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指揮官の決断でキャプテン就任…初出場8強の名古屋高とともに成長、選手宣誓も務めた主将・田中響貴「悔いはない」

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名古屋高主将・MF田中響貴(3年/最左)

[1.4 選手権準々決勝 名古屋高 1-2 市立船橋高 柏の葉]

 大躍進の一年となった。名古屋高(愛知)は初出場で快進撃を続けたが、市立船橋高(千葉)との接戦で敗退。MF田中響貴(3年)は「ここまでサッカーができて本当に幸せ。自分たちのやれることは精一杯出せた。もう悔いはない」と言い切った。

 初戦・日商学園高(宮崎)、2回戦・北海高(北海道)と破り、3回戦では前回王者・岡山学芸館高(岡山)をPK戦の末に破った。2011年度大会の中京大中京高以来となる愛知県勢12年ぶりのベスト8。準決勝まで勝ち進めば、1980年度大会の岡崎城西高以来の快挙となった。

 だが、国立競技場への道のりは遠かった。前半21分に失点を喫するが、前半終了間際には名古屋が誇る武器、ロングスローでDF月岡陸斗(3年)がオウンゴールを誘発し、同点に追いつく。しかし後半2分に清水内定FW郡司璃来(3年)の一発を浴びた。終盤には猛攻を仕掛けたが、堅い守備に阻まれる。名古屋の快進撃は準々決勝で止まった。

 山田武久監督は選手たちを称賛する。「堅守速攻というところでいくつかシーンも作れた。得意のロングスローから1点を取ることもできた。本当に選手を称えたい」。とりわけ、チームを率いたキャプテン田中へのねぎらいには力を込めていた。

 名古屋は今年、もともと副キャプテンを務めていたDF足立遼馬(3年)がそのままキャプテンに昇格する流れだった。しかし山田監督は田中に白羽の矢を立てる。「田中にリーダーシップを取ってほしかった」(山田監督)。足立は引き続き副キャプテンとなり、田中がキャプテンに就任。「彼の成長がチームの成長につながると思った」と指揮官は思いを明かす。

 チームは県の新人戦で初戦敗退。インターハイも県3回戦で敗れた。だがリーグ戦は12勝4分2敗で県1部優勝を果たすと、選手権予選では強豪を退けて初の本大会出場を決めた。晴れの舞台、開会式では、田中が選手宣誓を務めた。宣誓した直後には「少し間違えてしまったところがあったので、80点」と自己採点。それでも、この振る舞いがチームに勢いを与えた。

 田中はチームの快進撃とともにキャプテンらしさを増した。山田監督はその成長ぶりに目を細める。「最初はたどたどしかった。だけど開会式の選手宣誓なんて、われわれ大人でもちょっとできないんじゃないかなっていうぐらい。堂々としっかりやりきってくれた。ああいうふうに成長してくれたのは本当にチームとともによくやったなと」。3年生たちには「彼らがここまで導いてきてくれたのは事実」と感謝を伝えた。

 田中も自身の成長とチームの成長が噛み合った瞬間を振り返る。「最初はキャプテンらしいことすらできなかった」。それでも選手権の予選が始まると意識は大きく変化。「自分が成長することが、チームの成長につながるということが実感できた」と激動の一年を総括した。

「本当はもうちょっと先まで行きたかったけど」と本音ものぞかせるキャプテン。「この経験をした1、2年生が来年、再来年のチームを引っ張ってほしい」とその役目を後輩たちに託していた。

(取材・文 石川祐介)

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石川祐介
Text by 石川祐介

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