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大阪府1部リーグの関西大一が後半3発で近大附に逆転勝ち。プリンス勢3連破で19年以来のインハイへ!

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後半12分、関西大一高の10番MF内田唯斗が同点ゴール

[6.10 インターハイ大阪府予選準決勝 近大附高 1-3 関西大一高 J-GREEN堺S1]

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技大阪府予選準決勝が10日にJ-GREEN堺天然芝メインフィールド(S1)で行われ、第2試合は近大附高関西大一高が対戦。関大一が3-1で逆転勝ちし、19年以来5回目のインターハイ出場を決めた。

 大阪府1部リーグに所属する関大一が、プリンスリーグ関西勢の桃山学院高、大阪桐蔭高、そして近大附高も撃破。かつて09年度の選手権で3位に入っている伝統校が、4年ぶりの全国切符を獲得した。

 前半は準々決勝でタレント軍団の興國高を破った近大附ペース。山田稔前監督の後任として指揮を執る寺師悠斗監督の下、伝統の堅守とボールを保持して攻める部分にもチャレンジする。FW上田泰地(3年)が前線でボールを収め、推進力のあるFW梅地隆世(3年)が相手の背後を強襲。バス6台で駆けつけた同級生たちの応援も後押しに、迫力のある攻撃で相手にプレッシャーをかける。

 そして前半34分、左CKのこぼれを拾った右WB高畑宗希(2年)が切り返しから左足ミドル。アウトにかかった一撃は、素晴らしい弾道を描いてゴール左へ突き刺さった。一方の関大一はCB鴨川光輝(3年、父は育成の名指導者・鴨川幸司氏)や左SB乾智輝(3年)から丁寧にボールを動かして前進。前線のFW今西佑(3年)が献身的に走り、ボールを収めるなど背中でチームを引っ張っていた。だが、近大附の守りは潰しも利くDF若松大輔主将(3年)を中心に堅い。相手に決定打を打たせることなく、1-0で前半を終えて見せる。

 ハーフタイム、関大一の緒方卓也監督は選手たちに30秒間目を瞑らせて、3バックの両脇を突くこと、ポケットを取ることを確認。その後、強烈な檄で選手たちの背中を押してピッチへ送り出した。

 その関大一は後半勝負で温存していた10番MF内田唯斗(3年)を後半開始から投入。「(ベンチスタートは)辛かったけれど、チームのために自分にできることをやろうと思っていました」という内田はファーストプレーからチームに落ち着きを与え、3得点に絡んだ。まずは後半12分、左CKのこぼれ球を今西が繋ぎ、MF河村一冴(3年)が左足シュート。これをゴール前の内田が右足アウトで合わせて同点に追いつく。

 喜びを爆発させる10番と関大一イレブン。畳み掛ける関大一はさらに18分、右サイドの内田がロングクロスを上げ切ると、中央へ飛び込んだ河村がヘッド。後半、特に機動力を発揮していた河村の一撃で試合をひっくり返した。

 近大附の寺師監督は「失点しても行くぞと伝えていた。でも、曖昧になってしまいました」と首を振る。後半、カウンターから2点目、3点目を狙うプランだったが。関大一の正確なポゼッションの前にボールを奪い切れず、流れが悪い中で連続失点。慌てて攻めてボールを失い、またボールを保持されてしまう。

 関大一は23分、左サイドの交代出場MF門田登真(3年)が斜めのスルーパス。右サイドから斜めのスプリントをした内田へパスが通る。内田は打ち切れなかったものの、サポートしたMF梅原快(2年)が右足でゴールへ押し込み、3-1。力がある一方、消極的な姿勢が課題だという内田は、緒方監督から常に前へ行くことを求められているという。指揮官も「(今日)出ていく時も『絶対、前やぞ』『オマエで逆転してこい』と。出来過ぎやと思います」と認めるプレーだった。

 近大附は苦しい時間帯で10番MF高下麻実(3年)が果敢にドリブルで仕掛けて前へ。高さも発揮していた高下やボランチへポジションを上げた若松、上田、MF矢野皓誠(3年)というキープレイヤーが中心となってやるべきことを表現し、ゴールへ迫る。だが、関大一もCB中谷優冴(3年)が好守を連発。中谷ら各選手が自分たちを奮い立たせて相手の攻撃を弾き返して行く。そして、3-1のまま試合終了の笛。紫紺のユニフォームが歓喜に舞った。

 関大一の今西は「1年生から出せてもらっていて自分が1、2年生のときはベスト16とか32とかで負けて悔しい思いをいっぱいしてきたので、自分の代ではそんな悔しい思いは絶対にしたくないと思っていましたし、このチームの目標でもあり、自分の夢でもある全国に行けることが本当に嬉しいですし、この仲間たちと行けることがもっと嬉しいです」と喜んだ。

 就任4年目の緒方監督の下、かつての「月まで走れ」までは至らないが、「(ボールを動かすことで)相手を動かして、疲れさせて、かつ自分たちが動ければ勝てると」と取り組んできた成果を体現。指揮官は全国大会へ向けて、「ちょっとでも上に。でも、謙虚な気持ちとひたむきさと、しっかり相手より走って、夏なので走れば勝機は見えてくると思う」と掲げた。

 選手たちにとっては自信となる全国切符獲得だ。中谷は「桃山あたりから関一はずっと厳しい、負けるだろうという話は耳にしていた。でも自分たちのサッカーを貫くと決めていた」。また、内田は「チームとしてチャレンジャーの精神でやってこれたのが良かった。(インターハイでも)奢らず謙虚にやっていきたいです」と力を込めた。自分たちのやってきたことに自信を持って走り、繋いで、全国の強敵を上回る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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