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名門は今回の選手権で「強い市船を取り戻す」。次はプレミア王者・青森山田との準決勝

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市立船橋高は今回の選手権で「強い市船を取り戻す」

[1.4 選手権準々決勝 名古屋高 1-2 市立船橋高 柏の葉]

 市船、国立帰還。選手権優勝5回の市立船橋高(千葉)が、準々決勝で初出場校の名古屋高(愛知)を2-1で破り、12年ぶりの準決勝進出を決めた。

 市立船橋は8度目の出場だった94年度大会で初優勝。2年後の96年度大会も制すと、99年度大会、02年度大会、そして11年度大会でも日本一となった。戦後での選手権優勝回数は帝京高(東京)、国見高(長崎)の6回に次いで第3位。また、インターハイ優勝9回は2位・国見を大きく上回って歴代1位となっている。

 だが、近年は選手権で勝ち上がることができていなかった。5度目の優勝を果たした11年度大会後、選手権に5度出場したものの、8強が2回、あとの3回はいずれもPK戦で3回戦までに姿を消している。

 その間もMF鈴木唯人(現ブレンビー)ら名手を輩出していたが、なかなか結果が出なかった。また、2年前は千葉県予選決勝で宿敵・流通経済大柏高に屈し、1年前も千葉県予選決勝で新興勢力の日体大柏高に敗戦。現3年生は入学以来、一度も選手権に出場することができていなかった。

 それでも、エースFW郡司璃来(3年、清水内定)とMF太田隼剛主将(3年)をはじめ、下級生時から公式戦経験を重ねてきた選手の多い世代は、今回の予選決勝を5-1で制して千葉制覇。「行けるところまで行けるチームだと思っている」(波多秀吾監督)という期待に応え、全国大会でも12年ぶりの準決勝進出を果たした。

 だが、この世代も順風満帆ではなかった。太田は「新チームがスタートした時は本当に勝てなくて、リーグ入る前は練習試合も、フェスティバルも、ほぼ負けていた。もがき苦しんだというのがある」と振り返る。攻撃面に主軸を置いていたチームが、立ち返った原点。「球際・切り替え・運動量が一番大事だと練習からとにかくこだわって、自分たちのやりたいサッカーが徐々にできた」(太田)。

 市立船橋の三原則から徹底したチームは、前期のプレミアリーグEASTではなかなか勝ちきれなかったものの、4勝6分1敗でターン。インターハイ準々決勝敗退や後期に勝てない時期も味わったプレミアリーグを経て、またチームは成長した。

 波多秀吾監督は今大会のチームについて、「先制点をしっかり取っているのは大きなところで、自分たちの流れというか、勝ち方というか、自分たちが経験して良い流れを作っていくというのは成長しているのかなと思います」と説明する。

 全4試合で先制点を奪い、主導権を握っての戦い。そして、練習からどこよりも徹底してきた市船の三原則、また太田が「全員攻撃・全員守備が自分たちの色。全員で攻撃に係わって、全員で守備することが今年の特長」と説明する今年の色、加えて太田だけでなく、右SB佐藤凛音(3年)や左SB内川遼(3年)ら多くの選手がリーダーシップを取って自発的に行動できる部分も強みに勝ち上がって来ている。

 とは言え、太田は「選手権の空気感に飲まれて自分たちのサッカーが出せないというのは、ここ何試合か続いて、もっとボールを大事にしたりできるのに蹴っ飛ばしてしまうシーンが多い」と指摘する。この日は相手を見ながら戦うことができていたが、より細部にこだわって戦っていかなければこれからの戦いで勝つことはできない。

 12年ぶりの選手権制覇へ、次は青森山田高(青森)との大一番だ。青森山田は過去7大会の選手権で優勝3回、準優勝2回。23年シーズンは3度目のプレミアリーグチャンピオンにも輝いている。現在、高校年代で最も「強い」青森山田を破って「強い市船」を取り戻すことができるか。

 太田は「近年、市船が全国で結果を残せていないという中で、自分たちは今後の市船のためにも、自分たちのためにも、何とか結果を出そうとやってきた。強い市船を取り戻すというのは一つみんなが思っているところかなと思います」。それを実現するため、2年前に0-9の大敗も喫した大きな壁を乗り越えなければならない。23年シーズンの戦いは1分1敗。今度こそ勝って、日本一に王手をかける。

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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