきっちりゴールへプッシュ。2-0。点差が開く。
勢いは止まらない。15分。今度はゴール前で岩本、FW大西湊太(2年)とボールを繋ぎ、ここも濱崎が果敢にフィニッシュ。静岡学園のGK有竹拓海(2年)も好セーブで弾き出したものの、ここに詰めていたのは前節も2ゴールをマークした吉岡。「練習の時から『こぼれは絶対に行く』というのは自分の中で決めていた」という新エースの2戦連発弾。3-0。リードが広がる。
小さくないビハインドを背負った静岡学園は「失点して、焦りが出て、縦パスをどんどん前に出して、ミスして、そこからまた守備が始まるというところがあったと思います」と有竹も振り返ったように、なかなか持ち味を発揮しきれず手詰まりに。後半途中から最終ラインに岩田、DF関戸海凪(3年)、DF今田桜雅(3年)を並べた3バックに移行し、10番を背負うMF山縣優翔(2年)の配球や途中出場のFW加藤佑基(3年)のドリブルからチャンスを窺うも、決定的なシーンは生み出せない。
「相手も後ろをちょっと削って前に人数を掛けてきたので、少しそこの噛み合わせが悪い時間もあったんですけど、基本的にはスペースを自分たちが作る、見つけるということをテーマにやっているので、そういう意味ではトランジションも含めて最後まで良い戦い方ができたのかなと思っています」(安部監督)。攻守に躍動した神戸U-18は盤石の完封勝利。駆け付けたサポーターと歓喜を分かち合う結果となった。
神戸U-18はドローに終わった開幕節と同じ展開をなぞったこのゲームで、確かな成長の跡を実感していたようだ。山田は1週間前とのチームの違いを、こう口にする。「前節は良い入りができて先制したんですけど、そこでちょっと引いてしまって前半が終わって、後半に追加点が獲れて2-0になった時にも、もっと攻めたかったのに全体的に守りに入ってしまったんですよね。今日も2-0になったんですけど、そこで監督からも『次の点を獲りに行くぞ』と言われて、チームとして3点目を奪えたのは良かったと思います」。
それでも快勝を収めた選手たちに、満足する様子は見られない。2点に絡みながらも自身の得点はないまま、終盤に交代を命じられた濱崎は、明らかに心残りがあるような表情を浮かべて、ベンチへと下がってきた。
「3-0で勝っていて、フルで出られるかなと思ったんですけど、監督に交代と言われて、『点、決めれんかったな……』って。そこは決められた事なので、もちろんチームのことを考えれば『そこはしゃあないかな』とは思いつつ、ゴールを決めたかったですね」(濱崎)。
もちろん安部監督も10番の悔しさは理解していた。ただ、そのベクトルがしっかりと自身に向けられていることもまた十分に察している。チームの勝利を最優先に考えながら、自分の結果にも小さくないこだわりが強い選手たちを、熟練の指揮官は絶妙の手綱さばきでポジティブなエネルギーを発するグループにまとめている。
本来は左サイドでプレーすることが多かったが、チーム事情で開幕からセンターフォワードを任された途端に2試合で3得点をマーク。WESTの得点ランキングトップに立つ吉岡からも、自信にあふれた言葉が飛び出してくる。
「開幕から2点決めたり、今回も1点決めたりと結果を残せていて、徐々に周りからストライカーだと思われ始めているんじゃないかなって。ここからは数字は決めずに、毎試合1点以上は決めたいなと思っています。もう得点王を狙いに行くので、自分の中でもこの調子が止まらないように、頑張っていきたいと思います」。
広がりつつあるチームの総和を実感している安部監督は、「キャラクターの違う選手が今は離脱しているので、そういう選手たちが帰ってきた時に、またバリエーションや厚みが出せるチームになっていったらいいなと思っています」とも話している。
2試合目でもぎ取った今季の初勝利は、あくまでも通過点。2年連続でプレミアWESTの優勝争いを繰り広げながら、ともに2位で涙を呑んだ若きクリムゾンレッドの俊英たちが描く頂点へのロードマップには、まだまだ個性豊かな色彩が加わっていきそうだ。
(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2024特集
相手が素晴らしいチームなのはわかっている。間違いなく攻撃的に来るであろうことも、容易に想像が付く。だからこそ、自分たちも引くつもりなんて毛頭ない。アグレッシブに打ち合って、その上で勝ち切ってやる。クリムゾンレッドの若武者たちは、勇敢な決意をハッキリと携えていたのだ。
「本当にこのリーグは難しいリーグなので、正直勝ててホッとしています。それも『こういうサッカーをしようよ』ということを、自分たちがある程度しっかり出した上で結果も付いてきたので、そこが凄く喜ばしいかなと思っています」(神戸U-18・安部雄大監督)。
真っ向からぶつかって3発を叩き込み、2試合目で掴んだ初白星。14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第2節で、ともに今季初勝利を目指す静岡学園高(静岡)とヴィッセル神戸U-18 (兵庫)が激突した一戦は、前半18分にDF山田海斗(3年)のヘディングで先制した神戸U-18が、後半にもMF瀬口大翔(2年)とFW吉岡嵐(3年)が追加点を挙げて、3-0で快勝。アウェイで勝ち点3を手にしている。
「どれだけ自分たちの土俵に早く持っていくかは、今週の練習で取り組んだところでしたね」。神戸U-18を率いる安部雄大監督がそう話すのには理由がある。開幕戦の大津高(熊本)戦はロングボールが増えてしまい、なかなか本来のペースに乗れないまま引き分けていた。その反省を経て、改めてしっかりとボールを動かしていくスタイルを選手たちと共有する。
