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[選手権]2度の出場を誇る高知西の流れを汲む新設校が躍進! 創部3年目で高知国際が初の決勝進出:高知

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[11.3 選手権高知県予選準決勝 高知中央高 0-2 高知国際高 春野総合運動公園球技場]

 歴史はどのチームよりも浅いかもしれない。しかし、積み上げてきた経験値は県内で最もある。創部3年目を迎えた新設校の実力は本物だ。

 11月3日、高校サッカー選手権の高知県予選準決勝が行われ、高知国際高高知中央高を2-0で下して11日の決勝行きの切符を手にした。

 試合は序盤からアクシデントに見舞われる。開始1分にチームのキーマンである右サイドハーフのMF笹岡大起(3年)が負傷。そのまま交代を余儀なくされると、その後は高知中央にボールを支配される展開となった。しかし、焦れずに戦い、最終ラインからボールを繋ぐ相手に対して強度の高いプレスで応戦。2トップが高い位置からプレッシャーを掛け、中盤の4人が連動して高い位置でボールを奪いにいく。攻守が入れ替わると、素早く攻撃に移行して鋭いショートカウンターで相手を脅かした。

 前半18分にはゴールから40mほど離れた場所でFKを獲得。CB岡林智也(3年)がゴール前に左足でボールを入れると、これがDFの間をすり抜けてネットを揺らした。

 思わぬ形で先制点を奪うと、前半27分には得意の形で2点目をもぎ取る。FW西岡航汰(3年)がペナルティエリアの手前で相手CBからボールを奪うと、ボランチのMF森祐介(3年)がゴール前にラストパス。最後はFW林錬太郎(3年)がGKとの1対1を制し、さらにリードを広げた。

 以降も相手にボールを持たれたが、強度の高い守備で流れを離さない。ペースを掴むと、攻撃ではショートカウンターだけに頼らず、ロングボールも織り交ぜながら好機を作る。岡林の正確な左足のフィードも冴え、相手に的を絞らせない仕掛けで3点目を目指した。

 後半は半ば頃から運動量が落ち、相手に押し込まれるシーンが散見。相手の1トップ・FW近藤丈瑠(3年)にボールが入る場面が増えただけではなく、途中出場のFW三井虎翔(3年)に何度も右サイドを打開されてしまう。同27分にはその三井に右サイドから中央に運ばれ、左足で強烈なシュートを打ち込まれた。3分後にはMF池辺至音(3年)のスルーパスからキャプテンのMF松尾泰幸(3年)に抜け出され、決定的な場面を作られる。しかし、GK山本康平(2年)が好セーブを見せ、相手に得点を許さない。最後までリードを守り切った高知国際が初の決勝進出を決めた。

「県内で1年生からレギュラーでこんなに試合に出続けているのは君たちだけ」

 試合前にこんな言葉を選手たちに投げ掛けた山中丈典監督は子供たちの頑張りに目を細めたが、ここに来るまでには色んなことがあった。

 高知国際は高知西高と高知南高(ともに最上級生が卒業する2022年度まで存続)が統合され、2021年に産声を上げた新設校。だが、選手権2度の出場を誇る高知西の流れを汲んでおり、「寺尾(拓)先生が指導してくれることを知っていたので、自分も行きたいと思った」と森が話すように、県内トップクラスの選手が初年度からこぞって入学。昨年度まで活動していた高知西と同じの校舎を利用しているメリットを最大限に活かし、初年度からの2年間は高知西の寺尾監督と高知国際の柴田恭孝監督(現・コーチ)のタッグでチーム強化を進めてきた。

 大会には高知西と別チームで参加していたため、初年度の選手権とインターハイは高知国際として単独出場。翌年は高知南との合同チームでの参戦ながらインターハイ予選でベスト8、選手権予選はベスト4に進出するなど、イレギュラーなシュチュエーションをうまく活かしながら経験を積んできた。

 そして、ようやく今年度に3学年揃ったのだが、昨年度いっぱいで高知西と高知国際で指導にあたってきた寺尾氏が転任。高知西も最後の卒業生を送り出して廃校となり、“高知国際高校サッカー部”として本当の意味でスタートを切った。

 バトンを受け継いだ山中新監督は2年間で積み上げてきたモノを大切にしながら、「(西高から受け継いだ攻撃的なサッカーに)加えて、より守備から戦うことを落とし込んだ」。すると、攻守のバランスが良くなり、夏のインターハイ予選では初めて決勝に進出。県リーグ1部でも上位争いを展開するなど、瞬く間に県のトップを狙える位置まで辿り着いた。

 今予選も順当に勝ち上がり、悲願の全国舞台まであと1勝。夏のインターハイで果たせなかった優勝を果たせるか。新興勢力の挑戦はまだ始まったばかりだ。

(取材・文 松尾祐希)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
松尾祐希
Text by 松尾祐希

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