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「中学時代はバチバチだった」地元選手で成し遂げた全国初勝利&静学撃破…最後は青森山田に0-7完敗も広島国際学院DF茂田颯平主将「自分たちらしく負けたなと」

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広島国際学院高のDF茂田颯平主将(3年=KELT東広島FCジュニアユース)

[1.2 選手権3回戦 青森山田 7-0 広島国際学院 浦和駒場]

 初出場にして国立競技場での開幕戦を制し、2回戦では名門・静岡学園高にジャイアントキリングを演じたが、ベスト16で青森山田高に完敗——。短くも濃い冬を終えた広島国際学院高の選手たちは試合後、思い出を刻み込むようにロッカールームで最後のミーティングを終え、全員が揃って取材エリアに姿を見せた。

 それぞれの目には涙の跡が見られたが、一様に明るい笑顔で盛り上がりながら帰路へ。主将のDF茂田颯平(3年=KELT東広島FCジュニアユース)は「たぶんこの全国に出た中でも一番チームの仲がいい。このチームの仲の良さがあったから、楽しいことも苦しいことも全部乗り越えてこられたんだと思う」とチームの一体感を誇らしそうに語った。

 選手たちの前所属にはKELT東広島FCジュニアユース、広島ピジョンFC、ブリロ東広島FCジュニアユースといった地元の街クラブが多く並び、大半の選手が以前からの知り合い。中学時代は互いにライバル関係にあったが、同じ高校に集った仲間として団結力を高め、濃密な3年間を戦ってきた。

「中学の時は結構バチバチで、まさかチームメートになるとは思わなくて、でもそれから仲良くなれてよかったです(笑)」。そう振り返る茂田主将は当初、全国常連高への進学を目指していたが、人工芝ピッチなどで施設整備が進む同高からの誘いで入学を決断。KELT東広島FCのチームメートだけでなく、他の中学から集まってきた見知った選手たちを見て、「このメンツなら行けるだろう」という予感があったという。

 現在の3年生は1年時からルーキーリーグで好成績を残してきた期待の世代で、今季は夏のインターハイでも全国大会に初出場。初戦で帝京五高に敗れ、初白星こそならなかったが歴史を作った。それ以降、冬の全国初出場は単なる悲願ではなく、成し遂げるべきミッションとなり、その先の“全国1勝”という目標も現実的に見えてきた。

 そうしてたどり着いた今大会には、“ダークホース”という自覚を持ってやってきた。国立競技場での開幕戦では地元東京の早稲田実高を2-0で撃破。試合後、谷崎元樹監督は「彼らはヒールという役割が好きなので、『ギャフンと言わせてやろう』と送り出しました」と振り返っていたが、粘り強い堅守やロングスロー戦術もそうしたキャラクター設定に一役買っていた。

 さらに2回戦の静岡学園戦ではより一層、そうした構図が鮮明となった。高い技術に裏打ちされたパスワークで攻めるテクニカル集団に対し、5-4-1をベースとした徹底的な守備ブロックで応戦。スピードを活かしたカウンターから先制点を奪い、1-1からのPK戦で突破を果たした。

 試合後、指揮官は「守る楽しさじゃないけど、新しい楽しさを彼ら自身が見つけて行ってそれに一生懸命取り組むことができたんじゃないかなと思う」と前向きな守備に手応えを述べていたが、先制点を挙げたMF石川撞真(3年=広島ピジョンFC)も「練習もオラァ!って感じじゃなくて、気負わず自分たちのペースで楽しくやってきた。それが良かったんじゃないかと思う」と飄々と語っていたのが印象的だった。

 また主将の茂田は静岡学園のエースFW神田奏真(3年/川崎F内定)をノーゴールに完封。“ヒール”的な立場として「J内定の選手とやるのは初めてだったし、すごく楽しみにしていた。とにかく映像を見まくってどうやって抑えるかをイメージしていた」といい、そのとおりのパフォーマンスに自信を深めていた。

 ところが3回戦では、過去7大会で3度の日本一を誇る常勝軍団に衝撃的な完敗となった。「もっと自分たちが悪役というか、ゴリゴリとパワフルな感じで行きたかったけど、逆にパワフルな感じで行かれてしまった」と茂田。前半はなんとか0-1で持ちこたえていたが、後半に6失点を喫し、0-7という大差をつけられた。

「本当に日本一のレベルに達するチームだなと。自分たちも『勝ちに行くぞ』という雰囲気で入っていたけど、山田さんはそれを跳ね返してくるくらいのパワーがあった。試合に入った時に雰囲気で呑まれるような感じがあって、気付いたら相手のペースでやられていた。静学さんはテクニックだったけど、山田さんはスピードも強さもあって、いつもはもっと早く相手に慣れるけど全然慣れることができずに呑まれてしまいました」(茂田)

 神田を完封した茂田だったが、青森山田のエースFW米谷壮史にはハットリックを喫し、DFリーダーとして衝撃を受けていた。「神田選手はとにかく映像を見まくって、対峙することでいい感じで抑えられたけど、米谷選手はマークを外していないと思っても外していて、その上で最後に決め切る力があった」。その上で「球際の強度は負けていないと思ったので、ステップワークとか、裏のケアとか、クロス対応がもっと上手くできていれば失点はもっと少なくできたと思う」と自らの改善点も見出していた。

 それでも最後はすがしがしく、この完敗を受け止めていた。

「自分たちらしく負けたなと。ベンチでも話していたけど、負ける時はボッコボコにされて負けるのが自分たちらしかったなと思います(笑)。結果だけボッコボコで最悪な感じだけど、ここまで来られて本当に良かったです。最後の最後まで自分たちらしく、全国ベスト16という道を拓けたのはこの仲間だからできたことかなと思います」

 入学時には想像できなかったこの景色も、最後の試合で食らった衝撃も、今後のサッカー人生に活かされていくはずだ。茂田は卒業後、関西学生リーグ1部の関西大に進学予定。「今回、静岡学園を倒せたのも奇跡に近かったと思うので、そうじゃなく、これから実力で倒していけるように頑張りたい」。まずはひたむきに実力を高め、新たなキャリアを築き上げていく。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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