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[選手権]撃ち合い上等! 取られても取り返す! ラスト2分からの逆転劇で徳島科学技術が初の決勝進出:徳島

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[11.4 選手権徳島県予選準決勝 鳴門高 2-3 徳島科学技術高 徳島市民球技場メイン]
 
 失点しても関係ない。取られたら取り返すだけ。“撃ち合い上等”の精神で自分たちのスタイルにこだわり、鮮やかな逆転劇を完遂させた。

 4日、徳島県の高校サッカー選手権予選準決勝が行われ、徳島科学技術高鳴門高を3-2で下して初の決勝進出を決めた。

「取られたら取り返すしかない」(川越英司監督)

 最初から最後まで攻めの姿勢を貫いた。徳島科学技術はいきなり開始6分に出鼻を挫かれてしまう。鳴門のCB矢部翔太(2年)に先制点を許し、早々に追い掛ける展開になった。しかし、選手たちは全く動じずに攻撃を展開。4-3-3の布陣を敷くチームはボールを中盤で動かすと、左ウイングのFW森生成(3年)と右ウイングFW藤井太志(3年)が果敢に仕掛けていく。最初は相手のブロックに阻まれていたが、徐々にクロスに持ち込んでゴール前のFW扶川魁一(3年)に入るシーンが増えた。幾つかあったピンチをなんとか凌いで攻撃を続けると、前半25分に追い付く。MF河野尚輝(3年)のラストパスから右SB赤尾凌空(3年)がミドルシュートを突き刺した。

 勢いに乗ったチームの攻撃はさらに活性化。流れを掴んで前半を折り返したのだが、またしても立ち上がりに失点を喫する。後半4分に自陣でCB松下大河(3年)が主将のGK山口真広(3年)にボールを下げたが、大きく逸れてしまう。鳴門のFW吉井寛太(3年)にルーズボールを拾われ、無人のゴールへ蹴り込まれて再びリードを許した。

 下を向いてもおかしくない状況だったが、「今年の子たちは良くも悪くも気にしない」(川越監督)。すぐに気持ちを切り替えて再び攻勢を仕掛ける。後半20分を過ぎたあたりからはサイド攻撃がハマり、中央で組み立てて外からクロスを入れるパターンが機能。特に効果的だったのはGKとDFの間に入れる速いクロスで、タイミングさえ合えばというシーンが何度も生まれた。

 刻一刻と時計の針が進み、残された時間はどんどん減っていく。何度もゴール前に迫ったが、肝心のゴールが奪えない。しかし、選手たちは焦らず、粘り強くボールを入れ続けてチャンスを待った。

 すると、後半38分だ。左サイドでボールを受けた森が切り返して右足でインスイングのボールを入れると、ニアに走り込んだ扶川がヘディングでゴールを狙う。GKとDFの間で合わせた一撃が見事に決まり、土壇場で試合を振り出しに戻した。

 こうなれば、流れは徳島科学技術。選手たちは80分で決着を付けるべく、どんどんゴール前に入っていく。そして、迎えた後半アディショナルタイム2分。失点に絡んだCBが大仕事をやってのける。左サイドに流れたボールを拾った扶川がゴール前に入れると、セットプレーの流れでそのままゴール前に残っていた松下が頭で合わせてネットを揺らした。

 僅か2分で完遂させた逆転劇。最後までリードを守り切った徳島科学技術にとって、選手権予選では初の決勝進出となる。昨夏に行われた地元・徳島のインターハイに第2代表として初めて全国大会に出場したが、冬の大舞台は未知の世界。そうした状況下でも怯むことなく戦って快進撃を続けているが、ただ勢いだけで勝ち上がってきたわけではない。

 徳島北高出身で高知大でインカレなどに出場した渡辺陸斗氏が今年からコーチに就任。主に戦術面を担当し、川越監督と二人三脚でチームを強化してきた。選手たちのキャラクターもより生きるようになり、攻撃の幅が広がった。フィジカル面でも川越監督の伝手で昔から徳島ヴォルティスの選手たちが通う接骨院にお世話になっており、準決勝の前も午前中に数名の選手を連れて来院。そこでケアをしてもらい、万全の状況を作ってコンディションを整えた。

 心・技・体。全てが揃ったことで初の決勝進出を手繰り寄せた。

「なんか抜けているところもあるけど、みんな気持ちが強い」とは扶川の言葉。逆境に晒されても跳ね返す力があったからこそ、大一番で今年一度も勝てていなかった鳴門にリベンジを果たせた。だが、ここで終わりではない。勢いに乗るダークホースは夏の県王者・徳島市立を倒し、学校の歴史に新たな1ページを書き記すつもりだ。

(取材・文 松尾祐希)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
松尾祐希
Text by 松尾祐希

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