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反省点共有し、技術、創造性、そしてハードワークで壁突破!07年度全国3位の津工が15年ぶり選手権へあと1勝!:三重

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津工高が決勝進出。チームを引っ張ったFW庄司壮晴主将と守護神・田中蒼真が喜び合う。

[11.3 選手権三重県予選準決勝 海星高 0-1 津工高 四日市市中央緑地陸上競技場]

 三重の技巧派軍団が全国王手――。3日、第101回全国高校サッカー選手権三重県予選準決勝が行われ、海星高津工高が激突。津工が1-0で勝ち、6年ぶりの決勝進出を果たした。津工は6日の決勝で宇治山田商高と対戦。勝てば、全国3位に入った07年度以来、15年ぶりの選手権出場となる。

 昨年、一昨年の反省を踏まえて、立ち上がりからゆっくり、ゆっくりと繋いで攻める“津工らしい”サッカーを貫徹。4強の壁を突破した。津工は一昨年、昨年といずれも準決勝で敗退。一昨年は攻め続けながらも終了間際のカウンターに沈み、力のあった昨年は慣れないスタジアムの有観客試合で緊張してしまい、自分たちの力を表現できないまま敗れている。

 片野典和監督は反省点を選手たちと共有。その上で「(力強い海星相手に)今日も蹴りあったら負けるぞと。ダブルボランチと2シャドーのところにボールを入れに行って、止めろと」グラウンダー勝負を求めた。

 津工は指揮官の言葉通りに後方から丁寧に繋ぎ、中盤中央の4人にボールを入れる形で攻撃。ドリブル、ショートパスを中心の組み立て、群馬FW北川柊斗を兄に持つ左WB北川漣(3年)と右WB 原田暖大(3年)の両WBが高い位置でプレーするなど相手を押し込んだ。時にロングパスも活用し、相手の背後を強襲。8分には縦パスで抜け出した増山が決定機を迎え、14分にも北川漣の左クロスにファーの原田が飛び込むなどチャンスを作り出した。

 対する海星は自陣で守備をする時間が続いたが、飲水タイム前後からプレスのスピード、強度が向上。奪い返したボールを繋いで押し返す。そして、この日存在感を放っていたMF長太楼偉(3年)の仕掛けや、左SB一見季斗(2年)のロングスローでゴール前のシーンを創出。28分にはMF金澤颯真(2年)がミドルレンジから蹴り込んだボールがゴールを捉え、36分にも金澤のロングクロスにFW市川琉晴(3年)が決定的な形で飛び込む。

 前半はワンツーでの崩しや北川漣らの個人技、奪い返しの速さも光った津工のペース。だが、後半立ち上がりは海星が主導権を握る。開始直後に市川が右から抜け出して右足を振り抜く。GKと1対1の決定機だったが、津工GK田中蒼真(3年)がビッグセーブ。その後も攻める海星はCKで“トルメンタ”にチャレンジし、また名古屋U-18から加入したFW佐藤尚生(3年)や長太が迫力のある動きを見せた。

 津工は後半、海星に鋭く寄せられるシーンが続き、攻め切る前にボールを失ってしまっていた。だが、攻守両面での豊富な運動量とテクニックを見せるMF山副朱生(3年)が、相手の注目10番MF清水葉功(2年)を徹底マーク。また、3バックの中央に構えるDF佐藤優成(3年)が素晴らしいカバーリングでH&AFC時代のチームメート、海星FW佐藤を封じるなど崩れることなく試合を進める。

 そして26分、津工は中盤右サイドでボールを奪い返すと、この日バランサーとして利いていたMF藤井瞭(2年)が横パス。これを受けた山副が相手DFライン背後へ左足でループパスを入れる。そして、PA右へ抜け出した増山が角度の無い位置から右足シュート。ボールはファーサイドのゴールネットを揺らし、増山の4戦連発となるゴールで津工がリードを奪った。

 これで精神的に余裕のできた津工は、再びゆっくりとボールを繋ぎながら時間を進める。終盤の苦しい時間帯では、「運動量だったりチームが盛り上がるプレーはいつもしたいと思っている。点も獲りたいですけれども、まずは勝つこと。誰よりも走って……今日はそれができたと思います」という10番FW庄司壮晴主将(3年)がロングスプリントを連発。主将に引っ張られる形で全員がハードワークを続ける。そのまま1点を守り切り、4試合連続無失点勝利。全国大会出場へあと1勝とした。

 県立の津工は、現在アドバイザーとしてベンチ入りしている藤田一豊氏が監督を務めて全国3位へ導いた時代から変わらず、「基本に忠実で、創造性に溢れたサッカー」を目指してきた。その技巧に憧れた地元中学生が集結。土のグラウンドと週2日の人工芝ピッチで、小さなグリッドでのパス回し、ゴール前でのアイディアなどを磨いてきた。

 片野監督が「良い練習して、良い試合をして流れに乗ってくるのが今年の子たちの特長やと思っています。賢くて、(大事な試合に)合わせて来るが上手い」という選手たちは、夏以降調子を落としていたものの、選手権へ向けて再び状態を上げてきた。

 雰囲気が良く、一体感もある戦いで決勝進出。庄司は選手権出場を懸けた大一番でも自分たちの特長を発揮することを誓う。「(三重で一番上手い) 自信があります。まずはみんなが頑張るところを見てもらって、その上でアイディアや面白さを出せる試合にしたい。(選手権は)入った時から目標にしていたので、あとは優勝するだけです」。みんなでハードワークしながら自分たちの技術、創造性を存分に表現し、選手権切符を掴む。

(取材・文 吉田太郎)
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