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“BIG神奈川ダービー”で劇的敗戦…横浜FM喜田拓也「ブーイングの意味も、その後のチャントの意味も伝わっている」

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MF喜田拓也(写真右)

[7.15 J1第21節 横浜FM 0-1 川崎F 日産ス]

 首位の横浜F・マリノスは後半アディショナルタイムに劇的な決勝ゴールを献上し、“BIG神奈川ダービー”と銘打った川崎フロンターレとのビッグマッチで手痛い黒星を喫した。3日前に行われた天皇杯3回戦・FC町田ゼルビア戦に続く公式戦連敗とあり、試合後にはホームのサポーターからは大きなブーイングも降り注いだ。

 試合後、普段どおりにケアを終えてミックスゾーンに姿を現した主将のMF喜田拓也は「まずはこれだけの雰囲気を作ってくれた皆さんに感謝している」と今季ホームゲーム最多の42772人が詰めかけた会場のファン・サポーター、集客に奔走したスタッフに感謝。さらに「皆さんが一番望むであろう結果を届けられなかったことが本当に申し訳ない」と続け、ブーイングの後にチャントを贈ったファン・サポーターの心中を慮りながら敗戦を受け止めた。

「最後のブーイングの意味も、その後のチャントの意味も自分たちに伝わっている。悔しい結果ではあるけど、チャンスも作れずに手も足も出なかったという敗戦では絶対になかったと思う。結果が全ての世界というのは重々承知しているけど、感情的になって、それだけになってしまってはチームの成長を止めてしまうので、できたところ、できなかったところを見る必要があるし、選手がそれをするのは結果を出すためなので、それを間違えないようにチームで成長していくべきだと思う。自分たちが望むものって、そんなに簡単に手に入ると思っていないので、『これをも力強く乗り越えてやるぞ』というチームの気持ちもすごく大事になってくる。いい期間があるのでまたJリーグに成長して帰って来られるようにしたい」

 ここからJ1リーグ戦は一時中断。親善試合のセルティック戦、マンチェスター・シティ戦を控えてはいるが、8月6日の次節・浦和戦に向けての立て直しを誓っていた。

 自身は天皇杯3回戦に先発出場していたこともあり、この日は後半13分からの途中出場。MF藤田譲瑠チマとの交代でピッチに入った。そこからは冷静な状況判断でゲームコントロールを試み、戦況を徐々に手繰り寄せていくと、後半途中からはDF永戸勝也の負傷を受けて左サイドバックも担った。

 喜田によると左SBでのプレーは「自分から言いました。自分がやると決断した」。前半の終わり際には接触プレーで脳震盪の疑いがあったDF松原健がすでに交代しており、サイドバック不足を受けての志願だったという。

「本職の選手もいなかったし、自分がどこをやりたいとか、できるできないという次元の話じゃない。自分はいつもチームのためになりたいと言っているけど、そのことしか頭になかった。自分がやるべきだと思ったし、勝つための判断、決断は試合中に必要なので決断してやった」

 それでも負傷者が相次いだ代償は大きく、徐々に一方的に押し込まれる時間が増え、後半アディショナルタイムに喜田のサイドを崩されて失点。「まだ映像をゆっくり見られていないので、分かり切っていない段階」と失点シーンへの詳しい言及は避けたが、スクランブル状態でのゲームコントロールに課題を残した。

「それまでの時間は決して悪かったわけではなかったと思う。押し込めていた時間も十分にあったし、自分たちの思い通りに進めていた時間もあった中で、アクシデントが多少続いた。多少チームのコントロールという部分は仕切れなかった部分がある。試合をやっていればアクシデントがあって、判断・決断をしないといけない場面は往々にしてあるので、そこのチーム力はまだ上げられると思うし、動じずに自分たちのペースに引き込むという力も上げられる。握り方もそうだし、押し返し方もあの状況、アクシデントが続いた中でも出せるようになればよりスキのないチームになっていく。そこはやっていきたい」

 この結果により、横浜FMは今季初の公式戦連敗。そのことを報道陣に問われた喜田は冷静に奮起を誓った。

「周りは言いたいことを言うと思う。大会は違えど自分たちが連続して負ければ公式戦と括られて、連敗だと書かれる。大事なのはそこに支配されることではなくて、全ては自分たち次第。それはどんな時も変わらない」

 こうした“連敗”に対する受け止め方は、昨年8月18日のACLチャンピオンズリーグ・ラウンド16神戸戦で敗れた後にも聞かれたもの。当時は公式戦4連敗という苦境にあったが、そこからリーグ優勝まで蘇ってきた成功体験もある。

 喜田は「皆さんの書き方をリスペクトしていないわけではないですよ」と付け加えることも忘れず、“公式戦2連敗”という出来事だけで注目される現状を前向きに受け止めていた。

「それだけ自分たちに興味を持っていただいているということ。自分たちの一挙手一投足を見られているところにいることにプレッシャーを感じるのではなく、喜びの中でやっているので、自分たちが強くなればそれだけのものを示せると思う。そのやりがい、生きがいを感じて、誇りを持って仕事をしている」

 重要なのはシーズンを通じてのタイトルレース。横浜FMの新たな黄金時代を築こうとしている主将は「絶対にこれで下を向くことはないし、バラバラになることはないと言い切れる自信があるので、苦しい時こそしっかりと自分がチームを引っ張っていけるように頑張っていきたい」と力強く語った。

(取材・文 竹内達也)
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