beacon

[MOM926]流通経済大FW宮田和純(4年)_数少ない4年生の思いを背に…インカレ8強に導く後半ATのPK決勝弾

このエントリーをはてなブックマークに追加

流通経済大FW宮田和純(4年=FC東京U-18)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.10 インカレ2回戦 流通経済大 2-1 新潟医療福祉大 三ツ沢公園陸上競技場]

 冷静に2ゴールを沈めた。流通経済大FW宮田和純(4年=FC東京U-18)は前半26分にファインゴールで先制。後半39分に追いつかれるが、後半アディショナルタイムに味方がPKを獲得すると、宮田が勝利を決定づけるゴールを挙げた。

 試合開始とともに、ピッチに立った4年生は2人だけだった。宮田とキャプテンのMF八木滉史(4年=流通経済大柏高)。だが、開始数分で思わぬアクシデント。八木が左ひざを負傷し、プレー続行不可能となった。八木は初戦で決勝ゴールも決めており、「うまくまとめてくれる存在」(宮田)。大きな動揺はなかったというが、宮田は「プレー的に落ち着かなかったというのはもしかしたらあるかもしれない」と振り返る。

 精神的支柱を欠く中、奮起したのがもう一人の4年生、宮田だ。前半26分、MF鈴木雄大(2年=創価高)が左サイドからクロスを上げると、ファーサイドで待ち構えたのは宮田。右足のキックフェイントで相手選手をかわしきり、空いたコースに左足を振り抜く。「ゴール前は絶対にリアクションするので、切り返しが一番効く。それで空いたところに思いっきりシュートした」。低い弾道はゴールに突き刺さり、先制ゴールとなった。

 しかし、その後はキャプテン不在の影響もあってか、前回大会準優勝の新潟医療福祉大に押し込まれる展開が続く。そして、後半39分に波状攻撃を防ぎきれず、同点ゴールを食らう。一気に延長戦も視野に入る中、後半アディショナルタイムにFW松永颯汰(2年=静岡学園高)が敵陣PA内で倒されてPKを獲得。直後、宮田がキッカーとしてボールを抱えた。

 ピッチに立った最上級生としての責任を果たした。中野雄二監督は自身の指示を明かす。「ベンチで誰に蹴らせるかとなって宮田と。彼が失敗してダメだったらしょうがない。心中するようなつもりで見ていました」。キックポイントに立った宮田はゴールを見据えながら、気持ちは無心を保った。「無意識であんまり何も考えなかった」と平常心でキックモーションに入ると、いち早く相手GKが左に動くのを見逃さない。冷静にゴール右隅に決め切り、勝ち越しゴールを挙げた。

 終了間際のゴールで決着。流経大は宮田の2ゴールで3回戦進出を決めた。

 流経大のインカレ登録メンバー33人中、4年生はわずか6人のみ。だが中野監督は最上級生たちを評価する。「選手として評価されている人数が少ない学年だけど、まとまりとかそういう面では見ての通り」。キャプテン不在の中、頼れる最上級生としての役割を果たした。

 PKを獲得した松永も「自分で蹴ろうと思ったけど、4年生に今大会は任せたかった」と胸中を明かす。指揮官はPKを決めた宮田に「ピッチに立った4年生として、彼がしっかりと決めた。ちゃんと足を振ってくれて有難かった」と目を細めた。

 自身のサッカーキャリアは続いていくが、その話はインカレが終わってから。まず今大会は4年生全員の気持ちをプレーで表現するつもりだ。「トップで関わっている4年生は少ない。でも、出ていない4年生が出ているくらいの気持ちで応援してくれた。そういう人たちがいるのに、不甲斐ない試合はできない」。頂点までは残り3試合。宮田は「もっと気持ちを見せて、もちろん優勝を目指す。もっと迫力あるサッカーをやりたい」と気を吐いていた。

(取材・文 石川祐介)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
石川祐介
Text by 石川祐介

TOP