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“ドロップボール”判定にC大阪が猛抗議…現役審判員もSNSで説明「VARは笛の音は聞こえません」:J1第10節VARまとめ

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再開方法が争点となったセレッソ大阪対浦和レッズ戦

 J1リーグは16〜18日、第10節の10試合を行った。今季から再導入されているビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)をめぐっては、1節あたり過去最多となる5度のレビューを実施。セレッソ大阪浦和レッズ戦では1試合で2回の介入があり、介入後の再開方法をめぐっては大きな混乱も生まれた。

<第1節 3回>
<第2節 2回>
<第3節 3回>
<第4節 なし>
<第5節 4回>
<第6節 1回>
<第7節 4回>
<第8節 2回>
<第9節 3回>
<事例1>4月16日 J1第10節 札幌 1-3 横浜FM @札幌ド(ゴールに関する判定)
 横浜F・マリノスは2-1でリードして迎えた後半アディショナルタイム5分、敵陣左サイドで北海道コンサドーレ札幌のDFキム・ミンテを抜いたDFティーラトンがゴール前にクロスを送り込み、これにFWエウベルが反応。ヘディングシュートを叩き込んだ。

 ところが、ここでVARが介入。ティーラトンがキム・ミンテを抜いた際、跳ね上がったボールがティーラトンの左腕に当たっていたことが争点となった。競技規則では「偶発的であっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に得点の機会を作り出す」ケースは無条件にハンドというルール。そのため、オンフィールドレビューの末にゴールが取り消された。

 なお、今夏に予定されている競技規則の改正ではハンドの項目が大幅に変更。上記の条文は削除されることになっており、新ルールではゴールが認められる可能性が高そうだ。(ティーラトンが意図的にボールを腕で扱ったか、腕によって不自然に体を大きく見せたと判断された場合はハンドとなる)

主審:谷本涼
VAR:笠原寛貴
AVAR:清水勇人

<事例2>4月17日 J1第10節 横浜FC 2-2 仙台 @ニッパツ(ゴールに関する判定)
 ベガルタ仙台は1-2のビハインドで迎えた後半アディショナルタイム1分、FWマルティノスの左コーナーキックをDF平岡康裕がニアでそらし、FW西村拓真がシュート。これは横浜FCのGK南雄太にセーブされたが、ファーでこぼれ球に詰めていたDF吉野恭平が押し込んだ。直後、副審は吉野にオフサイドがあったとしてフラッグアップを行った。

 しかし、ここでVARが介入。約1分半にわたってビデオ・オペレーション・ルームでのチェックが行われた結果、吉野のポジションはオンサイドだったことが確認され、VARオンリーレビューでゴールが認められた。

担当副審:武部陽介
VAR:松尾一
AVAR:唐紙学志

<事例3>4月18日 J1第10節 川崎F 1-1 広島 @等々力(ゴールに関する判定)
 川崎フロンターレは1-0で迎えた後半10分、左サイドを駆け上がったDF登里享平がゴール前にパスを送ると、ニアサイドのFWレアンドロ・ダミアンが反応しながらもボールには触れられず。だが、ファーに飛び込んでいたMF三笘薫がこのボールに合わせ、ゴールに押し込んだ。

 ここでVARが介入。争点となったのはニアサイドで先に反応したL・ダミアンがオフサイドにあたるかどうか。オフサイドの反則には、オフサイドポジションにいた選手がボールをプレーした場合だけでなく、「自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える」場合も該当するためだ。(詳しくはこちらの記事を参照)

 笠原寛貴主審はオンフィールドレビューを実施。オフサイドをめぐってはVARオンリーレビューで反則かどうかをチェックするのが一般的だが、「影響を与えたか」どうかは主審の裁量の余地があるためだ。その結果、L・ダミアンがボールに向けて足を動かし、サンフレッチェ広島のGK大迫敬介らに影響を与えていたことが確認され、オフサイドでゴールは取り消しとなった。

主審:笠原寛貴
担当副審:数原武志
VAR:松尾一
AVAR:唐紙学志

<事例4>4月18日 J1第10節 C大阪 1-0 浦和 @ヤンマー(ゴールに関する判定)
 0-0で迎えた後半7分、浦和レッズFW武藤雄樹がドリブルでエリア内に侵入すると、これを阻止しようとしたセレッソ大阪DF丸橋祐介の振り上げた左腕にボールが当たった。それでも西村雄一主審はファウルを取らず、C大阪のカウンターがスタート。約1分後、タッチラインにプレーが切れたタイミングでVARのチェックが入った。

 ピッチ上でVARと交信した後、西村主審はオンフィールドレビューを実施。約40秒間にわたってノーマルスピードとスロースピードでハンドの有無を確認したが、ハンドはなかったとしてC大阪ボールのスローインでプレーが再開された。ハンドの要件である「競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある」という状況だったが、「競技者が意図的にボールをプレーしたのち、ボールがその競技者の手や腕に触れた場合を除く」という例外条項にあたると判断されたようだ。