序盤から山田とDF茨木陸(3年)のセンターバックコンビに、アンカーのMF岩本悠庵(3年)やMF藤本陸玖(2年)を中心とした丁寧なビルドアップで、神戸U-18がリズムを創出すると、先制点はセットプレーから。前半18分。右サイドから岩本が蹴り入れたCKに、山田が合わせたヘディングはゴールネットへ滑り込む。「あそこは悠庵に自主練の時から蹴ってもらっているところなので、メチャメチャ嬉しかったですね」と笑ったディフェンスリーダーの一撃。アウェイチームが1点のアドバンテージを奪う。
「立ち上がりが悪くて、相手にかなりボールを持たれて、自分たちのイージーミスも多くてという感じでした」とキャプテンマークを巻くDF岩田琉唯(3年)も振り返った静岡学園は、それでも21分に決定機。MF天野太陽(3年)のパスから左サイドを抜け出したMF池田双葉(3年)がマイナスへ絶妙の折り返し。走り込んだFW大木悠羽(3年)のシュートは枠を捉えるも、ここは神戸U-18のGK亀田大河(2年)がビッグセーブ。33分にもDF土田拓(3年)の左クロスに、ファーでMF鵜澤浬(3年)が打ったシュートも亀田がセーブ。前半は1-0のまま、ハーフタイムへ折り返す。
「『我々がもっと圧倒できるように、1点で終わるのではなくて、2点目、3点目を獲りに行こうぜ』とハーフタイムに言いました」(安部監督)。ギアを上げるための交代カードが、その役割を結果で示す。後半10分の神戸U-18は、右サイドで前を向いたMF濱崎健斗(2年)が鋭い仕掛けからカットインシュート。DFに当たったこぼれ球を、後半開始から投入された瀬口がきっちりゴールへプッシュ。2-0。点差が開く。
勢いは止まらない。15分。今度はゴール前で岩本、FW大西湊太(2年)とボールを繋ぎ、ここも濱崎が果敢にフィニッシュ。静岡学園のGK有竹拓海(2年)も好セーブで弾き出したものの、ここに詰めていたのは前節も2ゴールをマークした吉岡。「練習の時から『こぼれは絶対に行く』というのは自分の中で決めていた」という新エースの2戦連発弾。3-0。リードが広がる。
小さくないビハインドを背負った静岡学園は「失点して、焦りが出て、縦パスをどんどん前に出して、ミスして、そこからまた守備が始まるというところがあったと思います」と有竹も振り返ったように、なかなか持ち味を発揮しきれず手詰まりに。後半途中から最終ラインに岩田、DF関戸海凪(3年)、DF今田桜雅(3年)を並べた3バックに移行し、10番を背負うMF山縣優翔(2年)の配球や途中出場のFW加藤佑基(3年)のドリブルからチャンスを窺うも、決定的なシーンは生み出せない。
「相手も後ろをちょっと削って前に人数を掛けてきたので、少しそこの噛み合わせが悪い時間もあったんですけど、基本的にはスペースを自分たちが作る、見つけるということをテーマにやっているので、そういう意味ではトランジションも含めて最後まで良い戦い方ができたのかなと思っています」(安部監督)。攻守に躍動した神戸U-18は盤石の完封勝利。駆け付けたサポーターと歓喜を分かち合う結果となった。
神戸U-18はドローに終わった開幕節と同じ展開をなぞったこのゲームで、確かな成長の跡を実感していたようだ。山田は1週間前とのチームの違いを、こう口にする。「前節は良い入りができて先制したんですけど、そこでちょっと引いてしまって前半が終わって、後半に追加点が獲れて2-0になった時にも、もっと攻めたかったのに全体的に守りに入ってしまったんですよね。今日も2-0になったんですけど、そこで監督からも『次の点を獲りに行くぞ』と言われて、チームとして3点目を奪えたのは良かったと思います」。
それでも快勝を収めた選手たちに、満足する様子は見られない。2点に絡みながらも自身の得点はないまま、終盤に交代を命じられた濱崎は、明らかに心残りがあるような表情を浮かべて、ベンチへと下がってきた。
「3-0で勝っていて、フルで出られるかなと思ったんですけど、監督に交代と言われて、『点、決めれんかったな……』って。そこは決められた事なので、もちろんチームのことを考えれば『そこはしゃあないかな』とは思いつつ、ゴールを決めたかったですね」(濱崎)。
もちろん安部監督も10番の悔しさは理解していた。ただ、そのベクトルがしっかりと自身に向けられていることもまた十分に察している。チームの勝利を最優先に考えながら、自分の結果にも小さくないこだわりが強い選手たちを、熟練の指揮官は絶妙の手綱さばきでポジティブなエネルギーを発するグループにまとめている。
本来は左サイドでプレーすることが多かったが、チーム事情で開幕からセンターフォワードを任された途端に2試合で3得点をマーク。WESTの得点ランキングトップに立つ吉岡からも、自信にあふれた言葉が飛び出してくる。
「開幕から2点決めたり、今回も1点決めたりと結果を残せていて、徐々に周りからストライカーだと思われ始めているんじゃないかなって。ここからは数字は決めずに、毎試合1点以上は決めたいなと思っています。もう得点王を狙いに行くので、自分の中でもこの調子が止まらないように、頑張っていきたいと思います」。
広がりつつあるチームの総和を実感している安部監督は、「キャラクターの違う選手が今は離脱しているので、そういう選手たちが帰ってきた時に、またバリエーションや厚みが出せるチームになっていったらいいなと思っています」とも話している。
2試合目でもぎ取った今季の初勝利は、あくまでも通過点。2年連続でプレミアWESTの優勝争いを繰り広げながら、ともに2位で涙を呑んだ若きクリムゾンレッドの俊英たちが描く頂点へのロードマップには、まだまだ個性豊かな色彩が加わっていきそうだ。
(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2024特集