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青森山田が国立4強へ! 昌平を4-0粉砕した「ビックリするくらい上出来」な“圧倒プラン”と“4年前の教訓”

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プレースキックとゴールだけでなく、声かけでも貢献したMF芝田玲(3年)

[1.4 選手権準々決勝 青森山田 4-0 昌平 浦和駒場]

 サッカースタイルを異にする東日本の強豪対決は、高円宮杯プレミアリーグ王者の青森山田高が堂々の完勝を収めた。前半立ち上がりからパワーで圧倒し、20分間足らずで3ゴールを奪うと、その後はカウンターとセットプレーで脅威を与えながら堅守で完封。過去7大会で3度の日本一に輝いた常勝軍団の強さをあらためて示した。

 試合後、正木昌宣監督は「前半の入り方が非常に良く、いい形で点数を取れたのでだいぶやりやすいゲーム展開になった」と勝因を指摘。狙いどおりに奪った前半の3ゴールに手応えを語った。

 前半2分に決まったDF小沼蒼珠(2年)の先制ゴールと同4分のDF小泉佳絃(3年)の追加点は、いずれもMF芝田玲(3年)のプレースキックが起点。強みであるセットプレーが炸裂した形となった。「プレミアでセットプレーの守備は我々のほうに多少分があるというデータもあったので、セットプレーでしっかり点数を取ろうということで良い準備ができた」(正木監督)。キッカーの精度に加え、パワフルに押し込むポジション配置が光った。

 その後も背後へのロングボールを徹底し、昌平のペースに持ち込ませなかった。

「相手が2トップで来たので中盤で勝負するより、前半から山田とバチバチでやろうというメッセージかなということで我々も考えていた。立ち上がりの10分、15分で押されることなく押し返そうと」

 前半19分にはこの狙いが得点につながり、背後に抜けたFW米谷壮史(3年)の折り返しから芝田が決めて3点目。その後は昌平にボールを持たせながら守備ブロックを構築し、指揮官は「ネガティブな状態で相手にボールを持たせたいというイメージで送り出したので、ビックリするくらい上出来な前半だった」と振り返った。

 さらに後半は4年前の経験が活かされていた。

 青森山田は2019年度大会の準々決勝で昌平と初対戦し、3-2で勝利。奇しくもこの日と同じく前半に3ゴールを奪いながらも、後半に2点を奪われたという試合展開だった。現在の3年生はその試合を目の当たりにしていないが、前日3日のミーティングで指揮官が「もしかしたら先制点を取るかもしれないが……」という文脈で伝えていたという。

 するとこの日のハーフタイムには芝田が選手たちに自ら声をかけたという。「芝田が『3点決めてから後半に2点取られた4年前の試合を思い出せよ』と言っていた。自分もスキが見えたら決められるかもしれないという思いがあった」(小泉)。その姿には正木監督も「私が言わなくても、選手たちが締めてやろうと共有してやっていた」と目を見張っていた。

 その結果、後半4分にも芝田のFKを起点に小泉が追加点を奪って4-0にリードを広げ、強固な守備ブロックを続けて昌平の攻撃をシャットアウト。3年前の3-2から、4-0に大きく点差を広げる形で完勝を収めた。

 指揮官は「一人ひとりの技術が高く、強引にでもこじ開けてくるチームなのでしっかり中央を締めて守備をしようと。そこから我々の得意なカウンターで戦おうということで話をしていたが、1試合を通して粘り強くやってくれた選手に感謝」とプラン通りの戦いぶりに賞賛を送った。

 それでも次の試合に向け、気を引き締めることも忘れなかった。今大会は準々決勝から準決勝が中1日で行われるスケジュールのため、例年以上にコンディション調整が大事。次の対戦相手は市立船橋高に決まったが、指揮官は「プレミアリーグで2試合戦っているし、向こうの良さは十分にわかっている。しっかり身体を休めて、コンディションを戻して、いい準備をしたい」とまずは休養に目を向けていた。

 その上で今大会得点ランキングトップのFW郡司璃来(3年、清水内定)ら能力の高いタレントを警戒。「一人ひとりの能力の高さと、フィジカル的にも高い選手が多いので、押し合いで負けないように。また向こうにはエースストライカーがいるので、仕事をさせないようにしっかり対策したいですね」と郡司封じを宣言した。

 その舞台は高校サッカーの聖地・国立競技場。とはいえ現在の3年生はMF松木玖生らを擁して前回優勝した2021年度大会を間近に経験している上、中心選手たちは昨年7月に黒田剛前監督率いるFC町田ゼルビアのJ2リーグ戦(第25節・東京V戦)を視察しており、明確なイメージを持ちながら目指してきた場所だ。

 正木監督は「当然、ここでサッカーがやりたくて青森山田に来ている生徒が多数いる」と聖地への敬意は払いながらも、「でも行くだけで満足せず、しっかりと国立での勝利を目指して地に足をつけてやりたい」と冷静に意気込んでいた。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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