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[MOM4323]実践学園GK宮崎幹広(3年)_「自分がGKの代表」の自覚を携えた守護神が再三のファインセーブでチームを救う!

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昨シーズンから実践学園高の守護神を託されているGK宮崎幹広(3年=練馬石神井中出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.10 インターハイ東京都予選準々決勝 駒澤大高 0-1(延長) 実践学園高 駒沢第二球技場]

 自分のところにボールが来れば、何度だって絶対に止めてみせる。仲間の代表としてゴールマウスに立っているのだ。チームの勝敗の責任は、試合に出ている自分が負っている。その覚悟は2年生だった去年も、3年生になった今年も、何1つ変わらない。

「自分がGKの代表としてピッチに立つことで、もちろん試合に出られない選手がいるので、その選手たちに対して『自分が出た方が良かった』と思わせてはいけないですし、今日みたいに試合が終わった後にみんなが寄ってきてくれて『ナイスキーパー』と言ってくれるようじゃないと、出ている意味がないと思っているので」。

 昨シーズンから実践学園高(東京)の最後尾に立ち続けてきた守護神。GK宮崎幹広(3年=練馬石神井中出身)が繰り出した再三のファインセーブが、チームを準決勝の舞台となった西が丘へとしなやかに導いた。

 立ち上がりから実践学園は苦しんでいた。「若干ビルドアップにこだわり過ぎて、駒澤の前からのプレッシングにハマってしまったところがあったので、その修正に時間が掛かってしまったなと思います」と宮崎も認めたように、駒澤大高の徹底したハイプレスの網をかいくぐれず、ミスからボールロストする場面が増えていく。

 前半13分。中央で相手にボールをかっさらわれ、決定的なピンチが到来する。「ああいうふうに取られる前に、『必ず逆サイドの状況は確認するように』とはGKコーチからも言われていて、それは意識していたのでコーチングは完了できていて、あとはシュートストップに自分のすべての意識を向けてできたので、ある程度思考はハッキリできていました」。宮崎のファインセーブが、チームを救う。

 同じく前半13分。今度は横パスが相手に渡ってしまい、1対1のピンチが訪れる。「相手の一歩目のところで、ある程度ポジショニングを前に取れたので、その距離の詰め方で、向こうもシュートを打ちにくかったのかなと。ボールを取られてからのポジショニングの取り方が良かったかなと思います」。宮崎のファインセーブが、再びチームを救う。

 後半40+1分。0-0で迎えた最終盤に、左サイドを単騎で崩される。「山城(翔也)が相手のニアのクロスを切ってくれていて、自分はポストの横に立っていればコースは消えていたので、角度のないところからのシュートになったのかなと。ディフェンスとの連携が取れていて防げたのかなと思います」。宮崎の好セーブで、試合は延長戦にもつれ込む。

 延長後半5分。1点をリードした土壇場の局面で、FKに合わされたヘディングが枠内を襲う。「今週はGKコーチから『クロスの質で相手のシュートを予測しろ』と言われていて、ああいうフワッとした折り返しからは、フワッとしたシュートが来るのかなという予測はできていましたし、前に出るのか、ちょっと引くのかというのは練習の時から整理できていたので、それを同じように出すだけでした」。再三にわたる宮崎のビッグセーブで、チームはそのまま逃げ切りに成功する。

「延長の最後のプレーもそうですし、今日の彼は間違いなく本当によくやってくれたと思います」とそのパフォーマンスを称えたのは、チームを率いる内田尊久監督。確かな覚悟を携えた守護神の躍動が、実践学園の完封勝利に大きく貢献したことは、4つのシーンを振り返るだけでも、疑いの余地はない。

 それは延長前半が終わった直後のこと。最後の10分間に向かうに当たり、宮崎はスタンドに大きな声を掛け、応援団を煽っていたように見えた。本人にそのことを尋ねると、「そうですね。煽っちゃいました」と笑顔を見せながら、続けてその真意をこう明かす。

「練習試合だと、自分の声で雰囲気を締められるんですけど、今日みたいにどっちの応援団も良い雰囲気の応援で競っている時は、なかなか自分の声が届かないので、そういう時に外から発破を掛けられると、雰囲気を締めてできるのかなと思っていて、そこが欲しいなと思って煽った感じです。米丸くんが応援団を引っ張って歌ってくれている“応援団長的”な子なので、彼に声を掛けました」。それを聞いた応援席が、もちろんボルテージを上げないはずがない。守護神と応援団も強い絆で結ばれていることがよくわかるエピソードだ。

 次の一戦は東京代表を懸けた準決勝。会場となる味の素フィールド西が丘は、昨年度の高校選手権準決勝でも経験しており、PK戦までもつれ込んだその一戦は宮崎のシュートストップもあって勝利したものの、次の決勝で敗れたため、全国切符を勝ち獲ることはできなかった。

 大事な決戦に向けて、宮崎はきっぱりと言い切っている。「去年と同じ道を辿る気はないので、悔しい想いをした去年の先輩たちのためにも、全国には絶対に出たいなと思います」。

 GK陣を代表して、いや、すべての選手を代表して、西が丘でもピッチに降り注ぐであろう応援団の声援を浴びながら、ゴールマウスに立つ宮崎のファインセーブが、2年ぶりとなる夏の全国切符を実践学園が奪い取るためには、絶対に必要不可欠だ。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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