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「公立の伝統を消したらいけない」。夏撃破の昌平に0-2で敗れるも、浦和南が夏冬連続で埼玉準V

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公立の伝統校・浦和南高が夏冬連続で埼玉2位

[11.14 選手権埼玉県予選決勝 昌平高 2-0 浦和南高 埼玉]

 1975、1976年度に選手権連覇。全国優勝3回の特別な歴史を持つ伝統校が、5年ぶりの選手権出場へあと一歩まで迫った。

 浦和南高は今年、新人戦、関東大会予選で地区予選敗退。だが、インターハイ予選は、準決勝で前年度全国3位の昌平高を破って決勝進出、準優勝という結果を残している。この選手権予選でも私学勢3校を破って決勝へ駒を進めた。

 昌平との再戦となったこの決勝でも、いずれも大会優秀選手に選出されたGK金悠聖(3年)やCB齋藤旺徳(3年)、アンカーのMF牛田晴人(3年)らが堅守を構築。年代別日本代表や高校選抜選手を複数擁する相手に良く食い下がった。守備網に入ってきたボールを一つ一つ確実にクリア。最後の局面で身体を張るなど簡単には決定打を打たせなかった。

 逆にロングボールから前線で強さを発揮するFW石川慶(3年)や鋭い仕掛けを見せた10番MF伊田朋樹(3年)が攻め返し、FKなどからゴールを脅かすシーンも作り出していた。

 前半26分の失点は、DFがシュートを懸命にブロックにいったことによるややアンラッキーなもの。想定内の1点差で前半を折り返し、後半9分の“切り札”MF日高大祐(2年)投入から攻撃のギアを上げた。そして、日高のドリブル突破やMF濱口陽央(3年)がクロスなどで反撃。だが、この日は相手に警戒され、なかなか強みのセットプレーを獲得することができなかった。

「向こうのディフェンスが素晴らしかった。『あれっ?』て言わせようと思ったんですけれども、1枚も2枚も上手ですよね。それは認めないといけない」と野崎正治監督。それでも、各選手がシンプルに、やるべきことを最後まで徹底した。

 後半32分に0-2とされたものの、その後ロングスローからチャンス。オフサイドで得点とはならなかったものの、石川の粘りからFW掛谷羽空(2年)がゴールネットを揺らして赤のスタンドが沸くシーンもあった。0-2で敗れ、名門復活の期待に応えることはできなかったが、堂々の準優勝だ。

 浦和南は先発メンバーの半数が地元の中体連出身選手。その選手たちが努力で戦う力をつけ、全国屈指のタレント軍団と渡り合った。野崎監督は「褒めてやりたい。私のポリシーで『良く頑張ったとか、全然褒め言葉じゃないんだよ』と厳しく言っているんで。でも、ここまで来れてそんな点差も離れなかったし、本当に褒めてあげたいですね。手前味噌になるけれど嬉しいですよ。この舞台まで連れて来てくれた。(今後も)公立の伝統を消したらいけないし、何とか食らいついていきたい」と語った。

 かつて、浦和南や浦和市立高(現市立浦和高)などの公立勢が引っ張った埼玉県の高校サッカーだが、今年を含めた最近10年で公立校の選手権出場は2018年度の浦和南だけだ。昌平をはじめ、西武台高、正智深谷高、武南高などの私学勢に苦戦していることは確か。だが、浦和南は今年、2度のファイナルへ進出したように、日常から負けない努力と上位進出を続けて壁を破る。

(取材・文 吉田太郎)

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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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