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[J-VILLAGE CUP U18]履正社は「奪いに行く」サッカーで健闘。163cmのGK湯地駿介が大会MIPに

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履正社高の163cmGK湯地駿介は好守で大会MIPに

[3.21 J-VILLAGE CUP U18決勝 U-17日本高校選抜 2-0 履正社高 Jヴィレッジスタジアム]

 今年プレミアリーグWESTに参戦する大阪の強豪・履正社高は、予選3試合全て無失点。U-17日本高校選抜との決勝では、これまでの4-4-2から3-4-3システムに変えて才能たちに挑戦した。相手の191cmFW小林俊瑛(大津高2年)の高さで押し込まれないようにハイラインを保ち、前からのディフェンスを徹底。奪い返しからの仕掛けでCK、FK、スローインを獲得し、長身DF平井佑亮(2年)のヘッドなどでゴールを目指した。

 平野直樹監督は「今年のウチのテーマは『奪う』。勝利を奪いに行くために、ボールを奪う、自由を奪う、判断力を奪う、ということでやっていかないと。プレミアのチーム相手に好きなことをやらせて俺たちが受けるなんてことは絶対にうまく行かないから、俺たちから奪いに行く」。この試合は「奪いに行く」ことでU-17高校選抜を苦しめ、互角に渡り合った。

 そのハイラインサッカーを後方で支えたのが、GK湯地駿介(2年=SC大阪エルマーノ出身)だ。声を切らさず、フィールドプレーヤーにコーチング。プレーが切れると細かな修正を求めたり、勇気づける声がけをする姿が印象的だった。

 身長は163cmでGKとしてはかなり小柄。セットプレーでは敵味方の中で隠れてしまうほどだが、「身長以外の部分はメンタル面でも、技術面でも、そこはしっかり誰よりも負けない自信がありますし、絶対にやらないといけないと思っている」と語る湯地は、怯まずハイボールに飛び出してパンチングやキャッチングを続けていた。

 狙われることは覚悟の上。それでも、「ハイボールに関して小さいから出れないのではなくて、小さいからこそ頭を使って、味方を動かして予測だったりオフ、準備の部分をもっとしっかりすることを意識して、ある程度は全然出れます」。味方のサポートも受けながら“小さいからこそ”のプレーを見せていた。

 特徴の守備範囲の広さを発揮し、前半には相手MFとの1対1をビッグセーブ。だが、「僕はビッグセーブはあまり好きじゃなくて、(ビッグセーブをするようなシーンを)させていることが問題だと思います。させないようにしていかないといけない」と厳しい。チームには素材感のあるGKジョンカミィ信バー(2年)らライバルがいるが、湯地は決勝での好守や富山一高、関東一高、横浜FCユース戦の3連続完封勝利でその安定感やコーチング力を証明した。

 そして、大会MIPを受賞。副賞として腕時計を贈呈された。小学4年生でGKを始めてから、身長について不安視されることも多かったというが、湯地は負けずに活躍を続け、今年はプレミアリーグWESTに参戦する強豪・履正社の守護神争いをリードしている。

「身長デカイ選手には負けたくないですし、僕が活躍することによって日本の小さいGKが『僕もGKやりたい』となって欲しい。この大会で自分の中でできることと課題がしっかり明確になったのかなと思います」と語るGKが、リーグ戦、トーナメント戦で「奪う」履正社のゴールを守り抜き、小さなGKに勇気を与える。


(取材・文 吉田太郎)

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