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エウベル・宮市に立ちはだかった川崎F山根視来、代表復帰へ高まる意欲「ここ数週間、海外に行ったヤツらが練習に来て…」

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試合終了直後、雄叫びを上げるDF山根視来

[7.15 J1第21節 横浜FM 0-1 川崎F 日産ス]

 守備ではエウベル宮市亮とのマッチアップで立ちはだかり、攻撃では素早い判断での縦パスでスイッチを入れたかと思えば、終盤にも尽きない運動量でフィニッシュにも絡む。川崎フロンターレのDF山根視来はこの日、首位を走る横浜F・マリノスとのダービーマッチで一段上の輝きを放っていた。

 まずはチーム全体が前半からアグレッシブなプレッシングを試みる中、対面のエウベルにほぼマンツーマンで対処した。「今日のゲームは気合が入ったし、何よりマッチアップの相手が質の高い選手なので、いい準備をしてできたと思う」(山根)。序盤こそCBのマッチアップで後れを取り、FWアンデルソン・ロペスとMFマルコス・ジュニオールにボールを入れられたことで、裏を取られる場面はあったものの、徐々にラインコントロールを修正しながら対応。割り切ったブロック守備も交えながら安定感のある陣形を構築していった。

 前半34分にはシンプルなフィードでエウベルにCB裏を突かれたが、山根が絞ってスーパークリア。「僕がCBの後ろをカバーしたというより、構造上ああなっちゃうのはしょうがない。マリノスの選手の配置がそれを狙っている配置だった。ああなる前に防げたかなというのがある」と狙いどおりの形ではなかったようだが、想定外のケースを個人能力でカバーするという中心選手にふさわしい働きが光った。

 また横浜FMのボールポゼッションが続いた時間帯では、時にはビルドアップに関わるエウベルに深く食らいついて行き、ピンチの芽を摘むボール奪取も連発した。「ちょっと食いついて裏をやられるシーンが1回2回あったので難しいけど、どこかで行かないと取れないなと。(横浜FMは)みんなすごく上手なので、勇気を持ってちょっと行くというのは常に狙っていた」。そうしたプレーの一つ一つが無失点の時間を続ける大きな要因となっていた。

 さらに攻撃ではパスカットやこぼれ球を拾った直後に、素早く縦につなぐことで攻撃のスイッチを何度も入れた。「あれだけ人数を前にかけてくるので、奪ったら前が空くのはどのチームもわかっていると思うけど、僕らがされて嫌なことをしたという感じ」。横浜FMの守備陣も警戒していたが、キックのテイクバックやモーションで細かく駆け引きし、インターセプトを回避。FW山田新のシュートにそのままつなげる場面もつくっていた。

 加えて後半からは再び守備で存在感。エウベルを反対サイドに追いやった中、日本代表でも共にプレーした宮市とのマッチアップを繰り広げると、自慢のスピードをほとんど出させることなく完全に封じ切った。

「E-1で一緒にやったけど、まずは自分の後ろはやらせないというところ。あとパスが出る前から距離を詰めるというのが大切」。宮市対策も徹底していた山根は「前半からエウベル選手とマッチアップしていて、(宮市)70分くらいから出てくるかなと思って、正直ちょっとしんどいなと思いながらやっていたけど、なんとか最後まで持ったなという感じです」と冗談まじりに手応えを語った。

 そうした山根の奮闘もあり、チームは0-0で終盤に持ち込むと、3バックに変えた最終盤の決勝ゴールで勝ち点3を奪取。注目のダービーマッチで完封勝利を収めた。川崎Fはシーズン最初の10試合で無失点試合が1度しかなかったのに対し、この10試合では6度目の無失点。山根はチームの出来に一定の手応えを感じているようだ。

「ピンチはかなりあったけど、しっかりとCBとGKが集中してゼロにしてくれた。前半の最後はずっとボールを持たれていたけど、しっかり中を閉じてやらせない、我慢して割り切ってやろうという言葉をかけていたし、みんなわかっていたので、そういうところはちょっと成長しているかなと思う」

 一方、自身のパフォーマンスについては「選手の特徴もそうだし、それをサポートする周りの選手の技術も含めて考える中で、今日の自分の判断はそんなに間違っていなかったと思う」と一歩引いた見方を崩さず、むしろ攻撃では「もうちょっと質が良ければというシーンも何個かあった」と課題も口にした。とはいえ、カタールW杯の影響が色濃かったシーズン序盤に比べれば、状態はずいぶん上がっているように思われた。

 そこで期待がかかるのが日本代表への復帰だ。山根はカタールW杯を終えた第2次森保ジャパンにおいて、3月シリーズ、6月シリーズともに招集外。それでもその間、右SBの主力にはカタールW杯落選組のDF菅原由勢が定着した一方、バックアッパーには本職ではないMF相馬勇紀が起用されるなど、陣容は定まり切っておらず、チャンスは残されている状況と言える。

 3月・6月の代表チームについては「東京世代の選手たちを中心にすごく勢いのある代表だと思うし、どのポジションもいい選手が揃っていると思う」と敬意を示した山根だが、代表活動前後に川崎Fの練習場に姿を見せたDF谷口彰悟、MF守田英正、MF三笘薫、MF旗手怜央、MF田中碧らとの交流を通じて、代表復帰へのモチベーションは高まっているようだ。

「ここ数週間、海外に行ったヤツらが練習に来て、いろいろと話したけど、やっぱりみんなともう一回サッカーしたいなという思いは強くなったし、彼らと会話すると単純に刺激を受けます。活力にもなるので、そこ(代表)は意識してやらなきゃなと思っています」。まずはカタールW杯までの道のりと同様、イチからアピールしていく構え。「僕はずっとチャレンジャーみたいな感じだったので、そこは忘れずにやっていきたいなと。彼らに会ってあらためてそう思いました」と静かに闘志を燃やす。

(取材・文 竹内達也)
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