[9.29 J1第29節 川崎F 2-3 新潟 等々力]

　チームに勢いを戻す同点ゴールとなった。アルビレックス新潟FW鈴木孝司は1-0で迎えた前半30分、MF三戸舜介の35mシュートのこぼれ球を冷静に仕留めた。「あ、打つんだと思って、自分の目の前の通るときにいい軌道でボールが飛んでいた。これワンチャンあるかなというぐらいで反応できました」と振り返った。

　シーズン終盤にかけて調子を上げる新潟は、前半戦で勝利した川崎フロンターレと対戦。前半23分にセットプレーから失点を喫するが、同30分に三戸のシュートが流れを変える。

　三戸がゴールから35mほど離れた長距離から右足を振り抜くと、無回転のボールがゴールへ。敵味方ともにその弾道を見守る中、ゴールポストに直撃して跳ね返ったボールに反応したのは鈴木。「体の向きをゴールのほうに向けられたことはすごくよかった。ボールを見るだけじゃなくて、しっかり体が反応できた。いい準備ができていたというか、自分の意識がゴールに向いていたことがすごくよかったかなと」。こぼれ球にたった一人反応し、ゴールに押し込んだ。

　それでも、予想もできない高速ロングシュートのこぼれ球に反応するのは、口ほどに簡単ではない。「ボールも速かったし浮いていた。けっこうふかしそうなくらいの高さとボールの動きだったので、本当に当てるだけ。しっかりゴールに飛ばそうということだけ考えて、丁寧に決めることができました」と経験が凝縮された得点シーンを謙虚に語った。

　得点後、ゴールした鈴木よりもスーパーシュートを放った三戸のもとに駆け寄った仲間が多かった。「三戸のいいシュートでしたし、あっさり点が入った。チームとしてもワーっと盛り上がる感じでもなかったので。うれしかったですけど、まぁ…あんなもんかなって感じです(笑)」。仲間たちが喜びを分かち合った後、鈴木と三戸は最後にがっちりとハイタッチしていた。

　何よりも前半で追いついた意味は大きい。1-1で後半に折り返すと、試合は点の取り合いとなった。鈴木は最前線で攻守に貢献し、後半20分までプレー。3-2の勝利をピッチの外から見守った。

　スコアは僅差だが、試合内容では真っ向勝負を制した。鈴木は「ボールをしっかりと大事にするチームで同じサッカーをしていく中で、J1でも優勝経験が豊富なチーム。同じ土俵で勝ち切れた、相手より1点でも多く取れて勝てたというのはすごく自信になる」と手応えを語る。中断期間を経て、シーズンも残り5試合。「ひとつでも上に行くことだし、一桁順位に自分たちは行けると思っている。そこをしっかり目指してやっていきたい」と力を込めた。

(取材・文　石川祐介)

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