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[MOM4338]成立学園GK新渕七輝(3年)_圧倒的な守備範囲を誇る“ゴールプレーヤー”はみんなが慕う最強のムードメーカー!

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成立学園高が誇る最強のムードメーカー、GK新渕七輝(3年=川崎フロンターレU-15出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.17 インターハイ東京都予選準決勝 成立学園高 1-0 実践学園高 西が丘]

 最後尾から大声でチームメイトを鼓舞していたかと思えば、普通のキーパーであれば躊躇するような場所にボールが来ても、果敢に飛び出して事もなげにピンチを回避してしまう。勝ったらチームメイトと大喜び。楽しげに“カモン成立”を全力で踊る。この男、とにかくパワフルだ。

「今年のキーパー陣はみんな元気なので、その元気をもっとフィールドに伝えないと、という感じでみんなに伝えている部分もあります。自分はもともと気合で乗り切ろうとか、ガッツで何とかしてやろうという性格なので。キーパーって変わったヤツが多いですから(笑)」。

 自他ともに認める成立学園高の最強のムードメーカーにして、圧倒的守備範囲を誇る“ゴールプレーヤー”。GK新渕七輝(3年=川崎フロンターレU-15出身)が発し続けてきたエネルギーが、チームを夏の全国へと力強く導いた。

 インターハイ出場を懸けて、実践学園高と対峙したセミファイナル。守護神にとって、最初の見せ場は前半15分にやってきた。スピード豊かな相手の要注意人物もであるストライカーに抜け出され、1対1のピンチが訪れるも、新渕は躊躇なく間合いを詰め、シュートをファインセーブで弾き出す。

「センターバックの2人は足もそんなに速くないので、そこの連携は3人でいつも話していて、『裏のスペースは自分がカバーするから、オレの後ろはカバーしてくれ』ということは伝えていたので、あそこは自分の守備範囲かなと思います」と言い切るメンタルも頼もしい。

 40分。やはり相手のストライカーが味方のフィードに反応してラインの裏へ走るも、ここも新渕が思い切りよく飛び出して、きっちりクリアしてみせる。やはりこの男の守備範囲は常識なんかで測れない。

「今年からディフェンスラインで『ラインを高く保ってオフサイドを取ろう』という話になりました。自分の持ち味としてはああいうスタイルなんですけど、去年はなかなか自分のスタイルに合わなくて、今年はそういうのが上手くハマった感じです。一度決めたら思い切って出ようというのが自分のスタイルですし、気合も自分の持ち味ではあるので!」。

 後半20分に先制点をもぎ取ると、以降は実践学園のパワープレーも辞さない攻撃にさらされ続けるが、ここでも背番号1がエリア内を広範囲にカバーする。「今大会のディフェンスラインは基本的に安定感があったので、そんなに心配していなかったですけど、相手の方が身長的に高くて負ける部分もあったので、キーパーである僕が基本的には出ていってやろうというスタイルで行きました」。ハイボールもいち早く落下地点に駆け付け、時にはキャッチで、時にはパンチングで、相手の攻撃を跳ね返し続ける。

 タイムアップのホイッスルが鳴った瞬間。ひざまずいて小さくガッツポーズを繰り出したあと、そのままピッチへ大の字に寝転がる。「最高です!!『北海道に行こう』ということは選手みんなで話していて、それが現実になったので嬉しい気持ちでいっぱいです」。スタンドのチームメイトと喜びを分かち合い、“カモン成立”で大はしゃぎ。新渕の存在感がとにかく際立つ80分間プラスアルファだったことは間違いないだろう。



 今年の成立学園の選手たちと話していると、いつも新渕の話題が飛び出してくる。「キーパーの新渕くんが凄くムードメーカーなので、アイツが盛り上げ役として何かをやって、そこにみんなが付いていく感じですね」(MF横地亮太)「ブチはムードメーカーとしても本当に凄いです。彼がいることで後ろは任せられますね。後ろから声を出してくれるので、メチャメチャ助かっています」(DF大坂颯汰)。

 本人にそのことを伝えると、笑顔で“元気”の理由をこう明かす。「今年はキーパーが5人いるんですけど、全体的にレベルが凄く高くて、みんな元気があるんですよ。キーパー練習でもそこにこだわってやっていて、みんな元気を出して気合を入れてやっているので、そういうところで自分が代表して、そういう元気や気合をみんなに伝えている部分もあります」。仲間想いの一面も、その言葉からは確かに伝わってくる。

 浦和レッズやジェフユナイテッド市原でもプレーした元Jリーガーの太田昌宏GKコーチは、新渕を“ゴールプレーヤー”と称している。なぜならビルドアップの起点にもなれ、ディフェンスラインの裏もカバーする守備範囲の広さも際立ち、もちろんゴールキーピングのクオリティも十分だからだ。

「ユニフォームが1人だけ違うのが『カッコいい!』と思ってキーパーを始めました(笑)」という新渕には、憧れている選手がいるという。「好きな選手はブッフォンです。ユヴェントスの時から『ああいうふうになりたい』と思って、部屋にも『ブッフォンのような守護神になる』みたいな字を、習字みたいな感じで勝手に書いて貼っています(笑)。気合とかそういう部分を参考にしているところもありますし、ああいう選手が好きですね」。

 中学時代にプレーしていた川崎フロンターレU-15から、U-18への昇格は叶わなかったが、当時のチームメイトで、同じポジションで切磋琢磨していたライバルでもあったGK濱崎知康とGK菊池悠斗の活躍もチェックし続けているという。「2人とも電話したり、進路のことを話したり、成立の現状も聞いてくれたりして、アイツらが活躍したら自分もやってやろうという、凄く刺激になっていますね」。

 彼ら同様に自身の躍動を多くの人に知ってもらうためにも、夏の全国大会はアピールする格好のステージだ。「去年は選手権で全国に出たんですけど、それが17年ぶりで、インターハイもほぼ10年ぶりなんですけど、自分はもっと成立のサッカーのスタイルも広めたいですし、『成立のキーパーは凄くレベルが高いんだぞ』ということを全国に見せ付けたいので、自分が頑張って代表としてやっていきます」。

 成立学園を最後方から束ねる、最強のムードメーカーであり、圧倒的ゴールプレーヤー。新渕が北海道で今まで以上に“七色の輝き”を見せることができれば、自ずとチームの望んだ結果も付いてくるに違いない



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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