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[MOM4504]徳島科学技術FW扶川魁一(3年)_大迫勇也に憧れるストライカーが躍動! 1G1Aの大活躍でチームを初の決勝に導く

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FW扶川魁一

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.4 選手権徳島県予選準決勝 鳴門高 2-3 徳島科学技術高 徳島市民球技場メイン]

 一度乗ったら止められない。次から次に選手が仕掛け、何度跳ね返されても臆さずにトライを続ける。その姿からは心の底からサッカーを楽しんでいる様子が見て取れる。選手のキャラクターも立っており、とにかく明るくてノリが良い。そんなチームにおいて、ピッチ内外で異質な存在がストライカーのFW扶川魁一(3年)だ。

 懐の深いボールキープでタメを作り、イケイケのチームに時間を与える。振る舞いも落ち着きを放っており、自分の考えを整理して言語化する能力も高い。前のめりな選手が多いチームにおいて、貴重な人材だ。

 そんな男が大一番でヒーローになった。0-1から追い付いて反撃ムードが高まったが、チームは後半開始早々に失点。再び同点を目指したが、なかなか相手の牙城を崩せずにいた。それでも残り20分を切ってからのラッシュは凄まじく、サイドから次々にクロスを供給。触れば“1点”というシュチュエーションを何度も作り出した。その中で迎えた後半36分。左サイドからFW森生成(3年)がニアサイドにボールを送り込むと、DFとGKの間で扶川がタイミングよく合わせる。右のポストに当たり、ボールはゴールへ吸い込まれた。土壇場で試合を振り出しに戻すと、直後の同40分に再び躍動する。左サイドに流れてボールを受け、ゴール前に折り返す。ゴール前で待ち構えていたCB松下大河(3年)にピタリと届け、今度は逆転弾をお膳立てした。

「みんな諦めないで走って点をとってくれた。自分だけのゴールやアシストではなく、みんなのモノです」

 ヒーローとなったが、謙虚な姿勢は崩さずに控えめに喜びを噛み締めた。

 そんなストライカーが尊敬するのは、ヴィッセル神戸でプレーする元日本代表のFW大迫勇也だ。ポストプレーの動きを参考にしており、自分の体格やレベルに合わせながら取り入れている。特に役立っているのが、手の使い方。とある時に、ABCテレビのトーク番組「これ余談なんですけど…」に出演した元日本代表の槙野智章氏が大迫の動きについて言及した回を見たという。

「相手の膝を押さえて動きを止める動作の話をしていたんです」

 だが、いざやってみると簡単には真似できない。そこで扶川は考え、自分の技術やレベルを踏まえた上で使い方を工夫したという。

「自分なりの収め方を探したんです。大迫選手は多分両手でやっているのかもしれないけど、自分は足元の技術があまりない。相手からなるべく離れた位置にボールを置きたいので、片手で抑えるようにしました」

 すると、見事にハマり、ボールの収まりが今まで以上に良くなった。ただ、真似をするのではない。柔軟性を持って技を取り込む。決して身体能力はサイズに恵まれた方ではないが、そうしたスタンスを持ち続けて技を磨いてきた。

 卒業後は就職が決まっており、本気でサッカーに打ち込めるのはこの冬が最後。創意工夫を凝らしながら上達を図ってきたが、グラウンドで仲間とボールを蹴れる日々はあまり残されていない。悔いなくサッカーから巣立つべく、決勝の舞台でもチームのために全力を出す。

(取材・文 松尾祐希)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
松尾祐希
Text by 松尾祐希

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