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試合直後にクロス100本の居残り練習。流経大柏GKデューフエマニエル凛太朗は相手の「ナイシュー」を止め、仲間に対しても「心を鬼に」

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流通経済大柏高の191cmGKデューフエマニエル凛太朗

[10.16 高円宮杯プレミアリーグEAST第18節 流通経済大柏高 1-1 青森山田高 流通経済大柏高G]

 後半アディショナルタイムの失点によって1-1で引き分け。その後、流通経済大柏高GKデューフエマニエル凛太朗(3年)が居残り練習を終えた時には、試合終了から2時間以上が経過していた。

 チームメートのGK陣や伊佐孝徳GKコーチの協力の下、クロスボールで前に出ての対応を100本。他のGKたちに自分の周りを囲んでもらい、動き辛い状況から強引に前へ出てパンチングする練習を繰り返した。

 この日は青森山田高相手に2本のビッグセーブ。85分までは納得できるようなパフォーマンスをしていた。だが、自身のキックミスからリズムを崩すと、ロングスローの処理に失敗し、45+1分のCKをクリアできずに同点ゴールを奪われた。

「CKのところで自分がかすって(クリアが)浅くて入ってしまったので、そこでしっかりはじき出せるような判断とステップとかを身に着けないといけない。(居残り練習は)結構、成果はあったかなと思います」。そして、10本連続でキックを成功させて居残り練習終了。悔しさが残るうちに課題と向き合い、動作を身体に叩き込んだ。

 青森山田はこの日、191cmの長身GKデューフを外す形でセットプレーやクロス。その中でデューフはニアでそらされたボールなどをクリアし、枠を捉えたシュートにも反応した。同時に求められたのはコーチングの部分。自他ともに認めるほど“優しい性格”のデューフは味方に対して早く、強い言葉で指示できなかったことを反省する。

「味方に強く言えないとか、相手を心配してしまうとかあるので、『心を鬼にして勝つ』というのがこれからの選手権とか問われると思うので、チームを勝たせるために自分が鬼になるという覚悟を持ってやらないといけない」。自分自身に変化を求めた一方、この日はさすがのセービング力も見せた。

 ディーフは膝の手術から復帰した6月26日の前橋育英高戦以降の5試合でわずか1失点。その間、チームは4度の1-0勝利で唯一失点した横浜FCユース戦も1-1の引き分けだった。特長であるシュート反応の鋭さを発揮したが、9月11日の横浜FMユース戦で4失点。この試合で「普段のシュート練習の甘さが出てしまった」。

 以前はトレーニングで良いシュートを決められても「ナイシュー」などの言葉で終わらせていたという。だが、横浜FMユース戦後は、「ナイシュー」も止められるように1本1本にこだわるようになった。なかなかチームの結果には結びついていないものの、この日の超絶セーブは練習の成果。本人は現在の姿勢を「続けていきたい」と意気込んでいる。

 今シーズン開幕直前に膝を手術。手術することで春夏のアピール機会が減少し、プロ入りが遠のくことが予想されたが、「選手権に絶対に出たい」という気持ちを優先した。昨年度は全国1回戦で敗退。シュート数で19-2と近大和歌山高を圧倒しながらも後半に追いつかれ、PK戦ではデューフが相手5人目を止めたが、競り負けている。

「自分が最初から3本止めて味方が3本決めて終わるみたいな。(去年は)絶対に止めるという気持ちが弱かったかなと思っていて、今年は絶対に止めるという気持ちを大事にしてやりたい」。1年前の借りを返し、日本一になるためには強力なライバルたちを倒していかなければならない。

 デューフは「自分たちも団結力が少しずつ上ってきているし、個としても全然負けないと思っているので、あとはチームとして上げていきたい。自分が目立ちたいというのはないです。チームが優勝するのが一番。とにかくチームが全国獲って、エノさん(榎本雅大監督)を日本一の監督にしたい」。流経大柏で学んできたことを全てぶつけて日本一へ。10月23日の横浜FCユース戦を挟んで始まる選手権予選で、まずは千葉制覇を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
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