主審:西村雄一
VAR:福島孝一郎
AVAR:岡野宇広

<事例5>4月18日 J1第10節 C大阪 1-0 浦和 @ヤンマー(ゴールに関する判定)
 0-0で迎えた後半13分、C大阪はMF藤田直之のロングスローのこぼれ球からDF松田陸がミドルシュート。このボールが浦和のMF小泉佳穂の左腕に当たってゴールの枠を大きく外れると、西村雄一主審はハンドの反則を取り、C大阪ボールのペナルティアーク内からのFKを指示した。

 だが、ここでVARが介入。FKにおけるハンドの有無には介入することができないため、ハンドが起きた位置のペナルティエリア内外(=PKかどうか)が争点になったとみられる。VARからの助言を受けた西村主審はオンフィールドレビューを実施。すると、そもそも小泉の行為がハンドには当たらなかったという判定で決着した。

 しかし、ここからさらなる複雑な問題に発展した。

 まずピッチ内で物議を呼んだのはプレーの再開方法だ。当初、小泉に当たったボールはゴールラインを割っていたため、C大阪の選手たちはコーナーキックからの再開ではないかと主張した。だが、西村主審は浦和ボールのドロップボールでの再開を指示。インプレー中にVARの介入が行われた場合は、最後に触れたチームのドロップボールでの再開が適切であるから…という判断だろう。

 一方、C大阪にとってはチャンスを不必要な介入によって阻まれた形となり、不満が噴出した。VAR制度にはこうした不公平を防ぐため、『オフサイドディレイ』と呼ばれる運用でも参照される「明らかに攻撃のチャンスがあり、競技者が得点しようとしている、また、競技者が明らかに相手競技者のペナルティーエリアの中へ走り込む、あるいはエリアに向かって走っている場合に限り、反則と思われる事象に対して旗または笛を遅らせることができる」という条文が設けられている。だが、この場面では条文の要件に該当しないためか、この運用は行われていなかった。

 もっとも、DAZNの中継映像であらためて当該シーンを確認すると、さらに新たな問題も浮かび上がる。西村主審によるハンドを告げるホイッスルの音は、ボールがゴールラインを越えてから鳴っており、VARの介入が行われた時点ではすでにアウトオブプレーになっていた可能性が高いのである。この場合、再開方法はドロップボールではなく、C大阪ボールでのコーナーキックが適切となる。

 しかし、VARでは音声を用いた再確認を行うことができないため、再開方法の判定は困難だったようだ。Twitterでは、この試合の担当ではなかった家本政明主審(@referee_iemoto)が「VARは審判団の声は聞こえる(わかる)のですが、選手の声や笛の音は聞こえません」、八木あかね副審(@otokodetsuraiyo)が「VARは現場の審判団の無線を通じた音声だけを聞きながら映像をチェックしています。そして、無線機は笛の音の周波数を拾わない仕組みになっています」と説明。ファン・サポーターに運用法についての理解を求めた。

 なお、もし仮にドロップボールでの再開が適切だったとしても、今回の再開方法は不適切だったと言える。競技規則ではボールがペナルティーエリア内にある状況下でプレーが停止された場合、「ボールはペナルティーエリア内で守備側チームのゴールキーパーにドロップされる」という条文があるためだ。

 西村主審は今回、浦和のMF伊藤敦樹にボールをドロップしていた。伊藤が大きく蹴り出してC大阪にボールを返したため、不公平は生まれなかったが、これはルールと異なる運用だと言える。

 DAZNの判定検証番組「Jリーグジャッジリプレイ」でも取り上げられ、出演者が頭を悩ませていたこのケース。①ディレイをすべきかどうか、②ホイッスルが鳴らされた時点でアウトオブプレーだったかどうか(再開法はドロップボールか、コーナーキックか)、③ドロップボールの場合は誰が対象となるか—という3点において、VAR導入試合特有の判断が求められる複雑な事例だったと言える。

主審:西村雄一
VAR:福島孝一郎
AVAR:岡野宇広

 なお、14日に前倒し開催されていた第18・19節の4試合では、VARレビューは一度もなかった。

■2021年VAR統計(第10節まで)
レビューで判定が修正された回数:22
レビューしたが原判定が支持された回数:5

オンフィールドレビュー:18
VARオンリーレビュー:9

①得点に関わる事象
ゴールが認められた回数:3
ゴールが取り消された回数:10

オフサイド(ゴール/ノーゴール):3/5
ハンド(ゴール/ノーゴール):0/3
その他ファウル(ゴール/ノーゴール):0/2
ラインアウト(ゴール/ノーゴール):0/1

②PKに関する事象
PKが与えられた回数:3(成功3、失敗0)
PKが取り消された回数:1
PKが蹴り直しとなった回数:0

エリア内外(PK/取り消し):1/1
ハンド(PK/取り消し):1/0
その他ファウル(PK/取り消し):1/0

③レッドカードに関する事象
カードなし→レッドカード:2
イエローカード→レッドカード:0
レッドカード→イエローカード:0
カードなし→イエローカード:1
レッドカード→カードなし:0

④人違いに関する事象
人違いでカードの対象が変わった回数:0

(文 竹内達也)
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