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夏の北海道で輝いた才能たち。ユース取材ライター陣が選出する「インターハイ11傑」vol.3

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土屋記者が11傑に選出したDF森紺(高知高3年)

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技は7月29日から8月4日まで熱戦が繰り広げられ、明秀日立高(茨城)の初優勝で幕を閉じました。ゲキサカでは「インターハイ11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣にインターハイで活躍の光った11選手を紹介してもらいます。第3回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史記者による11名です。

 土屋記者「今回はいわゆる優勝候補と目されていたプレミアリーグ所属のチームが相次いで敗退したことで、普段はなかなか見る機会の多くない高校を取材する機会に恵まれ、『まだまだ日本中に良い選手はいるんだなあ』ということを再確認させてもらいました。今年の夏も最高に楽しかったです!」

以下、土屋記者選出の11傑

GK渡辺勇樹(桐光学園高3年)
桐光学園高(神奈川1)のキャプテンも務める守護神は、途切れないコーチングの声が印象的で、とにかく褒め上手。「自分もそうやって言われると嬉しいですし、前線が頑張ってくれれば、オレたち守備陣もやらなきゃという気持ちになるので、しっかりどんなプレーでも褒めるようにしています」という言葉に性格の良さも滲む。決勝のPK戦での活躍は叶わなかったが、今年の冬はこの男が期すリベンジに是非注目したい。

DF森紺(高知高3年)
初のインターハイベスト8に入った高知高の中でも、センターバックとして守備陣を逞しく束ねるリーダーシップとエネルギーが目を惹いた。「行けそうで行けないのが、このベスト8とベスト4の間だと自分は思うので、そこの間の厳しさをこの大会で知れたことを選手権に生かして、国立に行きたいと思います」。冬の全国4強、すなわち国立競技場での戦いをキャプテンは真剣に見据えている。

DF高瀬大也(尚志高3年)
プレミアリーグ勢対決となった3回戦の前橋育英高(群馬)戦では、まさに獅子奮迅の働きぶり。「ヘディングでクリアしても、スライディングでブロックしても、みんなで声を張り上げることによって、チームの士気も高まって、全体の雰囲気も上がるので、そこはみんなで意識して声を掛けてやりました」と振り返ったように、ワンプレーごとに気合の雄叫びを上げる姿が、強く記憶に残った。

DF平田大耀(国見高3年)
19年ぶりに全国ベスト4まで勝ち上がった上に、結果的には5試合で1点も奪われることなく大会を終えた名門校を、最後方から支えたディフェンスリーダーは「入学した時は全国大会自体をちょっと上の存在だと思っていたんですけど、今回で自分たちも全然やれることがわかったので、もっと高みを目指していきたいと思います」ときっぱり。明るく話せるキャラクターも魅力的なナイスガイだ。

DF五本木涼(帝京五高3年)
1回戦の広島国際学院高戦で、10番を背負ったDF登録の五本木は、4-4-2を敷いていた前半こそ4バックのセンターバックを務めていたものの、3-5-2にシステムが変わると、なんと2トップの一角にスライド。植田洋平監督も「ディフェンスの要なんですけど、五本木を前に上げて攻撃を生かすのは練習していたパターンです」と話しており、鮮やかに手繰り寄せた全国初勝利を2つのポジションで演出してみせた。

MF大原大和(明秀日立高3年)
『最強の黒子』と言っていいだろう。日本一に輝いた明秀日立高(茨城)の中盤に構えるボランチは、とにかくすべてのプレーが効果的。それでも「この大会でできた部分もあったんですけど、課題も出たので、そこを日々のトレーニングで完璧にして、日本一という肩書に恥じないような、凄いボランチになりたいと思います」とさらなる成長を期すあたりも頼もしい。独特のテンポを持つ話し方も印象的だった。

MF安場壮志朗(日大藤沢高3年)
準決勝で対峙した明秀日立高の萬場努監督も「ウチの選手も日大藤沢の10番のような嫌らしさとか狙いどころは持っていないといけないなと思います」と名指しで称賛。ギャップに潜って、受けて、繰り出すパスには目を見張るものがあった。敗退時に「選手権が残っているので、そこで自分が絶対に活躍して、チームを勝利や優勝に導きたいと思います」と決意を語ったファンタジスタの今後の飛躍が楽しみだ。

MF萩野巧也(広島国際学院高3年)
全国大会初出場で奮戦したものの、初戦で帝京五高(愛媛)に敗れた広島国際学院高だったが、キャラ立ちしたアタッカー陣を揃えた攻撃はシンプルに楽しかった。中でも左サイドハーフに入った萩野は、兼ね備えた高いテクニックと鋭い突破力でマーカーを翻弄。谷崎元樹監督も「今日は相当良かったと思います」と評すなど、全国レベルでも個で魅せられる能力をはっきりと証明してみせた。

MF鵜城温大(旭川実高3年)
大応援団に後押しされた初戦の帝京長岡高(新潟)戦で「地元開催で全校応援もあって、『絶対に決めてやろう』という想いはあったので、決められて良かったです」と高校入学後初のハットトリックを達成。1年時は中盤を、2年時にはサイドバックを務めることもあった中で、3年になって定着したフォワードのポジションで最高の仕事を果たし、地元開催で挙げた貴重な勝利の立役者となった。

MF井上拓実(矢板中央高3年)
もともとはボランチ。インターハイ前から右サイドハーフ起用も増え、本大会ではケガ人の関係から左サイドハーフを務めるなど、ポリバレントさを備えたキャプテンは「どこをやるにしても守備がベースなので、サイドハーフは難しいですけど、良さが出たらいいなと思っています」と話していたが、2回戦の東邦高(愛知)では華麗なボレーでゴールも記録。チームスタイルの“質実剛健”を地で行く好選手だ。

FW熊崎瑛太(明秀日立高3年)
今大会はノーゴールが続いていた中で、準決勝の日大藤沢高(神奈川)戦で2ゴールを叩き出し、決勝進出に大きく貢献。「自宅は本当に自転車で登校できるような距離」という“チャリ通”フォワードには「華やかではないけれど、相手とぶつかってボールをキープしたり、献身的にボールを追い掛けられるのが彼の特徴」と萬場監督も絶大な信頼を口に。『地元で全国に行って日本一を獲りたい』という入学時の目標を見事に達成してみせた。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。ゲキサカでコラム、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』を連載中。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。『蹴球ヒストリア~「サッカーに魅入られた同志たち」の幸せな来歴~』(株式会社ソル・メディア)」


●【特設】高校総体2023
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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