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[選手権]手負いのエースが流れ変える、鵬翔・中濱「宮崎に来てよかった」

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[1.19 全国高校選手権決勝 鵬翔2-2(PK5-3)京都橘 国立]

 降雪のため決勝が順延された“効果”だったかもしれない。県大会決勝で左膝半月板を損傷し、昨年12月7日に手術を受けた鵬翔(宮崎)のFW中濱健太(3年)。これまでの5試合はいずれも後半20分以降の投入だったエースが、この日は0-1で折り返した後半開始からピッチに立った。

「ケガの方はかなり回復していた。心配はスタミナ面。延長も頭に入れて、ちょっと長いかなと思ったが、相手の背後を突くには彼のスピードが必要だと思って後半開始から入れた」。中濱投入のタイミングをそう説明した松崎博美監督。ハーフタイムのロッカールームで出番を告げられた中濱は、不安以上に「うれしかった」とピッチに出た。

「延長、PK戦になる前に自分が決めてやろうと思っていた。ペース配分を考えずにやろうと思った」。後半開始から俊足を生かして全力で駆けた。後半4分には左サイドから仕掛け、CKを獲得。このプレーで同点ゴールが生まれ、流れを引き寄せた。

 MF矢野大樹主将(3年)も「スピードがあるし、裏に走ればほとんど勝ってくれる。苦しくなったら裏に蹴れば、(中濱)健太が走ってくれるというのがあった」と、その効果を口にする。エンジン全開で飛ばした結果、終盤は疲労の色も見えたが、それでも延長戦20分を含めた65分間、走り抜いた。

 松崎監督からは「エースが出るだけでチームは変わるんだ」と言われ、コンディションが万全でない中、全6試合で起用された。チームメイトからも「健太、頼んだぞ」と毎回声をかけられた。「自分は何もできないのに、頼ってくれて、仲間に励まされてやってこれた。自分がやらなきゃと思ったし、ここまで来たらやるしかないと思った」。恩師と仲間のために気持ちで走り切った。

 奈良出身の中濱が鵬翔への進学を決めたのは、練習参加したときに偶然、居合わせた同校OBであるFW興梠慎三(浦和)の言葉だった。「たまたま自分が行ったときに興梠さんがいて。『鵬翔、いいよ』と言われて決めた」。興梠が鵬翔時代に付けたエースナンバーの13番を背負い、臨んだ最後の選手権。ゴールこそ挙げられなかったが、中濱の存在がなければ初優勝もなかった。「宮崎に来てよかった」。屈託のない笑みを見せた“手負い”のエースは「一からリハビリのやり直しです。しっかり戻していきたい」と話していた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012

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