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指揮官「交代を告げたら、むくれた(笑)」…予選から6戦連発の履正社MF小田村優希、マネージャー経験で強まった感謝の気持ち

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履正社高MF小田村優希(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 全国高校選手権2回戦 盛岡商高 0-6 履正社高 味フィ西]

 乗りに乗っている。大阪府予選では初戦から決勝まで4戦連発。そして、全国に舞台を移しても開幕2戦連発と、予選から6試合連続ゴールを記録する履正社高(大阪)MF小田村優希(3年)は「ホンマにありがとうございます!という感じです」と周囲への感謝を示した。

 前半をスコアレスで折り返しながらも、後半2分にDF西坂斗和(3年)のゴールで先制。さらにリードを広げていくと、平野直樹監督は小田村をベンチへと下げようとしていた。「3点入ったとき、疲労も考えて交代させようかと話した」という。しかし、小田村の答えは「決めさせてください」だった。指揮官は「『交代するぞ』と言ったら、むくれた顔をしたので(笑)、じゃあ最後まで行って点を取ってこい」とピッチ上に残した。

 その期待にしっかり応えるところが、この男のすごいところだ。リードを4点差に広げて迎えた後半37分、左サイドでボールを受けたFW古田和之介(3年)がドリブルで運び、中央へと折り返す。走り込んだ小田村が左足で合わせてネットを揺らし、予選初戦から6試合連続ゴールを記録した。

「ホンマに古田が頑張ってくれて自分のところに届けてくれた。途中で交代すると言われて、ホンマにやめてくれと泣きそうになったけど、平野先生も協力してくれた。皆に感謝です。ありがとうございます!という感じで、頭が上がりません」

 感謝の気持ちが強くなったのは、1年前の夏。「自己中だった」という小田村は、平野監督から「練習の準備をしたり、後片付けをやってみろ。他の人の思いや、周りへの感謝の気持ちをしっかり学べ」と言われ、マネージャーの仕事を約1か月こなしたという。

「ビブスを洗濯したり、ボールを並べたり、グラウンド周りの草を刈ったりしていた」。これまでとは異なる立場になることで、見えてきたものがある。「コーチが練習メニューを考えることが当たり前のように見えていたけど、難しいことだし、僕たちのためにいろいろと準備をしてくれていた。支えてくれる人たちもたくさんいて、チームが一番という気持ちが強くなったし、感謝の気持ちを覚えた」という。

 指揮官も「感謝の気持ちをしっかり学べないなら、今年もマネージャーだったかもしれないので、人よりもこうした方がいいと学べたのかもしれない」と成長を感じているようだ。そして、今はゴールという結果で、周囲への恩返しをしている。大阪府予選の4戦連発で「自信をつけた」男は、「予選含めて全試合で決めることが自分の目標」と今後もチームを勝利へと結び付けるゴールを貪欲に狙っていく。

(取材・文 折戸岳彦)
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