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W杯目前で苦境の南野拓実「チャレンジャーで挑むほうがやりやすい」待たれる“大物喰い”再現

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日本代表MF南野拓実(モナコ)

 森保ジャパンでの出場試合数42、ゴール数17、アシスト数8はいずれもチーム最多。日本代表での4年間を先頭で引っ張ってきたMF南野拓実(モナコ)が、いよいよワールドカップの大舞台に立つ。攻撃的なタレントの台頭を受けてポジションを奪われ、チーム内の序列は決して高くなくなった。それでも、こうした逆境を乗り越え続けてきたのが南野の真骨頂。持ち前の反骨心を胸に、世界的強豪を相手に爪痕を残していく構えだ。

 2014年初旬に19歳でA代表トレーニングキャンプに初めて招集されながらも、14年夏のブラジルW杯、18年夏のロシアW杯ともにメンバー入りを逃した南野。森保ジャパンでは発足当初から絶対的な地位を築いてきた背番号10だが、そのキャリアは順風満帆なものではなかった。

 19歳で渡ったザルツブルクでは次のステージへのステップアップを果たせず、5年間が過ぎていった。2019年末のインタビューでは「ザルツブルクでの5年間を思い返すと、反骨心でしかなかった」と回顧。「まったく代表にも呼ばれず、チームでも別に絶対的な選手として試合に出ているわけじゃない。メディアもない。観客もそんなに入らない。スタジアムも満員になるわけじゃない。でも俺はまだ終わってへんし、できるって自信はあった。絶対にヨーロッパの奴らに認められたいというのがあった」と厳しい下積み時代の悔しさを語っていた。

 それでも南野は、育成年代から培ってきたチャレンジャー精神で人生を切り拓いた。

 2019年10月3日にアンフィールドで行われたUEFAチャンピオンズリーグのリバプール戦。ザルツブルクの一員として先発出場した南野は2点ビハインドの後半11分、ミドルレンジからの右足ボレーで1点差に詰め寄るゴールを決めると、後半15分には当時ともにプレーしていたFWエーリング・ハーランドのゴールをアシストし、、1ゴール1アシストの活躍を見せた。試合には惜しくも3-4で敗れたが、このパフォーマンスがその後の道筋を大きく動かした。

 その月末、対戦相手だったリバプールからオファーが舞い込んだ。「サッカー界では対戦相手から選手を引き抜くことが起こりうるし、チャンピオンズリーグはそういう舞台。相手にアピールして、ビッグクラブにスカウトされるのは良くある。そういうモチベーションもあった」。これまでの積み重ねを大事な1試合に込め、小さい頃から思い描いていた「ビッグクラブでプレーする」という夢を叶えた。

 リバプール移籍後も決して出場機会は多くなかったが、徐々にプレミアリーグの水に慣れると、コロナ禍による過密日程が襲った20-21年はカップ戦を中心に大活躍。プレータイムが限られる中でも約80分間に1点というハイペースでゴールを積み重ね、FAカップとカラバオカップの2冠に大きく貢献した。今年6月の代表活動中には「自分が試合に出たら悔しさを怒りのモチベーションに、何かを残してやるというのは常に思っていた」と述べ、反骨心が原動力となっていたことを明かしていた。

 現在はリーグアンのモナコで再び苦境に陥り、代表でのパフォーマンスも全盛期の輝きはない。本職であるトップ下のポジションにはMF鎌田大地が君臨しており、長らくプレーしてきた左サイドも東京五輪世代のMF久保建英、MF三笘薫がファーストチョイス。背番号10はW杯を目前に控えた中、森保ジャパン発足後最大の危機に直面している。

 それでも、本大会で待ち構えているのはドイツ、スペインといった世界的強豪。21日のオンライン取材の場で南野は言い切った。

「常にチャレンジャーとしての気持ちで試合に挑むほうがやりやすい。日本も強豪国じゃないし、何かを背負って戦うよりはチャレンジャーのメンタリティーで戦うことになるし、そっちのほうが自分に合っている。そのほうが自分の良さ、自分たちの良さを出せるメンタリティー」

 期待されるのは、南野が自らのキャリアを切り拓いてきた“大物喰い”の再現だ。「がむしゃらにプレーしたり、開き直った、思い切った勇気のあるプレーができれば自分たちのリズムが作れてくる」。タフに、激しく戦う姿で森保ジャパンを牽引し、新たな10番像を切り拓いてきた27歳は、反骨心を胸に秘めてカタールW杯の夢舞台に立つ。

(取材・文 竹内達也)

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