beacon

“戦術三笘”は過去の話…左で引きつけ右を活かした三笘薫「うまくバランスが取れていた」

このエントリーをはてなブックマークに追加

MF三笘薫(ブライトン)

 日本代表は国際親善試合ドイツ戦(○4-1)から一夜明けた10日、ドイツ・ボルフスブルクでキリンチャレンジカップ・トルコ戦(12日・ゲンク)に向けて再始動し、ドイツ戦の先発メンバーは軽めのリカバリー調整を行った。終了後、MF三笘薫(ブライトン)が報道陣の取材に応じ、4バックで時間を進めた守備について「良い自信になると思う」と手応えを述べた。

 カタールW杯以来となるドイツとのリターンマッチ。W杯の対戦では4バックで臨んだ前半に一方的に押し込まれて失点し、3バックに変えた後半でリスクをかけて逆転したが、前半の戦いぶりに課題を残していた。だが、この日は前半は4バックのまま相手の攻撃にしっかり対応。前線からのハイプレス、中盤でのミドルブロックの使い分けが見事に機能していた。

 三笘はハイプレス時、相手の右SBを務めたDFヨシュア・キミッヒをケアしつつ、DFニクラス・ジューレにも圧力をかけて相手の攻撃方向を限定。「チームとしてあそこ(ジューレ)に行ける時は行くというのと、行って剥がされるのではなく中にプレーさせたり、下げさせる意識があった。そこが自分のタスクだった」と狙いを明かした。

 また背後にはFWレロイ・サネが待ち構えていたが、恐れることなくプレッシャーをかけ、DF伊藤洋輝にスライドでの対応を任せた。「一つ後ろを捨ててでも人に行くことをしないとボールを持たれて前回の試合のようになってしまうので、あれは一つ大きなところだった」(三笘)。これはW杯のような展開を避けるための方策であり、後半途中で3バックに変えるまで安定感を保ったまま試合を進めた。

 三笘はこうした4バックでの守備に「前回は4枚で下げさせられて数的優位を作られていたけど、数的優位を作られていても前に出て、一人捨てる守備ができていたと思うので、これは良い自信になると思う。もちろんドイツの流動性も欠けていた部分はあると思うけど、それを差し引いても良い守備ができていると思う」と手応えを語る。

 そうした守備組織が構築されつつあるのも、三笘をはじめとした欧州トップレベルで選手たちが積極的にディスカッションを行い、意思共有を進めながらゲームプランを固められていることの賜物だ。

 これまで森保ジャパンでは相手が3枚でビルドアップしてきた際、4-2-3-1のプレスが空転する形が多かったが、そうした課題も徐々に解消中。三笘は「より共有して意図を持って動ければ、集団として素晴らしいチームになると認識しているし、できていない時に負けているケースがある。特に4枚の守備はいいけど、3枚になった時に曖昧になるのがずっと続いていたので、少しずつだけど修正できていると思う」と胸を張った。

 またこうした意思疎通は守備時だけでなく、攻撃時でも成熟を見せている。ドイツ戦では三笘にキミッヒだけでなく、アンカーのMFエムレ・ジャンまでついてくる場面が頻発したが、三笘は的確な状況判断でドリブル突破と味方へのパスの二択を遂行。そのおかげで左サイドに相手が引きつけられ、右のMF伊東純也やDF菅原由勢が活き、MF鎌田大地も右に流れながらスペースを有効活用していた。

「僕にボランチの選手が来たり、サネ選手が来たりしていましたけど、うまく味方を使いながら、2人来た時は味方を使う、1人来た時は仕掛けるという判断のもとやっていた。洋輝にはうまくステイしてもらってサネのスペース、カウンターのところを考えてもらっていたし、それで右が上がってうまくバランスが取れていたと思う」(三笘)

 三笘によると、ドイツ代表が“三笘対策”としてそうした布陣を敷いてきたのか、三笘と伊東の個性を見定めた上でそういう対応になったのかは定かではないという。とはいえ、三笘に複数選手がついてくるケースは今後も想定でき、さまざまな相手の出方がある中でも適切な判断ができている現状は頼もしく映る。

 この日は結果に直結する活躍とはならなかった三笘。だが、右サイドを活かす引き立て役としても高いクオリティーを示し、また同様の取り組みを続けていけば結果で注目される試合もすぐに訪れるであろう。

「時間を作るところは自分の役割だと思うので、左サイドで人を集めたり、時間を作ってキープして後ろの上がりを待ったりといったリスク管理のところと、行ける時には行き切って前に行って流れを変えるのも必要だと思っている」(三笘)。カタールW杯前の停滞期、三笘頼りだった状況を称して呼ばれた“戦術三笘”は過去の話。いまやチーム全体の戦術に三笘のアイデアや武器を組み込めるような状況ができつつある。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集ページ
竹内達也
Text by 竹内達也

TOP