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「あれから天皇杯の話はしたくないくらい…」甲府ACL出場の“陰の立役者”FW宮崎純真が悔しさ晴らす劇的弾

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FW宮崎純真(写真右)が劇的同点ゴール

[11.29 ACLグループH第5節 甲府 3-3 メルボルン・C]

 2-3で迎えた後半40分、ヴァンフォーレ甲府を敗戦の危機から救ったのは、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に特別な思いを抱いていた23歳だった。右サイドを駆け上がったFWクリスティアーノのクロスに対し、同27分に投入されていたFW宮崎純真はニアサイドで反応。懸命に相手のマークをかいくぐって頭で合わせたボールは肩をかすめた後、ゴールマウスに転がり込んだ。

 身長は173cmと大柄ではないが、駆け引きで相手に優った。「一個前のタイミングでクリスから要求したけど、タイミングが合わなくて、ちょっと相手に触られそうだったので身体を当てればヘディングできると思った。ファウルにならないくらいを攻めて、うまく当てられたのがよかった」。ゴールが決まった瞬間、15877人が集まった国立は大歓声に包まれた。

 昨年の天皇杯優勝でACL出場権を獲得した甲府だが、宮崎はサンフレッチェ広島との決勝戦を前にしたトレーニングで右足関節外果骨折の重傷を負い、華のファイナルを負傷欠場。準決勝の鹿島戦では殊勲の決勝ゴールを記録しており、結果的にはACLに導いた“陰の立役者”となったが、ショッキングなアクシデントで活躍の場を失った過去があった。

「久しぶりの点だったし、去年の天皇杯で自分たちで勝ち取ったACLだった。決勝は怪我で出られなくて、ACLには特別な思いがあって、点を取りたかったので取れてよかった」。この日のゴールをそう振り返った宮崎は「あれから天皇杯の話はしたくないくらい悔しい怪我だったので、今日はちょっと晴らせたかなと思う」と笑顔を見せた。

 また国立でのゴールも格別な思いだった。甲府は本拠地とするJITリサイクルインクスタジアムはACL規定を満たしていないため、今大会は国立競技場をホームとして使用。東京都出身の宮崎は知人も多く観戦に訪れており、「いつものホームとは違う特別な力が出てくる感じ」でプレーしていたという。

 クラブは国立でのACLに注目を集めるべく、他クラブのサポーターも歓迎するキャンペーンを実施しており、その応援も力になっていたようだ。

「初戦の国立(ブリーラム戦)で勝って、手を振っているときにいろんなサポーターの人たちがいて、本当に素直に感動して、すごいなと思った。批判的な声もあるかもしれないけど、自分はそれですごく感動したし、ありがたく思った」(宮崎)。その中で掴んだACL初ゴール。「自分たちは勝たなきゃいけない試合という印象だったので悔しい気持ちのほうが強い」とドローの結果には満足しなかったが、「国立で点を決めてみたかった」と憧れの地で喜びを口にした。

(取材・文 竹内達也)
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竹内達也
Text by 竹内達也

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