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「打てるんだとわかってきた」新潟MF三戸舜介が圧巻35mミドル…そのコツは“ミート意識”の無回転ボール

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MF三戸舜介

[9.29 J1第29節 川崎F 2-3 新潟 等々力]

 約35mの長距離からロングシュートを放ち、スタジアムをどよめかせた。アルビレックス新潟MF三戸舜介の放った弾道はポスト直撃で得点こそならなかったが、FW鈴木孝司の同点ゴールを演出。「ちょっと遠いかなと思ったんですけど、一発振ろうかなと思って、ああいう形になりました」と振り返った。

 三戸は前節・横浜FC戦で今季4点目をマーク。PA左から放った左足シュートは、芯を捉えたボールだった。そして今節もその必殺技が炸裂する。1-0で迎えた前半30分、中盤でボールを収めた三戸は「常にゴールは見ている。ああいうところでも打てるかなと」。相手の一瞬の隙を突き、約35mも離れた長距離から右足を振り抜いた。

 無回転のボールに誰も触れることはできなかったが、ゴールネットではなく、ポストに直撃する。しかしこぼれ球を鈴木が押し込み、1-1と同点に持ち込んだ。鈴木の得点にもかかわらず、味方のほとんどが三戸の周りに歓喜の輪を作る。それほどに衝撃を与えるシュートだった。

 三戸は後半13分にも躍動。PA左で素早いステップでMF脇坂泰斗を翻弄し、右足を振り抜く。またしても芯を捉えたシュートは縦に落ちながらゴールへ。GKチョン・ソンリョンに阻まれたが、この直後のCKで新潟はDF新井直人の得点により一時逆転に成功した。

 ボールを無回転にするコツについては「コントロールショットというよりミートを意識した」とその極意を明かす。「最近そういうシュートが打てるんだというのがわかってきた。そういうシュートを打つようにしてます」。第13節・横浜F・マリノス戦で決めたJ1初ゴールも長距離から沈めたもの。今シーズンを通して自身の新たな武器にしていた。

 後半31分には2失点目を喫し、2-2と同点に追いつかれた。序盤から躍動を続けた三戸の体力も尽き欠けていたが、松橋力蔵監督は試合後の会見で信頼を語る。「三戸は足にきていた。ただ、どうしても攻撃のピースとして、終盤の時間帯で彼の力が必要だった。彼の特長が必ず生きると思っていた」。そして同35分にFW太田修介が勝ち越しゴールを挙げると、指揮官は三戸に声をかけたという。

「鬼になって、じゃないですけど、彼をとっ捕まえて軽く檄は飛ばしました。ただ、彼からも強い意志が見えた」(松橋監督)。三戸も驚きの闘魂注入だったようだが、指揮官の思いを感じ取る。「怒った感じで来い!と。なんだろうと思ったらお前はここで終わるのか!と。初めてリキさんに喝を入れられた。喝入りました(笑)。がんばりました」。フル出場で走り切り、持ち前の笑顔で勝利を噛み締めていた。

 試合前日には21歳の誕生日を迎えた。「またひとつ歳を取って、新たにやっていこうという気持ちはあった。得点できればよかったですけど、自分のシュートがゴールにつながってきたことはよかった」と手応えも手にしている。サポーターからは“三戸ちゃん”の愛称で親しまれているが、エース級の貫禄に「そろそろ三戸さんでは」との声も。だが三戸は「いや、まだ三戸ちゃんですね(笑)。三戸さんはまだ早いと思います」とやんわりと笑顔で否定していた。


(取材・文 石川祐介)
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石川祐介
Text by 石川祐介

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