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ブラジル戦とは違った国立の景色…清水GK権田修一「各クラブが努力することがJリーグの発展につながる」

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清水エスパルスのGK権田修一

[7.2 J1第19節 清水3-5横浜FM 国立]

 清水エスパルスのGK権田修一にとって、この日は日本代表の一員として出場した6月8日のキリンチャレンジカップ・ブラジル代表(●0-1)戦以来、約1か月ぶりとなる国立競技場での試合だった。

 ブラジル戦のスタンドではカナリア色のユニフォームに身を包んだ日本人ファンの姿が目立ち、試合後に「たぶんブラジルを見たかったんだなというのが悲しかった。日本人の方がブラジル代表のユニフォームを着て、日本のホームで応援するとなっていて、あらためて日本サッカーはもっと発展しないといけないと感じさせられた」と心境を明かしていた権田。それでもこの日は一転、ホームの清水サポーターがスタンドの大半を埋め尽くす光景が見られ、「うれしかった」と素直な喜びを語った。

 権田がこの試合を通じて前向きに感じたのは、56,131人が詰めかけた国立を若手選手が体感できたことだったようだ。

「試合前に選手たちにもちょっと言ったけど、この雰囲気でできるのは幸せなこと。ここ1〜2年で新人で入った選手は3万、4万以上入っているスタジアムでプレーしたことのない選手が多い。そんな若い選手、J2でやっていた選手も多い中で、6万人という中でプレーできるのは幸せなことだし、天皇杯やルヴァン杯などビッグゲームで国立でたくさんの人の中でプレーできるのは選手としての幸せだと思う」

「こういう最高の環境でプレーできるのはサッカー選手として最高の喜び。ただスタジアムでもっとこういういい雰囲気の中で試合をできればサッカー選手冥利に尽きるし、うちの選手にとっても財産になる。今後エスパルスがルヴァン杯や天皇杯など優勝を決める試合で、4万人、5万人のスタジアムでできるようなチームになっていきたいと改めて感じました」

 そうした素晴らしい環境を作り出すため、スタッフ陣が努力を続ける姿を権田は間近で見てきたという。

「エスパルスのビジネススタッフが相当頑張ったんですよ。僕とかもミーティングに入っていたけど、この試合のために、どうやったら人をたくさん入れられるのかというのを今年最初から話してきて、クラブとして今年のエスパルスでのビッグイベントだった。導線も分からないスタジアムを初めて使うという中で、本当に努力してくれていた」

 各地のJクラブはコロナ禍以降、スタジアムへの集客に苦労しており、入場制限が解消されたいまも客足が完全には戻っていない。その現状はIAIスタジアム日本平を本拠地とする清水も同じ。だが、クラブ全体の努力でホームタウンから遠く離れた国立競技場で6万人近くを集客したという事実は、今後の取り組みを進めていくにあたって大きな刺激になりそうだ。

「やっぱりエスパルスではこのスタジアムにこれだけの人を入れられるポテンシャルがあるクラブなんですよね。僕が思うのはこれが静岡がサッカーどころと言われる所以で、いま静岡に住んでいない人もエスパルスを応援してくれる人はたくさんいる。そういう人たちのために、僕たちはもっと頑張らないといけない。このスタジアムでやることでモチベーションをもらえましたた」

「(4月下旬に国立競技場でホームゲームを開催した)FC東京は上層階を開けないであれだけ入って、ほぼほぼ入っていた。僕らは最初から6万人入れると目標にやった結果がこれなので、クラブが本当に頑張ってくれた。これがスポーツだし、無観客はコロナ禍では仕方ないし、声出しできないのも仕方ないけど、ルールを守ってくれれば(声出しでも)満員のスタジアムが実現できると思う。そういうところはみんなの努力とクラブの努力が重なれば、絶対にサッカー人気は戻ってくる」

 そう願う権田は今回の集客にあたり、地元の情報番組にも出演。コロナ禍で危機感があるからこそできる取り組みに意欲を示した。

「ちょっと(集客が)落ちているからこそ、今までとは違うことができる。エスパルスは応援してもらえるのが当たり前、お客さんがたくさん集まるのが普通なクラブだったけど、それにあぐらをかいていたらお客さんは入らなくなってくる。そこで選手がいつもより外に出ていくとか、静岡だからこそできることもある。僕も情報番組に出ていたんですが、それは東京だったらあり得ないじゃないですか。でも静岡ならちょっと頑張ればいろんな層を獲得できる可能性がある。みんなが今まではこうだったじゃなく、これから未来のためにちょっとずつ努力をすることが必要だし、それを各クラブがやることでJリーグもこれまでとは違う盛り上がり方をしていって、よくなっていくんじゃないかと思う」

 そうした姿勢は、権田が1か月前に憂いていた日本代表人気にも通ずるところがあった。「各クラブが努力することがJリーグの発展につながる。それがそれがサッカー人気につながる。今度、東アジア(E-1選手権)があるけど、Jリーグでプレーする選手しか呼ばれない中、普段応援している選手たちが出る日本代表を皆さんに応援してもらいたい。そういうところでたくさんの人が応援してくれるような環境になると、Jリーグももっと盛り上がってくると思う」と展望を述べた。

 クラブの盛り上がりだけでなく、サッカー界全体の盛り上がりを——。そんな志向はクラブの振る舞いからも感じられた。この日の試合後、清水の選手たちは横浜FMサポーターに向けても整列・挨拶を行い、清水サポーターからブーイングを受ける場面が見られた。実はこれはクラブスタッフの提案によるもの。クラブの思いをくんだ権田は「エスパルスのサポーターに申し訳ないと思うけど、クラブがこの試合をそう位置付けていたのもあって行ったほうがいいかなと考えた」と背景を明かした。

 サポーターとの向き合い方も含め、さまざまな面で課題が見られたのも事実。権田も「反省点はいっぱいあるんですよ。僕たちキーパーが入場するときにOBの挨拶(ビデオメッセージ)が流れていたりとか、KDDIの回線が止まったけど大丈夫だったのかとか、静岡への新幹線が時間がギリギリだったりとか。だから僕はデーゲームのほうがいいなとも思うんですが」とより良い試合運営に思いを巡らせていた。

 それでも国立という大舞台で勝負に出た経験はクラブにとっても大きな糧になるであろう。「一回やってみたことで来年はもっとハードルが上がるし、そこでエスパルスが努力するのはクラブの発展になる。今まで大丈夫だったから大丈夫ではなく、やってみるというのが大事だと思う」。そう総括した権田は「全国にエスパルスを発信できる環境を増やすのはクラブにとってありがたい機会。僕は年一でやってほしいですね」と来季への期待を語った。

(取材・文 竹内達也)
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