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欧州視察終えた森保監督、6月シリーズは「より躍動感、インテンシティを」

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日本代表森保一監督

 日本代表森保一監督が12日、約1か月間の欧州視察から帰国した。同日、成田空港で報道陣の取材に応じた森保監督は「限られた試合だったが、ヨーロッパでプレーしている選手たちの試合を見ることができ、練習も少し見させてもらうことができた。選手と個人面談をすることができ、これまでの振り返りとこれからの活動で有意義な時間を過ごすことができた」と収穫を口にした。

 森保監督は4月14日に日本を出発し、ドイツ、イングランド、スペインなどで日本代表選手を視察。同時期には新任の名波浩コーチと前田遼一コーチも欧州に渡っており、2人はスコットランドにも足を伸ばすなど、手分けをしながら現地でのスカウティングを行ってきた。

 森保監督の詳細な行程は明かされなかったが、最も印象に残った試合には4月23日にウェンブリーで行われたFA杯準決勝のブライトン対マンチェスター・ユナイテッド戦を挙げた。「まずは両チームが素晴らしいプレーを延長・PK戦も含めて見せてくれたし、その中でも三笘が世界のトップクラスの戦いで、日本人選手として存在感を見せてくれたのがすごく印象に残っている」と振り返った。

 また選手との面談の中では、第2次森保ジャパン最初の活動となった3月シリーズに関するのディスカッションも行われたようだ。

 3月シリーズでは名波コーチが主にトレーニングの指揮を執り、偽SBとも言える新たなビルドアップの枠組みにトライしたが、ウルグアイとコロンビアとのキリンチャレンジカップに1分1敗。カタールW杯からの上積みを狙ったが、これまで積み上げた攻守のインテンシティが影を潜め、ベースを引き継ぎながら新たな要素を積み上げることの難しさを感じさせる活動となった。

 もっとも森保監督は、欧州視察先で選手たちから前向きな反応を受け取っていたという。

「個々で意見は違うが、選手が一様に言ってくれていたのは今回がスタートで、カタールW杯から選手が入れ替わって、やるべきトライすべきこともトライしながらやっていくということ。うまくいかなかった部分はあるが、われわれが現時点でいろいろなことをトライするのは、自分たちも納得しながらやっていきたいということを言っていた。これまでどおりのものしかないということより、これからにどれだけ活かせるか、オプションを作れるかということも大切だということは選手たちも言ってくれた」

 ウルグアイに1-1のドロー、コロンビアに1-2で敗れた結果については「どんな状況でも私も選手も同じ意見だが、代表として戦う上では誰が出ても、どんなトライをしても、勝利できる力をつけないといけない」という姿勢も明確にしていた森保監督だったが、3月シリーズでトライしたことについては前向きな感覚を持っているようだ。

 こうしたトライに至った理由はカタールW杯の反省を受けたもの。ドイツ、スペイン戦でボールを握り返せなかったこと、コスタリカ、クロアチア戦でボールを握りながらも崩しの形が見られなかったためだ。ところが森保監督によると、ボール保持への意識を強めた3月シリーズの戦い方に「舵を切ったわけでは全くない」という。指揮官は「あくまでも選択肢を増やそうということで考えている」とオプションという位置付けを強調しつつ、次のように続けた。

「ボール保持とは言ってもまずはゴールを目指すことは忘れてはいけないし、世界で戦う上でも、アジアで戦う上でも、ボールの奪い合いからサッカーは始まる、いい守備からいい攻撃が始まるということは忘れてはいけない。W杯ではドイツ、スペインという世界のトップトップのチームにはボール保持の時間が思ったよりも作れなかったし、コスタリカとクロアチアの試合ではボール保持率は上がったものの、決定機がどれだけ作れたかというと、そこも上げないといけない。

 そうしたところを踏まえた上で、ボールを保持しながら相手の守備網を突破していこう、チャンスを作ることをやっていこうと3月のトライをさせてもらった。あの形だけではなく、あれが一つのオプションになるということで考えていただければと思う。

 インテンシティ高く戦うというのは絶対に忘れてはいけない。交代枠も5人になって、試合中のインテンシティを落として戦うことがないサッカーの時代になってきている。これもインテンシティと言うと、ただ戦う、ただ守備だけと受け取られてしまうかもしれないが、そのベースがあった上で日本人の技術力の高さを発揮していくということをやっていきたい」

 6月シリーズでの活動ではカタールW杯以前のベースにもこだわり、「練習の中で選手のコンディションを見なければいけないところはたくさんあるが、できる限り対人でインテンシティ高く、試合よりも難しい状況で練習できるのであればその回数を増やしていきたい」とも語った森保監督。6月15日のエルサルバドル戦、20日のペルー戦ではまた異なる側面でチーム作りが行われるようだ。

 前体制のベースを引き継ぎつつ、次のW杯に向けたさらなる積み上げを目指すというミッションを抱える第二次森保ジャパン。指揮官は「選手だけでなく、見ていただいている方も3月の試合は少し躍動感がない、ノッキングしたという印象が残ったというのはいろんな人から聞いて感じている」と現状を受け止め、「トライするところはもちろんトライして、より躍動感のある、インテンシティを感じてもらえるような準備をしていきたい」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)

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