beacon

[MOM4374]青森山田FW米谷壮史(3年)_「歴代でも一番のフォワード」への堂々たる挑戦。指揮官も貢献を認めるストライカーがこの日も2発!

このエントリーをはてなブックマークに追加

青森山田高のストライカー、FW米谷壮史(3年=青森山田中出身)はこの日も2ゴールで勝利に貢献!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.30 インハイ2回戦 青森山田高 5-2 國學院久我山高 東光スポーツ公園球技場B]

「もう今は攻守に渡って、ボールのないところも含めて、チームへの貢献度は間違いなく一番だと思いますし、その中でキチッと結果を出す、点を獲り切るストライカーとしての役割も果たしてくれているので、信頼して使っています」。

 普段は選手たちに対して厳しい評価を下すことも多い指揮官がここまで言うのだから、その存在の大きさはあえて強調するまでもないだろう。青森山田高(青森)が誇る今シーズンのストライカー、FW米谷壮史(3年=青森山田中出身)のことだ。

 國學院久我山高と対峙したインターハイ2回戦。序盤はやや相手の勢いを受け、後手に回る格好となった青森山田だったが、その劣勢はこの男の一撃で覆る。前半7分。右サイドからMF杉本英誉(3年)が利き足とは逆の右足で丁寧なクロスを上げると、11番がゴール前に飛び込んでくる。

「試合の前からクロスに対する入り方はチームで共有していたので、ヒデ(杉本)がクロスをシンプルに上げてくれて、自分が入るポイントにしっかり入って、キーパーの前で触れました」。高い打点でGKに競り勝っての先制点。米谷のゴールが仲間にも火を点け、チームはさらに2点を追加してハーフタイムへ折り返す。

 圧巻のゴラッソは後半7分だ。DF菅澤凱(3年)が投げ入れたロングスローを、MF川原良介(3年)が頭で逸らすと、一瞬でマーカーの前に身体をねじ込んだ米谷は、強引にキープしたまま足元に収めたボールを、左足でゴールネットへ突き刺してしまう。

「ゴールとボールの間にスペースがあったので、そこで相手の前に身体を入れて、ゴールへの道を自分で作ったという感じでしたね」。その自分で作った“ゴールへの道”の陰には、ある人のアドバイスがあったという。

「腕をうまく使って、シュートを打てる体勢を作ることを意識してやっていたんですけど、昨日の試合が終わった後に、松本(晃)コーチから相手とのコンタクトのところで、身体の使い方のアドバイスをもらっていたので、そこを自分の頭の中に落とし込めたというか、その身体の使い方で相手の前に入れたのかなと思います」。さまざまなものを吸収し、成長する力も米谷はしっかりと持ち合わせているようだ。

 それは前半20分前後のこと。チームを率いる正木昌宣監督はピッチに向かって、こんな言葉を発していた。「壮史だけじゃん」。相手へと果敢にプレスを掛け、攻撃方向を制限し続けていた米谷の献身性は、指揮官の言葉を待つまでもなく、際立っていた。

「プレミアリーグの時は、下で繋ぐのが上手いチームも多くて、自分がうまくファーストディフェンスになれない時もあって、それを凄く言われていた時期があったので、『改善しないといけないな』とは自分でも思っていたんです。今回の舞台は高校では最後のインターハイですし、ミーティングでも『前から行こう』ということは共有していたので、それもあってプレスバックもそうですけど、『自分が一番やろう』と思っていました」。冒頭で紹介したように、正木監督も「チームへの貢献度は間違いなく一番だと思います」と言い切るだけのパフォーマンスを、米谷は披露し続けている。

 今季は一貫して最前線で起用されているが、自身でもその役割はしっくりき始めているようだ。「去年はトップ下とかサイドで出ることが多かったですけど、今年に入ってからワントップをやることが多くなって、クリアボールだったり、背後のボールを処理する時に、センターバックとマッチアップして身体を使うシーンが増えましたし、そこで失ってしまうとチームとしても悪い流れになってしまうので、そういう部分を春先から意識してやってきているのが今に繋がっているのかなと思います」。

 正木監督もその部分の成長は認めている。「今年に入ってから背負うプレーも上手になっていますし、あまり大きくはないですけど、身体の使い方も上手いですし、タイミングも良いですし、そこは十分な仕事をしてくれていると思います」。春先まではベンチスタートも多かったものの、今ではチームに欠かせない立ち位置をしっかりと掴んでいる。

 プレミアリーグEASTではここまで10得点を記録し、得点ランキングトップタイに付けている。もちろんこのインターハイで目指すべきは、やはり得点王一択だが、本人はチームのことを思い浮かべ、こう言葉を紡ぐ。「決勝まではあと4試合ある中で、ここまで2試合で3点獲れているので、得点王になることが一番ですけど、その中でチームが勝てるように自分が点を獲りたいと思っています」。

 以前、あるプレミアの試合後に米谷が語っていたことを思い出す。「自分はそんなに飛び抜けた能力があるわけではないですけど、ゴールの感覚をもっと大事にして、青森山田の歴代でも一番のフォワードになれるように頑張っていきたいです」。

 『歴代でも一番のフォワード』への挑戦。2023年の青森山田が頂く絶対的ストライカー。米谷が重ね続けるゴールは、2年ぶりの日本一奪還へ突き進むチームにとっての、明るい道しるべに他ならない。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

TOP